【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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3章:竜の国 ユミルトゥス

貴方と出逢えて 1話

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「きみに助けられたとき、やっと見つけたという気持ちが強かった。声をかけたかったけれど、なかなか勇気が出なくてね……」

 情けないだろう? と頬をかくフィリベルトさまに、首を左右に振る。

 あの頃の私は、アレクシス殿下の婚約者として気を張って過ごしていたから、声をかけにくい雰囲気だったのもの。

 むしろ、人と接するのは、お茶会やパーティーのとき限定だった。

 もちろん、学園の人たちとも話してはいた。……必要最低限の話だけど、ね。

「きっと、あの婚約破棄宣言がなければ、こうしてフィリベルトさまと穏やかに話せるようにはならなかったと思いますわ」

 彼と穏やかに過ごす時間が、心の傷を癒してくれた。

 婚約破棄されてからのプロポーズだったから、傷ついた心と驚きが混じり合って、いろいろ複雑だったのは本当だけど……

 彼の言葉のおかげで、救われたと思うこともあるの。

「そういえば、期間限定の恋人……の、期間を決めていませんでしたわね」

 婚約破棄されたあとのことを思い返していると、期間限定の恋人になったときのことも思い出した。

 あのとき、フィリベルトさまは『期間限定の恋人』を提案してくれたけれど、その『期間限定』の期間を決めていなかったことに気づいたのだ。

「……あ、気づいちゃった?」

 どうやら、その期間を決めなかったのは、わざとだったらしい。

「期間を決めなかったのは、リディアを手放したくなかったからだよ」

 その言葉が、心にくすぐったくて、そっと目を伏せた。

「……ということは、期間を決めていたら……?」
「延長する予定だった」

 私が期間のことを口にしなかったから、期間限定(無期限)になっていたのかもしれないわね。

 婚約破棄された翌日のことだったし、前世を思い出したこともあってまだ混乱していたから、期間のことについて頭が回らなかったのよ。

「婚約するまで?」

 フィリベルトさまに視線を向けて問いかけると、彼はパチンとウインクをした。

「結婚するまで。結婚を許可してもらえたら、もうそれはオレのことを好きになったってことだろう?」

 どうしてかな、結婚するまで諦めないと伝えられている気がするわ。……でも、その気持ちが嬉しい、なんて……

「……貴方あなたに出逢えてよかった。私に『恋愛』の素晴らしさを教えてくれて、ありがとうございます」
「それは、オレのセリフでもあるよ。きみと出逢った日から、ずっと周りがキラキラしているように見えるんだ」

 私への執着心を、強く感じる。

 強く感じるけれど――その執着心が、心地いい。

 安心させてくれるから、かな?
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