【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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4章:これは、私の恋物語

お茶会 6話

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「みなさまがいてくださるのなら、とても心強いですわ」

 もしかしたら、サクリアナ王国でも下心なく私と友人になりたい人がいたのかもしれない。

 でも、あの頃の私には、そのことに気づく心の余裕がなかった。

 留学を終えたら、もう一度……学園の人たちと話してみたい。今度はどう感じるのか、自分自身に興味がある。

 それに――この優しい人たちに囲まれて、ユミルトゥスでの生活はきっと素晴らしいものになる。そんな、予感がするの。

 お茶会は、始終穏やかな雰囲気で終わった。

 私たちはウェットン伯爵たちに挨拶をしてから、スターリング邸へ戻る。

「今日は疲れたでしょう? ゆっくり休んでちょうだいね」
「はい。……本当にありがとうございました」
「たくさん自慢できて楽しかったわぁ」

 私の感謝の言葉を聞いて、エステルさまは一瞬目を丸くしたけれど、すぐにうふふと笑い声を上げた。

「今後のスケジュールも合わせないとね。神殿で婚約式もしないといけないし……」
「母上、今日はもういいでしょう」

 フィリベルトさまが呆れたように肩をすくめ、私の手を取る。

 それを見たアーノルドさまはエステルさまの手を取り、緩やかに首を左右に振った。

「そろそろ、きみの時間をくれないか?」
「あらっ! 今日はあまりお話できなかったから、寂しかったのね。それじゃあ、わたくしたちは今日話せなかった分を取り戻しましょうか」

 ぎゅっとアーノルドさまの手を握るエステルさまに、フィリベルトさまは「それでは、これで」と私の手を掴んだまま歩き出す。

 廊下を歩いていると、途中でピタリと足を止めてこちらを振り返った。

「うちの両親が、本当にすまない」
「いえ……」

 互いを想い合っている夫婦なのだと感じているから、フィリベルトさまが謝ることではないの。

 まぁ、でも……どこを見ていいのか、聞いていていいのか悩んじゃうけれどね。

 二人きりだと、どれだけ甘い雰囲気になるのかしら……なんて、ちょっぴりの好奇心。

 さすがに見たいとは思わないけどね。お邪魔だろうし……

「お茶会は楽しめたかい?」
「はい。とても。ソニアさまに紹介していただいた方々と、友人になりました」
「そっか、よかった。オレがきみの傍にいるつもりだけど、男女だとどうしても限界があるからね。ソニアの友人たちなら、きっとリディアを支えてくれるだろう」
「スターリング公爵家とウェットン伯爵家は、昔から親交が?」

 こくりとうなずくフィリベルトさま。

「もともと、母とウェットン伯爵夫人が友人なんだ。父との恋を応援してもらっていた、らしい」
「らしい?」

 曖昧な言葉だったので、首をかしげると、フィリベルトさまは後頭部に手を置いた。

「いや、あの二人が揃うと話が長くてさ。子どもの頃はそれが苦痛だったなぁ、と」

 どうやら聞き流していたみたいね。

「ふふ」
「リディア?」
「どんなに話が長くなっても、私の話は聞いてくださるのが、嬉しくて」

 たくさん、フィリベルトさまには情けないところを見せてしまった。

 それでも彼は、私の話を真摯しんしに聞いてくれた。ずっと、彼の優しさに甘えていたの。

 ――これからも、甘えるつもりはあるのだけど、ね。
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