2 / 88
第1話 『魔法のカードでご招待、ウソみたいな夢の国!』
②
しおりを挟む「そう、君たちの企画は大いな反響を生んだ。そして、みんなが授業をまともに聞かなくなった。特にひどいのは2組で、生徒がゲームにのめりこんでそちらにばかり気を取られ、後藤先生は心労できゅうきょ一週間休養されることになった」
「うっ……それは、悪かったと思うよ……けど!」
俺は肩を落とす。
「入院しているじいちゃんの願いなんだよ……! 学校の規則にとらわれず、子どもたちが自由に遊んで輝いているところを見たいって! 俺はそんなじいちゃんに元気になってもらおーと、」
「おじい様は君が五歳のときにお亡くなりになっているだろう。生徒の家庭環境を私が把握していないとでも思ったか――〝オオカミ少年〟?」
ぐぬっ、と俺は歯噛みするあいだに、本間先生はパタンと出席簿を閉じた。
「禁止令は明日からだ。所持しているのを発見した場合、没収と……校長先生の〝ありがたいお話〟が待っている。よく考えた上で行動するように――特にそこの、あいうトリオ」
釘をさすような目で俺たちを見て、
「カードゲームは放課後、家で楽しみなさい。では一時間目に移る」
何事もなかったように、先生は授業を始めた。
◇◆◇
「ちっくしょー、アクマの本間! 腹立つー!」
放課後、ミア・ホマレと一緒の帰り道。
俺は朝のことを思い出して腹が立ち、思わずその場で地団太を踏んだ。
今年からこの学校にやってきたクセに、本間先生は他のどの先生より生徒のことを知っている。
いつもピシッとスーツ姿で、生徒のどんなイタズラにも動じず、冷静に対処していく……オトナたちからはすごく評判がいいけど、もちろん俺ら生徒からしたらたまったもんじゃない。それで、本人のいないところでは《アクマの本間》なんて言ったりしてる。
ここだけの話、誰も笑ったとこ見たことないんだって。女の人だけど、メイクしたり、スカート穿いたりもしてるところも見たことない。というか、趣味はなにとか、休みの日にどうしてるとか、生徒だけじゃなく先生たちも知らないらしい。いっさいがっさいが謎に包まれた、新任教師――それが、本間先生だ。
「でも絶対いつか、まいったって言わせてやる! ……あれ、どうしたんだよ二人とも。テンション低くね?」
俺の右と左にいるミアとホマレは、なんだか落ち込みモードだ。
ホマレがため息交じりに言う。
「でもさ、たしかに僕らも、よくなかったかも……」
「ま、ちょーっとやりすぎたよね」
ミアまでそんなことを言うので、俺はちょっとムッとした。
「おまえら、それでいーわけ? オトナに勝手に決められてイヤじゃねーの?! なにが、『カードゲームは放課後、家で楽しみなさい』だ。それができないから学校でやってるんだっつーの!」
10
あなたにおすすめの小説
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
VTuberデビュー! ~自分の声が苦手だったわたしが、VTuberになることになりました~
柚木ゆず
児童書・童話
「君の声はすごく可愛くて、僕の描いたキャラクターにピッタリなんです。もしよろしければ、VTuberになってくれませんか?」
声が変だと同級生や教師に笑われ続けたことが原因で、その時からずっと家族の前以外では声を出せなくなっていた女の子・佐倉美月。
そんな美月はある日偶然、隣家に引っ越してきた同い年の少年・田宮翔と――SNSで人気の中学生絵師に声を聞かれたことが切っ掛けとなり、やがて自分の声に対する認識が変わってゆくことになるのでした。
童話絵本版 アリとキリギリス∞(インフィニティ)
カワカツ
絵本
その夜……僕は死んだ……
誰もいない野原のステージの上で……
アリの子「アントン」とキリギリスの「ギリィ」が奏でる 少し切ない ある野原の物語 ———
全16話+エピローグで紡ぐ「小さないのちの世界」を、どうぞお楽しみ下さい。
※高学年〜大人向き
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※noichigoさんに転載。
※ブザービートからはじまる恋
モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?
待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。
けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た!
……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね?
何もかも、私の勘違いだよね?
信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?!
【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!
【完】888字物語
丹斗大巴
児童書・童話
どこからでも読み始められる888字完結型のショートショート集。
・888字でコワイ話
・888字でミステリ
・888字でふしぎ
とっても怖~いお話もあります。
夜トイレに行けなくなっちゃうかも…!?
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
アホの子と変な召使いと、その怖い親父たち
板倉恭司
児童書・童話
森の中で両親と暮らす天然少女ロミナと、極悪な魔術師に仕える召使いの少年ジュリアン。城塞都市バーレンで、ふたりは偶然に出会い惹かれ合う。しかし、ふたりには重大な秘密があった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる