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3章:竜の国 ユミルトゥス
昔話 1話
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私が暮らしていた国とは、やはり文化の違いがあるみたい。
さっき歩いていたときに街並みを確認したけれど、どちらかといえば現代に近い気がした。
男女共に好きなものを着ているようだった。働いている人たちも、それぞれをおしゃれを楽しんでいた。目の前のクローディアも。
彼女の明るい茶色の髪はふわふわとしていて、ハーフアップにしている。瞳は青く澄んでいて、着ているのはパステルブルーのワンピース。
袖口に銀色の刺繍が入っていて、上品な印象を受ける。
「国によって、流行も違いますからね」
「そうね……このままコルセットが必要ないドレスが流行ってくれると嬉しいわ」
ぎゅっと締め付けられる感覚は、……ね。
もちろん、補正下着としての役割は便利だと思うのだけど……
リディアとして過ごしていたから、コルセットには慣れているといえば慣れている。
でもやっぱり、コルセットを外すとホッとできるから……制服がワンピース型でコルセットなし、というのはとてもありがたいわ。
「それでは、チェックしていますね」
「お願いします」
クローディアの指示通りに動き、チェックを終わらせる。
それが終わったら、今度はドレスに着替えるようにうながされた。
いろいろなドレスを着せられて、目が回るほど。
こんなに着替えをしたことはないってくらい着替えたわ……
「うーん、素晴らしいプロポーション。どんなドレスでもこんなに似合うなんて……!」
感激したように明るい声色で私を見つめるクローディア。
そんなにうっとりと……恍惚とした表情で言われると、恥ずかしくなってしまうわ。
「あ、ありがとう」
「では、最後にこちらのドレスを」
「これは……黒のドレス?」
クローディアが見せたのは、まるで彼の瞳のような……黒曜石の輝きを持つドレスだった。
さらりとした肌触りで、着心地が良さそう。そのドレスに着替えて、鏡の前に立つ。
金色の髪にエメラルドグリーンの瞳。白魚のようなきめ細かい肌に、黒曜石の輝きを持つドレス。
「――美しいですわ」
本当にそう思っているのだろう。
感慨深そうにつぶやくクローディアに、顔を向けた。
「このドレスは……?」
「フィリベルトさまの依頼で作りました! あっ、この姿はぜひフィリベルトさまにも見ていただかなければ!」
クローディアはぐっと拳を握って答え、そのままフィリベルトさまのところに駆けていく。
彼が、このドレスを依頼した……?
鏡に映る自分の姿をじっと見つめていると、彼女がフィリベルトさまを連れてきた。
「――ッ」
フィリベルトさまが、言葉を呑んだ。目を大きく見開いて、見入っているように感じる。
「フィリベルトさま……?」
「あ、ああ……すまない。あまりに美しすぎて、言葉が出なかった」
きゃっ、とクローディアが自分の頬に手を添え、歓喜の声を上げた。
「あ、ありがとう、ございます……」
まさか、そんなに賞賛されるとは思わなくて、顔がどんどん熱くなっていく。
きっと私、顔が真っ赤になっているわ。
「では、ごゆっくりどうぞー」
クローディアがにこにこと笑いながら、私とフィリベルトさまを二人きりにした。
パタン、と扉が閉まる音を聞きながら、私たちは顔を見合わせてしまう。
ごゆっくり、ってなによ、ごゆっくりって!
心の中でそう叫びながら、フィリベルトさまに身体を向けた。
「あ、あの、制服やドレスを依頼していただいて、ありがとうございます」
「い、いや。ユミルトゥスに留学するんだ。オレにできることをしたまでだよ」
ふるふると首を横に振る彼に、私は微笑みを浮かべる。
その心が嬉しいのだと伝えるには、どうすればいいだろう?
そっと彼の手に触れて、両手で包み込むようにすると、驚いたように目を丸くする姿が見えた。
「――私のために、してくださったのでしょう?」
「リディア」
「とても、嬉しいのです。フィリベルトさまが私を想ってくださっていることが伝わって」
考えてみれば、アレクシス殿下が私に贈り物をしたことはないのよね。
婚約者として彼の隣に立っていても見劣りしないように、と公爵家の財力で用意していたのよね、ドレスやアクセサリー。
だからこうして、私のために用意してくれるということがわかって、気恥ずかしさとともに、歓喜の叫びを上げたいほどでもあるの。
さっき歩いていたときに街並みを確認したけれど、どちらかといえば現代に近い気がした。
男女共に好きなものを着ているようだった。働いている人たちも、それぞれをおしゃれを楽しんでいた。目の前のクローディアも。
彼女の明るい茶色の髪はふわふわとしていて、ハーフアップにしている。瞳は青く澄んでいて、着ているのはパステルブルーのワンピース。
袖口に銀色の刺繍が入っていて、上品な印象を受ける。
「国によって、流行も違いますからね」
「そうね……このままコルセットが必要ないドレスが流行ってくれると嬉しいわ」
ぎゅっと締め付けられる感覚は、……ね。
もちろん、補正下着としての役割は便利だと思うのだけど……
リディアとして過ごしていたから、コルセットには慣れているといえば慣れている。
でもやっぱり、コルセットを外すとホッとできるから……制服がワンピース型でコルセットなし、というのはとてもありがたいわ。
「それでは、チェックしていますね」
「お願いします」
クローディアの指示通りに動き、チェックを終わらせる。
それが終わったら、今度はドレスに着替えるようにうながされた。
いろいろなドレスを着せられて、目が回るほど。
こんなに着替えをしたことはないってくらい着替えたわ……
「うーん、素晴らしいプロポーション。どんなドレスでもこんなに似合うなんて……!」
感激したように明るい声色で私を見つめるクローディア。
そんなにうっとりと……恍惚とした表情で言われると、恥ずかしくなってしまうわ。
「あ、ありがとう」
「では、最後にこちらのドレスを」
「これは……黒のドレス?」
クローディアが見せたのは、まるで彼の瞳のような……黒曜石の輝きを持つドレスだった。
さらりとした肌触りで、着心地が良さそう。そのドレスに着替えて、鏡の前に立つ。
金色の髪にエメラルドグリーンの瞳。白魚のようなきめ細かい肌に、黒曜石の輝きを持つドレス。
「――美しいですわ」
本当にそう思っているのだろう。
感慨深そうにつぶやくクローディアに、顔を向けた。
「このドレスは……?」
「フィリベルトさまの依頼で作りました! あっ、この姿はぜひフィリベルトさまにも見ていただかなければ!」
クローディアはぐっと拳を握って答え、そのままフィリベルトさまのところに駆けていく。
彼が、このドレスを依頼した……?
鏡に映る自分の姿をじっと見つめていると、彼女がフィリベルトさまを連れてきた。
「――ッ」
フィリベルトさまが、言葉を呑んだ。目を大きく見開いて、見入っているように感じる。
「フィリベルトさま……?」
「あ、ああ……すまない。あまりに美しすぎて、言葉が出なかった」
きゃっ、とクローディアが自分の頬に手を添え、歓喜の声を上げた。
「あ、ありがとう、ございます……」
まさか、そんなに賞賛されるとは思わなくて、顔がどんどん熱くなっていく。
きっと私、顔が真っ赤になっているわ。
「では、ごゆっくりどうぞー」
クローディアがにこにこと笑いながら、私とフィリベルトさまを二人きりにした。
パタン、と扉が閉まる音を聞きながら、私たちは顔を見合わせてしまう。
ごゆっくり、ってなによ、ごゆっくりって!
心の中でそう叫びながら、フィリベルトさまに身体を向けた。
「あ、あの、制服やドレスを依頼していただいて、ありがとうございます」
「い、いや。ユミルトゥスに留学するんだ。オレにできることをしたまでだよ」
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その心が嬉しいのだと伝えるには、どうすればいいだろう?
そっと彼の手に触れて、両手で包み込むようにすると、驚いたように目を丸くする姿が見えた。
「――私のために、してくださったのでしょう?」
「リディア」
「とても、嬉しいのです。フィリベルトさまが私を想ってくださっていることが伝わって」
考えてみれば、アレクシス殿下が私に贈り物をしたことはないのよね。
婚約者として彼の隣に立っていても見劣りしないように、と公爵家の財力で用意していたのよね、ドレスやアクセサリー。
だからこうして、私のために用意してくれるということがわかって、気恥ずかしさとともに、歓喜の叫びを上げたいほどでもあるの。
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