「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

文字の大きさ
318 / 354
17章 龍球王国 前編

318、空き巣

しおりを挟む
 グレゴールの説得に失敗したドラグロスは魔導戦艦に戻って来た。
 王国内は目立ちすぎるし、グルガンが如何に優秀だとてたった1日でドラゴンが街を闊歩出来るほどの意識改革を行えるわけがない。
 グレゴールは身長2m越えの大男だが、見た目は人間と大差ないので街を出歩いていても特に問題ないのに腹が立って来た。

(野郎が街でエンジョイしてる最中はどうしても待つことになる。今日みたく遅い時間に帰ってこられたら面倒だぜ。とっとと仲間に引き入れてデザイアの野郎に殴り込みを掛けてぇところなのによ……)

 今のところ遅々として進まず。殴り込みに関してはグレゴールに諭されてしまい、ドラグロス自身も厳しいと思い始めている。
 しかしグレゴール以上の戦力は見込めないので、何としてでもグレゴールを仲間に引き入れなければならない。

(部下の魔王どもがもっと強けりゃ役に立つんだが……そういうわけにもいかねぇよなぁ……)

 異世界の魔王たちの実力はドラグロスからしてみれば横這いである。ぞれぞれが特異な能力や腕力を持っていても魔神からしてみれば大した力ではない。全員が魔神の領域に足を一歩でも踏み入れていないというのがもどかしい。頭一つ抜きん出ていたとしても有象無象の1つでしかなく、デザイアの前では戦力になりようがない。

「……いや、野郎の前じゃ俺もそう変わらねぇか?」

 ドラグロスは珍しく後ろ向きな気持ちになる。デザイアにとって魔神は自分を着飾るおしゃれアイテムでしかないというグレゴールの例え話。
 言い得て妙だと思えた。
 魔神は各世界にいる最高レアキャラであり、コレクションしているだけに過ぎないのだ。魔神たちに各世界の支配するように命令を下している様は、さながらシミュレーションゲームを遊んでいるようにも感じる。裏切られたところで全てをひっくり返せる力があるからこそ好きに動けと放置している。

 全世界最強の竜の称号『竜神帝』を手に入れて尚、デザイアの足下にも及ばない。まさに化け物中の化け物。
 自分の賭けは本当に正しかったのか今になって疑問が浮かんでくる。

「首尾はどうだい? ドラグロスくん」

 少々ナイーブになったドラグロスに話しかけたのはルイベリア。魔導戦艦の出入り口でドラグロスを待っていたかのように立っていた。

「んだよ。お前居たのかよ。てっきり全員国の中に居るのかと……」
「別に興味なかったからね。入国が許されて嬉しいのは、僕はやっぱ機界大国かなぁ」
「あ? キカイ? 知らねぇよそんなの。他にも何人か乗ってんのか?」
「うん。操舵士のオリーと機関士が何人か。あとオジャくんかな?」
「ってことは主要戦闘員は全員降りてんのか? さっきの言葉を撤回するようで何だが、無用心じゃねぇか? 砲塔1つ積んでねぇってのに……」
「いやいや、そんなことないよぉ? オジャくんは戦えるし、君が帰って来てくれたから戦力は十分。正直、今帰って来てくれて感謝してるよ」
「あ? なんで……?」

 ドラグロスは視線を感じ、肩越しに背後を見る。気付けばそこら中に気配を感じた。イラついていたのと考え事をしていたのが邪魔をして小動物程度の気配に気付くのが遅れた。

「……なるほど。すっかり囲まれてるなぁ。……んで? こういう時にこそ必要なオジャノーイは今どこに居る?」
「ヴォジャノーイでおじゃるぅ……」

 消え入りそうな声が聞こえて来た。出入り口の影に隠れてこそっと顔を出しているのを見つけ、ドラグロスは力強く手招きする。渋々といった感じで出て来たヴォジャノーイを抱き寄せるように肩を組んだ。

「何を怯えてやがんだコラっ。この俺がそんなに怖ぇかよ?」
「い、いえ。決してそのような……っ」
「あぁっ?! この俺が怖くねぇってかっ?」
「ひぃぃ……っ!?」

 ドラグロスのいびりにどうして良いか分からずヴォジャノーイは小さな悲鳴を上げる。

「ちょっとやめなよドラグロスくん。オジャくんをいじめるのはさぁ」
「へっ、こいつはいじめじゃねぇよ。俺への忠誠心を見てんのさ。デザイアを裏切った以上、この俺様に従うのが筋ってもんだ。そうだろ? オジャノーイ?」
「ヴォジャノーイでおじゃ……」
「そうだよなっ? オジャノーイっ?」
「はいぃ……」

