9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん

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ごしょう!

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<しかし問題は、おばあちゃん精霊たち……>

 聖女ミアの上空にいる(と思われる)光の天使たちが、目もくらむ光を放っている。
 マクシミリアンを守護するおばあちゃんに狙いを定めて発射されるビーム、その眩しい閃光の中を、自然4属性の精霊レジェンドたちが縦横無尽に飛び回り、間一髪のところで躱している。
 闇の五天王イベルが「年寄りの冷や水が怖すぎる!」「おばあちゃん無理しないで!」などと、失礼なんだか優しいんだかよくわからないことを叫びながら、天使どもが投げつけてくる光を蹴散らす。
 イベルは夜の闇を思わせる漆黒の髪、血が滴っているような赤い瞳を持つ美丈夫で、なんならアベルよりも魔王っぽかった。
 使い魔たちがわが身を危険にさらして勇敢に闘っている中、マクシミリアンと聖女ミアのワルツが終盤に入った。
 ミアの焦りは相当なものであるらしく、やたらに瞬きをぱちぱちと繰り返し、魅了魔法を何回も重ね掛けしようとしている様子が伝わってくる。

《どうやら、筋肉を鍛えれば魔法がまったく効かなくなる、というわけではないようですね。筋肉で魔法を無効化したり、消滅させている訳ではなく、魔法が筋肉を『滑って』いるだけです。屈強な筋肉に弾き飛ばされて軌道が逸れた魅了魔法を、必死に押し戻したい光の天使VSそれを邪魔する精霊とイベル、という構図になってます》

《いや魔法が滑る『だけ』って、それだけでも筋肉の優位性はとんでもないと思うぞ?》

 黒点アベルとたっくんの会話を聞きながら、アリーは胸の前で両手を組み合わせ、ぎゅうっと力を込めた。

<やばいよやばいよ、おばあちゃんたち弱ってきてるっ!>

 マクシミリアンの凛とした顔が、ほんのわずかに青白くなってきた気がする。対照的にミアは頬は薔薇色のままで、瞳はいっそう輝きを増した。
 聖女ミアを見つめる人々は「妖精のようだ」とため息をつき、彼女の美しさを誉めそやしている。
 異世界人でありながら彼女の挙措は申し分なく、これが筋書きのある物語ならば、意味不明なほど聖女ミアが優位になるように作られているに違いない。
 やがて音楽が止み、あでやかに着飾ってワルツを踊っていた人々も動きを止めた。
 マクシミリアンは常にミアとの間に節度のある距離を保ち、回転するときでさえその間隔を狭めなかった。
 聖女ミアの魅了攻勢がようやくストップし、疲労困憊で地面に落下していくおばあちゃんたちに、イベルがすかさず手を差しのべ、はちゃめちゃに優しい手つきで回収している。

《なんというか、闇の使徒の方がよほど天使っぽいな》

《闇の使徒というか、魔王たる私が慈悲深いので。彼らはきっと上司に似たのでしょうねえ。しかし、あのミアという娘。己の上空で魔法大決戦が巻き起こっていたことに、まったく気づいていませんね。魔力は恐ろしく強いが、使い魔にはまったく敬意を払っていないらしい。光のクソども、よくあれに仕えていられるな……》

《見た目は庇護欲をそそるが、あの娘の人間性を見るに、聖なるものに好かれる要素がこれっぽっちもなさそうだ。光のクソどもの気持ちが、我もさっぱりわからない》

 黒点アベルの影響(ないしはアリーの影響)で、ついにたっくんまでクソクソ言い始めてしまった。
 誠に遺憾、とアリーが思っていると、ミアは王太子がいつまでたっても手の甲に唇を押し当ててこないことに焦れたらしく、助けを求めるように玉座に視線をやった。
 そこに座っているクソ国王とクソ王妃──この2人に関しては真実クソなのでクソを自重しないことにする──が慌てたように立ち上がった。

「おおお、素晴らしかったぞマクシミリアン、そして聖女ミア!」

「ええ、ええ。まるでお伽噺の王子様とお姫様のようでしてよ。我が国に聖女様が降ってくるなんて、なんて幸運なのかしら!」

 ちょっと前までつるっぱげだったのに、聖女のパワーで奇跡の発毛しちゃってふっさふさな国王。古今東西のありとあらゆる美容法を試しても改善できなかった小皺がすっかり消えた王妃。
 そしてルーリシア教団の教祖エクラム、その他国王派の人々が、聖女ミアの周囲に集結した。
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