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3章:竜の国 ユミルトゥス
昔話 2話
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私の言葉に、フィリベルトさまは目を丸くして、ふっと表情を和らげた。
彼はそっと手を伸ばして私の髪に触れ、そのまま唇を落とす。
「ふぃ、フィリベルトさま?」
「伝え続けていて良かった」
え? と聞き返してしまった。
でも、すぐに彼の言葉が理解できて、ふふっと笑い声をこぼす。
「ええ。貴方の愛情が、私を素直にさせてくれたのです」
自分の胸に手を置いて、目を伏せる。
期間限定の恋人だったときから、彼は真摯に向き合ってくれた。
そのことがとても嬉しく、本当にありがたかった。
婚約破棄をされた私に、プロポーズをしてきたときは、びっくりしちゃったけど……
こんな私でも望んでくれる人がいると知って、ホッと安堵もできた。
公爵家の令嬢とはいえ、婚約を破棄された令嬢はいろいろな目で見られるし……
特に、『リディア』はフローラをいじめていたという捏造もされていたしね。
だから、一日休んでから学園に投稿するとき、フィリベルトさまが一緒で心強かった。
「ところで、フィリベルトさまと幼い頃に会っている……のですよね? 私、そのときの記憶が思い出せなくて……」
頬に手を添えて残念そうに苦笑を浮かべる私に、彼は「ああ……」と懐かしむように目を細めた。
「懐かしいな」
「竜を怖がっていたのですよね、私」
肯定するように首を縦に動くフィリベルトさま。
前世の記憶を取り戻した私は、竜のことは怖くない……
いえ、怖くないといえば嘘になるかもしれないけれど、想像上の生き物だった竜をこの目に映して興奮してしまった。
ムーンも、他の竜たちも、想像以上の生き物だった。人懐っこい竜にして会っていないから、怖さよりも好奇心のほうが勝ってしまった……と思うのよね。
「まぁ、実際子どもの頃、竜を見たら怖いと思うよ。オレも最初に会ったときは怖かったし」
肩をすくめるフィリベルトさま。意外に感じて目を瞬かせてしまった。
フィリベルトさまでも怖いと思うことがあったの? と。
私の考えを読んだように、彼は私の髪から手を離し、寄りかかるようにこつんと側頭部をくっつけた。
「ムーンはずっとあの大きさだったからな。父上に紹介されたとき、母上の後ろから離れなかったと何度もからかわれた」
「まぁ、フィリベルトさまに、そんな時代が……」
「幻滅したかい?」
「いいえ。可愛らしい話だと思います」
そう思ったのは、本当。
私の知っているフィリベルトさまは、いつも格好良くてスマートな方だから……こういうエピソードをもっと知りたい、なんて……ワガママかしら?
彼はそっと手を伸ばして私の髪に触れ、そのまま唇を落とす。
「ふぃ、フィリベルトさま?」
「伝え続けていて良かった」
え? と聞き返してしまった。
でも、すぐに彼の言葉が理解できて、ふふっと笑い声をこぼす。
「ええ。貴方の愛情が、私を素直にさせてくれたのです」
自分の胸に手を置いて、目を伏せる。
期間限定の恋人だったときから、彼は真摯に向き合ってくれた。
そのことがとても嬉しく、本当にありがたかった。
婚約破棄をされた私に、プロポーズをしてきたときは、びっくりしちゃったけど……
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頬に手を添えて残念そうに苦笑を浮かべる私に、彼は「ああ……」と懐かしむように目を細めた。
「懐かしいな」
「竜を怖がっていたのですよね、私」
肯定するように首を縦に動くフィリベルトさま。
前世の記憶を取り戻した私は、竜のことは怖くない……
いえ、怖くないといえば嘘になるかもしれないけれど、想像上の生き物だった竜をこの目に映して興奮してしまった。
ムーンも、他の竜たちも、想像以上の生き物だった。人懐っこい竜にして会っていないから、怖さよりも好奇心のほうが勝ってしまった……と思うのよね。
「まぁ、実際子どもの頃、竜を見たら怖いと思うよ。オレも最初に会ったときは怖かったし」
肩をすくめるフィリベルトさま。意外に感じて目を瞬かせてしまった。
フィリベルトさまでも怖いと思うことがあったの? と。
私の考えを読んだように、彼は私の髪から手を離し、寄りかかるようにこつんと側頭部をくっつけた。
「ムーンはずっとあの大きさだったからな。父上に紹介されたとき、母上の後ろから離れなかったと何度もからかわれた」
「まぁ、フィリベルトさまに、そんな時代が……」
「幻滅したかい?」
「いいえ。可愛らしい話だと思います」
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