85 / 97
4章:これは、私の恋物語
お茶会 2話
しおりを挟む
なぜ私を招いてくれたのかはわからないけれど――……できれば、この国の方々とたくさん交流して、良い印象を残したい。
だって、私もユミルトゥスの一員になるのだから。
「ウェットン伯爵家は、フィリベルトさまから見て、どんな方々なのですか?」
「んー、そうだな。堅実な感じかな。義理堅く、優しいけれど……結構熱血なイメージ」
「熱血?」
エステルさまに尋ねたときは、『みんないい人よ』で終わってしまったから、意外な言葉に目を丸くする。
「ウェットン伯爵家の騎士団はすごいよ。オレでもビックリした」
フィリベルトさまが驚くくらいの、騎士団……? きょとんとした私に、彼はただ笑みを深めた。
それからしばらくして、ウェットン伯爵家についたらしく、馬車が動きを止める。
扉を開け、フィリベルトさまが降りると、私に手を差し出した。
そっと手を重ねて、馬車を降りると、フィリベルトさまが「そうそう」と耳元でささやく。
「ウェットン伯爵家には令息と令嬢がいてね、二人ともオレらの学友になるよ」
「……学友……」
サクリアナ王国ではできなかった、学友。
お茶会に参加することはあったけれど、心からの『親友』はいなかった。
「……仲良くなれると、嬉しいですわ」
「そうだね。友だちが増えると交流の輪が広がるから」
どんな人たちなのかしら……少しの不安と、大きな期待で、ドキドキしてきたわ。
「エステルさま! それにアーノルドさま……フィリベルトさまと、あなたが噂のリディアさまね!」
馬車から降りていたエステルさまたちと一緒に、ウェットン伯爵家に足を踏み入れると、すぐに穏やかな笑顔を浮かべる女性が声をかけてきた。
「こらこら、オーガスタ。お客さまが驚いてしまうだろう?」
「あっ、そうよね。ごめんなさいね、フローレンス公爵令嬢」
すっとカーテシーをする女性。きっと彼女がウェットン伯爵夫人ね。
「ようこそ、ウェットン伯爵家へ。お会いできて光栄です」
胸元に手を添えて、会釈する男性がウェットン伯爵。
その後ろにいるのが、学友になる令息と令嬢かしら……?
「初めまして。サクリアナ王国から参りました。リディア・フローレンスと申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
カーテシーをすると、「おお……」となぜか感心したような声が聞こえた。
「ご丁寧にありがとうございます。レイフ・ウェットンと申します。お前たちも挨拶をしなさい」
「オーガスタ・ウェットンです。レイフの妻ですわ」
「ランドル・ウェットン。スターリング公爵家の方々には、いつもよくしていただいております」
「ソニア・ウェットンと申します。……よろしくお願いいたします」
ウェットン家の方々の挨拶を聞いて、ソニアさまが私のことを睨むようにじっと見ていることに気づく。……まだ挨拶しかしていないけど、私、彼女の気に障ることをしちゃったかしら……?
だって、私もユミルトゥスの一員になるのだから。
「ウェットン伯爵家は、フィリベルトさまから見て、どんな方々なのですか?」
「んー、そうだな。堅実な感じかな。義理堅く、優しいけれど……結構熱血なイメージ」
「熱血?」
エステルさまに尋ねたときは、『みんないい人よ』で終わってしまったから、意外な言葉に目を丸くする。
「ウェットン伯爵家の騎士団はすごいよ。オレでもビックリした」
フィリベルトさまが驚くくらいの、騎士団……? きょとんとした私に、彼はただ笑みを深めた。
それからしばらくして、ウェットン伯爵家についたらしく、馬車が動きを止める。
扉を開け、フィリベルトさまが降りると、私に手を差し出した。
そっと手を重ねて、馬車を降りると、フィリベルトさまが「そうそう」と耳元でささやく。
「ウェットン伯爵家には令息と令嬢がいてね、二人ともオレらの学友になるよ」
「……学友……」
サクリアナ王国ではできなかった、学友。
お茶会に参加することはあったけれど、心からの『親友』はいなかった。
「……仲良くなれると、嬉しいですわ」
「そうだね。友だちが増えると交流の輪が広がるから」
どんな人たちなのかしら……少しの不安と、大きな期待で、ドキドキしてきたわ。
「エステルさま! それにアーノルドさま……フィリベルトさまと、あなたが噂のリディアさまね!」
馬車から降りていたエステルさまたちと一緒に、ウェットン伯爵家に足を踏み入れると、すぐに穏やかな笑顔を浮かべる女性が声をかけてきた。
「こらこら、オーガスタ。お客さまが驚いてしまうだろう?」
「あっ、そうよね。ごめんなさいね、フローレンス公爵令嬢」
すっとカーテシーをする女性。きっと彼女がウェットン伯爵夫人ね。
「ようこそ、ウェットン伯爵家へ。お会いできて光栄です」
胸元に手を添えて、会釈する男性がウェットン伯爵。
その後ろにいるのが、学友になる令息と令嬢かしら……?
「初めまして。サクリアナ王国から参りました。リディア・フローレンスと申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
カーテシーをすると、「おお……」となぜか感心したような声が聞こえた。
「ご丁寧にありがとうございます。レイフ・ウェットンと申します。お前たちも挨拶をしなさい」
「オーガスタ・ウェットンです。レイフの妻ですわ」
「ランドル・ウェットン。スターリング公爵家の方々には、いつもよくしていただいております」
「ソニア・ウェットンと申します。……よろしくお願いいたします」
ウェットン家の方々の挨拶を聞いて、ソニアさまが私のことを睨むようにじっと見ていることに気づく。……まだ挨拶しかしていないけど、私、彼女の気に障ることをしちゃったかしら……?
228
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜
八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。
その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。
フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。
そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。
そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。
死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて……
※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる