【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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3章:竜の国 ユミルトゥス

エタニティリング 1話

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 暗くなる前にスターリング邸に戻り、夕食の時間まで休憩することになった。

「ローレン、チェルシー。街はどうだった?」
「とても素晴らしい街でした。本屋もジャンル豊富で、どれを買おうか悩みました」
「アクセサリー店も素晴らしかったですよ! 私でも買える値段のブレスレットやブローチがあって、いつか買おうかなって考えていたら、デリックさまが買ってくださったんです!」

 スターリング邸に用意された私の部屋で、ローレンとチェルシーと一緒に今日のことを話す。

 二人とも恍惚こうこつの表情を浮かべているから、相当この領地が気に入ったようだ。

「どんなものを買ってくれたの?」
「あ、これです。可愛いでしょう?」

 チェルシーが見せてくれたのは、ブローチだった。三日月をモチーフにしたもので、銀色の土台に小さな青い宝石がはめこまれている。

「素敵ね」
「えへへ、ありがとうございます」
「ローレンは? なにか買ったの?」
「はい、本を数冊購入しました」

 本好きのローレンだから、きっとワクワクしているわね。

「この屋敷には、どんな本が管理されているんでしょうね……」
「今度、フィリベルトさまに聞いてみるわ」
「ぜひ、お願いします」

 それに関しては、私も気になっていた。

 こんなに広いお屋敷だから、本の所蔵も想像以上なんじゃないかな。

 王妃教育を受けていたときは、持てなかった『自由時間』。

 婚約破棄をされてから、自由時間が増えて本を――物語を読むという趣味もできた。

 そういえば、今頃あの人たちはどうしているんだろう?

 私が留学することを知ったフローラは『うそでしょ!?』と叫んでいたわねぇ……それももう、遠い昔のようだわ。

 ぼんやりと考えていると、扉がノックされた。

「はい」
「リディアちゃん、ちょっといいかしら?」

 エステルさまだわ! とローレンとチェルシーに目配りする。

 ローレンが急いで扉を開けて、エステルさまを部屋に招いた。

「あら、お邪魔かしら?」
「まさか! エステルさまならいつでも歓迎ですわ」
「うふふ、ありがとう」

 エステルさまがソファまで移動すると、ローレンとチェルシーはお茶を用意するために部屋から出ていく。

 二人きりになると、エステルさまはソファに座り、私の左手の薬指にきらめく指輪に気づき、目をキラキラと輝かせた。

「その指輪、フィリベルトから?」
「は、はい。そうです……」

 エステルさまの期待のまなざしに、おずおずと左手を隣に座っている彼女に伸ばす。

 そっと私の手を取って、じっくりと指輪を眺めて、ほぅ、と息をつく。

「我が息子ながら、よい指輪を選んだわね。エタニティリングなんて、とても素敵」
「エタニティリング?」
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