【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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4章:これは、私の恋物語

これは、私の恋物語 1話

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 ◆◆◆

 ――それからは、婚約式に向けていろいろと努力をした。

 ドレスを選んだり、アクセサリーを選んだり、食べ物や飲み物にもこだわって、史上最高の『リディア・フローレンス』を目指したの。

 すべての準備を終え、ついに今日、神殿で婚約式をする。

 神殿までは、竜に乗って向かった。いろいろなものも運ばないといけないから、という理由だったけれど、たぶん、私のためだ。

 フィリベルトさまの竜――ムーンにまた乗りたいと、彼に話したことがあったから。

 ムーンに乗って空の旅路を楽しみながら、神殿に向かう。

 神殿の裏に、竜が降りるスペースがあるみたいで、そこに着地した。

「では、今からお嬢さまを、とびきり綺麗にしますね!」

 竜に乗るのはちょっと……と言っていたローレンとチェルシーは、先に馬車で神殿に向かっていたため、私たちに気づくと大きく手を振って迎えてくれた。すぐにこちらに近づいて、私の手を取るとフィリベルトさまに満面の笑みをみせる。

「楽しみにしている。どんなに綺麗になるのか」
「ふふ、私も自分がどれだけ綺麗になるのか楽しみですわ」

 神殿の一室を借りて、さっそく婚約式の準備を始めた。

 ドレスは純白、ネックレスはお母様の形見。指輪はフィリベルトさまが用意してくださったもの。

 髪をまとめあげ、化粧を終えた自分の姿を鏡で確認する。

「……二人の手腕には、本当に感心するわ……」

 鏡の中の私は、私ではないみたいに美しかった。

 少しきつい印象を残しやすい目は、垂れ目、まではいかないけれど柔らかな印象に。

 薄くチークが入り、血色よく。ローズピンクの口紅で、なんだかとても『愛らしい』と自分で思える姿だ。

 部屋の扉をノックする音が聞こえ、返事をするとお父さまとお兄さまがひょっこりと顔を覗かせた。二人とも、私のことを見ると、大きく目を見開き、それからすぐに表情を朗らかにする。

「とても綺麗だよ、リディア」
「ああ。もうこんなに……大人の女性になったんだな……」

 お兄さまはしみじみと、お父さまは感慨深そうに言葉をこぼす。

「ありがとうございます。キースお兄さま、お父さま。二人とも、忙しかったのでは……?」
「リディアのためなら、いつでも都合を合わせるよ」
「竜にも乗ってみたかったからな」

 どうやら、スターリング家の竜で迎えにいき、ここまで竜に乗ってきたらしい。子どものように目をキラキラと輝かせている二人を見て、くすりと口角を上げた。

「どうでした、空の旅は?」
「とてもスリルがあったよ。でも、風を切る感覚、というか……とてもワクワクした」
「ユミルトゥスが竜の国と呼ばれている意味が、よく理解できた気がする」

 私もムーンに乗ってきたから、二人の言葉はよくわかる。やっぱり、竜に乗って移動するのって、サクリアナ王国ではなかったことだから新鮮なのよね。

 二人とも酔わなかったみたいだから、帰りもきっと竜に乗っていくんだろうな。
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