84 / 132
第83話 死者を映す水晶
しおりを挟む
最深部へと続く階段を降りて行く。
「ここが、最深部か……」
最深部には守護者となるモンスターが居ると聞いていたのだが、そのモンスターの姿はどこにも無かった。
「守護者は居ないみたいですね」
「ああ、そうだな」
「なんだ、守護者とは戦って見たかったのだがな」
シルフィルは久々の戦いを楽しんでいる様子だ。
「まぁ、何にせよ面倒な敵との戦闘は避けるに越したことはない」
「まぁ、そうなのだがな」
樹は最深部の部屋の中央にある水晶に目がいった。
「これが、死者を映すと言われている水晶か」
死者への思いが強く無いと映し出すことは出来ないとされている。
「マスターは誰か居るのか?」
「ああ、映ってくれるかは分からないがな」
何せよ相手はこの世界とは別の世界の人間。
確実に彼女と会話出来る保証は何処にも無い。
「芽衣……」
樹は通り魔に刺され、この世を去った幼なじみの芽衣を想って水晶に軽く触れた。
「うっ……」
その時、水晶は白く強い光に包まれた。
「め、芽衣か……」
「久しぶりだね。樹」
水晶に写し出されたのは紛れもなく元いた世界で失った芽衣の姿だった。
「樹、なんか凄く雰囲気変わったね。ますますカッコよくなったんじゃない?」
樹の目には涙が溢れていた。
「芽衣……芽衣……」
「樹さま」
樹の背中にアリアが手を当てた。
「せっかく、強くなられたんです。泣いてばかりでは無く、カッコ良くなった樹さまを芽衣さまにも見せて差し上げたらいかがですか?」
アリアが樹の背中を押してくれた。
「芽衣、俺も一度死んだんだ。訳あってこの通り生きているがな……」
樹はアリアたちに聞こえないくらいの声で言った。
「今でも後悔してるよ。この力が、この強さがあれば、お前を守ってやれたのにな」
「仕方ないよ。もう。だからさ、樹の力は今、困ってる人に手を差し伸べてよ」
「おう、分かった」
すると芽衣は微笑んだ。
「本当に樹なんだよね。カッコ良くなったね。ずっと伝えたかったんだ。私、樹のこと好きだったよ」
そう言うと芽衣の目にも一筋の涙が流れた。
「俺も、俺も芽衣の事が好きだったよ」
「ありがとう。もし、生まれ変わった先でも手を取り合えたら沢山の恋をしよ」
「おう。もちろんだ。それまで俺はこの国を、世界を、出会った大切な人たちを死ぬ気で守るよ」
「うん、約束だね」
芽衣がそう言った瞬間、またしても水晶が光った。
やがてその光が落ち着くと芽衣の姿は見えなくなっていた。
「芽衣、約束は必ず果たすよ……」
樹はその拳を固く握った。
「お話、出来ました?」
「う、うん。ありがとう。アリアのおかけだ」
「いえ、私は何も」
「マスター、カッコ良かったぜ」
アリアと美人精霊が声を掛けてくれた。
「帰ろう」
「はい」
『転移』
樹は転移魔法を起動し、王都の屋敷へと帰還した。
芽衣との大切な約束と今後の目標を胸にし、樹たちは悪を切る。
「ここが、最深部か……」
最深部には守護者となるモンスターが居ると聞いていたのだが、そのモンスターの姿はどこにも無かった。
「守護者は居ないみたいですね」
「ああ、そうだな」
「なんだ、守護者とは戦って見たかったのだがな」
シルフィルは久々の戦いを楽しんでいる様子だ。
「まぁ、何にせよ面倒な敵との戦闘は避けるに越したことはない」
「まぁ、そうなのだがな」
樹は最深部の部屋の中央にある水晶に目がいった。
「これが、死者を映すと言われている水晶か」
死者への思いが強く無いと映し出すことは出来ないとされている。
「マスターは誰か居るのか?」
「ああ、映ってくれるかは分からないがな」
何せよ相手はこの世界とは別の世界の人間。
確実に彼女と会話出来る保証は何処にも無い。
「芽衣……」
樹は通り魔に刺され、この世を去った幼なじみの芽衣を想って水晶に軽く触れた。
「うっ……」
その時、水晶は白く強い光に包まれた。
「め、芽衣か……」
「久しぶりだね。樹」
水晶に写し出されたのは紛れもなく元いた世界で失った芽衣の姿だった。
「樹、なんか凄く雰囲気変わったね。ますますカッコよくなったんじゃない?」
樹の目には涙が溢れていた。
「芽衣……芽衣……」
「樹さま」
樹の背中にアリアが手を当てた。
「せっかく、強くなられたんです。泣いてばかりでは無く、カッコ良くなった樹さまを芽衣さまにも見せて差し上げたらいかがですか?」
アリアが樹の背中を押してくれた。
「芽衣、俺も一度死んだんだ。訳あってこの通り生きているがな……」
樹はアリアたちに聞こえないくらいの声で言った。
「今でも後悔してるよ。この力が、この強さがあれば、お前を守ってやれたのにな」
「仕方ないよ。もう。だからさ、樹の力は今、困ってる人に手を差し伸べてよ」
「おう、分かった」
すると芽衣は微笑んだ。
「本当に樹なんだよね。カッコ良くなったね。ずっと伝えたかったんだ。私、樹のこと好きだったよ」
そう言うと芽衣の目にも一筋の涙が流れた。
「俺も、俺も芽衣の事が好きだったよ」
「ありがとう。もし、生まれ変わった先でも手を取り合えたら沢山の恋をしよ」
「おう。もちろんだ。それまで俺はこの国を、世界を、出会った大切な人たちを死ぬ気で守るよ」
「うん、約束だね」
芽衣がそう言った瞬間、またしても水晶が光った。
やがてその光が落ち着くと芽衣の姿は見えなくなっていた。
「芽衣、約束は必ず果たすよ……」
樹はその拳を固く握った。
「お話、出来ました?」
「う、うん。ありがとう。アリアのおかけだ」
「いえ、私は何も」
「マスター、カッコ良かったぜ」
アリアと美人精霊が声を掛けてくれた。
「帰ろう」
「はい」
『転移』
樹は転移魔法を起動し、王都の屋敷へと帰還した。
芽衣との大切な約束と今後の目標を胸にし、樹たちは悪を切る。
13
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる