【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

文字の大きさ
84 / 97
4章:これは、私の恋物語

お茶会 1話

しおりを挟む
 ◆◆◆

 一週間後――……私はローレンとチェルシーに頼んで、身支度を整えてもらった。

 だって、今日はお茶会の日だ。

 お母さまの形見のネックレスを身につけると、なんだかしゃんと背筋が伸びる気がする。

 扉がノックされ、返事をすると、すぐにフィリベルトさまが姿を見せた。

「――やはり、美しいな」

 私を視界に入れたとたん、そんなことを口走るから、顔がどんどんと熱くなってしまう。

 にまにまと笑っているチェルシー、ローレンは口元を隠して「うふふ」と笑っていた。

 今日の私のドレスは、あの日、クローディア服飾店で試着させてもらったドレスの一つ。

 黒曜石のようなドレス……ではなく、フィリベルトさまの髪色である鮮やかな赤色のドレスだ。身につけるアクセサリーは、お母さまの形見のネックレスと、フィリベルトさまからいただいた指輪のみ。

「レディ、エスコートをしてもよろしいですか?」
「ふふっ、お願いいたします」

 すっと手を差し出すフィリベルトさま。その手を取って、私たちはエステルさまたちが待つ玄関に向かう。

 玄関先にはすでに、エステルさまとアーノルドさまがいた。

「申し訳ありません、お待たせしましたか?」
「いや、時間よりも少し早いくらいだ。……リディア嬢、そう我々に気を遣わなくてもいい。口調ももう少し砕けても構わない」
「えっ、ですが……」

 アーノルドさまの言葉は、意外だった。くすっとエステルさまは笑い、ツンツンと彼の腕を突く。

「本当に気を楽にしていいのよ。あなたはもう、わたくしたちの娘でもあるんだから」
「娘……」
「それに、わたくしたちの子どもはフィリベルトだけだからね。娘がほしかったのよ、この人も」

 パチン、とウインクするエステルさまに、ふいとそっぽを向くアーノルドさま。

 彼の耳が赤くなっていることに気づき、エステルさまの言葉が本当なのだと感じて、心の中がじんわりと温かくなる。

 こんなに温かなご両親に育てられたから、フィリベルトさまはいつも優しいのかしら?

「それじゃあ、さっそくお茶会にいきましょう!」

 執事がガチャリと玄関の扉を開け、エステルさまはアーノルドさまにエスコートをされながら、馬車まで向かう。

 私たちは顔を見合わせて、ふふっと笑いをこぼす。二人を待たせてはいけないから、すぐに馬車まで歩く。玄関前には二台の馬車があり、そのうちの一台に乗ることになった。

「四人で乗るわけではないんですね」
「スターリング家の人間に囲まれて、リディアはリラックスできる?」
「……ご配慮くださり、ありがとうございます」

 エステルさまとは、食事以外の時間を過ごすことも増えた。主に、今回のお茶会について教えてもらうことだったけど。

 スターリングと仲の良い貴族――ウェットン伯爵家がお茶会の招待状を送ってくれたらしい。

 ――『ぜひ、フローレンス公爵令嬢も』とつづられていた、と。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」  侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。  その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。  フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。  そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。  そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。  死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて…… ※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

処理中です...