夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章

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第1話 『魔法のカードでご招待、ウソみたいな夢の国!』

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 小学一年生からずっと一緒の俺たち3人だけど、毎年ちょっとずつ、遊べる時間が減っていった。ミアもホマレも、塾や、習い事が増えて、忙しくなったんだ。俺は、家で通信教育するくらいだけど、まわりにも二人と同じようなヤツらも多いし、なかにはミアみたいに、中学受験するってのもいる。

 だから、学校でくらいみんなでバカみてーにはしゃぎたい。人狼ゲームやりだしたのも、そういう気持ちがきっかけだ。


「でもさ……」普段おとなしいホマレが、譲らずに言う。「後藤先生に悪いことしちゃったのは、本当だよ。ちゃんと謝らないと」

「ぐっ……そりゃ、そーだけど」


 さすがに、ここまでの騒ぎになるってのは、俺も計算できてなかった。
後藤先生は、4年のときの担任だ。ちょっと天然気味だけど、明るくて、優しい先生だ(どっかの誰かさんとはおおちがいで)。

 そんな先生が休まなきゃいけないほどストレスだったってのは、反省しないと……遊びって、みんなが楽しくないと意味ないもんな。

 すると、それまで黙ってたミアが、あー! っと大きな声を出した。


「ミア、ひらめいた! 二組の子たちにも声かけて、お見舞いのプレゼント作らない? ひとり一枚お手紙を書いて、バインダーにとじて渡すの。そうしたらきっと、後藤先生に気持ち伝わるよ」

「おっ、いーこと思いつくじゃん! じゃあ、駅前行って材料買おうぜ! ……っと、ミアもホマレも、塾の時間大丈夫か?」

「うん、ミア的にはまだ平気」

「僕も。買い物してすぐ電車乗れば、大丈夫」

「よっしゃ! あいうトリオ~、ファイヤー!」

「「ファイヤー!」」



 俺たちはズンズン進み、あっという間に駅前の商店街に到着した。

 小学生の強い味方・一〇〇円均一ショップめがけて一直線……だったけど、いつもとちがう光景が見えて立ち止まる。


「なんかあの店、人めっちゃ集まってんな」

「しかもミアたちくらいの子ばっかりだね」

「あそこ……ずっと、空いてたテナントだ。新しいお店ができたのかな」


 ホマレの言葉に、俺も思い出す。たしかに商店街のすみっこで、ずっとシャッターの下りてた店があったな。

 ついつい俺らも近づいてみた。まだ明るいのにピッカピカのネオンが光る看板が、まっさきに目に入る。


「ゲームショップ《FULL DREAM》……ホマレ、なんて読むんだ?」

「フル・ドリーム……夢いっぱい、って意味だと思うけど」


 そのとき、店の前で子どもたちに囲まれていたそいつが声を上げた。


「さあさあ、嬢ちゃん坊ちゃん寄っといで! 新装開店、夢いっぱい興奮いっぱい、楽しいゲーム屋さんだよ」

「わっ、あのピエロかっわいー! ちょっと、なか、のぞいていこ!」


 ミアははしゃぐが、俺とホマレは黙って目を合わせて、頭を振る。

 ピエロのかっこうは、どちらかというとリアルテイストだった。そのうえ、なんの動物の要素を混ぜたのか、帽子からぴょっこりたった二つの耳と少し長めの垂れ下がった鼻がワル目立ってて、ぶっちゃけちょっとグロめですらある。あれをかわいい、なんていうのはミアだけだろう。

 それに、もうひとつ大事なことがある。


「俺、今月こづかいピンチ……これからプレゼントの材料買わなきゃだし」

「あ……そーいや、ミアも」

「僕は大丈夫……だけど、あのピエロ、やっぱりちょっと怖いかも」


 改めて俺たち3人は一〇〇均に向かって歩き出した――ところに、いきなり例のピエロが立ちはだかった。俺とホマレは思わず悲鳴を上げたが、ピエロはお構いなしに、いやにフレンドリーに話しかけてくる。


「開店記念に、みんなにタダでお配りしてるよ! なんと、賢くて勇気のある坊ちゃん嬢ちゃん限定だ! そーら、カモン&ジョイナス!」


 そして手品みたいな手つきで、俺たちになにか渡してきた。


「なんだこれ……カード?」


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