 だんだん語気が強くなっていくドラグロスを前にただ肯定するしかなくなったヴォジャノーイ。萎縮するヴォジャノーイをさらに引き寄せて耳元でドラグロスは歯茎を見せる。

「この船を取り囲んだ連中をお前が何とかしろ。分かっていると思うが、何人かは生け捕りにしろよ? 理解したか?」
「かか、畏まりましたドラグロス様っ!」

 シャキッと背筋を伸ばしたヴォジャノーイの肩を小突きながらドラグロスはルイベリアの元に歩いていく。

「……君はやらないの?」
「必要ねぇよ。つーか、俺がぶっ飛ばしたら死んじまうかもしれねぇ。それほど弱い気配だ。その点、あの野郎の能力は変幻自在で使い勝手が良い。全員捕まえることも出来るだろうが、裏で糸を引いてる野郎に伝えねぇとなぁ。この船を襲うことの愚かさって奴をよ」

 ドラグロスの話が終わったと同時に周辺が乾燥して来ていることに気付いた。見ればヴォジャノーイの頭上にサッカーボールさ3つ分のそれなりに大きな水の玉が浮いている。

「わざわざこちらを狙うとは馬鹿な奴らよ。おかげで朕が出張る羽目になったでおじゃる。血祭りにしてやりたいところでおじゃるが、欲しいのは命ではなく情報。殺したりせぬから朕にその身を差し出すが良いっ」

 ──ギュパァンッ

 水の玉は一瞬凝縮した後、花火が弾けるように四方に飛び散り、雨のように地上へと降り注ぐ。
 その直後、「うわっ!?」や「おわっ!?」といった驚愕の声が聞こえ、水の薄い膜に包まれた人間が10数人ふわっと浮き上がった。水滴程度の水が人間を包み込んで閉じ込めてしまう。

 戦うことも逃げることも出来ずにヴォジャノーイの『水牢』に閉じ込められた人間たちはガチガチに鎧と刀を装備しているようだ。
 命の取り合いでもしそうな勢いで取り囲んでいた連中の狙いは間違いなく魔導戦艦の乗組員。人質にしようとしたのか、それとも皆殺しにしようとしたのか、はたまた山賊などのならずものが強盗や営利誘拐を画策したか。

 いずれにしても戦闘能力の高い有名人が船を降り、全員国内にいることで手薄と捉えたのか、船を襲うことで何らかの利益を得ようとしたのは間違いない。

 ドラグロスの言い付けを守ったヴォジャノーイは何人か水牢に閉じ込めることなくそのまま逃す。シャボン玉のようにふわふわ浮かせた全員を一塊に集め、ドーム状の強力な水牢に昇華させた。薄い膜の水牢ですら突破出来なかったというのに、ドーム状の強力な水牢に変化させては流石の武士たちも座り込んで往生していた。

「……つ、捕まえましたドラグロス様」
「おお。よくやったぞオジャノーイ。それじゃ早速こいつらから情報を引き出すとするか?」

 ドラグロスはチラッとルイベリアを見たが、ルイベリアは首を横に振る。

「僕らが労力を使う必要はないさ。こんな立派な鎧を着込んでるってことはどっかに飼われてる兵隊だと思うから、この国の機関に任せようよ。こういうの何ていうんだっけ? 餅は餅屋って奴?」
「あ? お前この国に入ってないくせにどこに引き渡すとか分かってんのかよ?」
「あれれぇ? もう忘れたの? 僕らはこの外壁の警備隊に攻撃されたんだよ? 今はもうお友達みたいだから引き渡して色々教えてもらっちゃおうかなって」
「国の恥さらし供だぞ? いくら当事者でも結局はぐらかされて情報は貰えねぇだろ。今すぐ吐かせて、その後で引き渡す。いいな?」

 ドラグロスの言葉に諸手を挙げて肯定する。ルイベリアは水牢に近づいて声を張った。

「……さて、それじゃ僕が話そうかな? 五体満足で帰りたかったら、君たちの情報を聞かせてもらおうか。僕が気に入らなかったら怪物たちの餌になるってことで。分かった?」

 武士たちは仲間内で顔を見合わせ、下唇を噛み締めながらゆっくりと頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

風魔法を誤解していませんか? 〜混ぜるな危険!見向きもされない風魔法は、無限の可能性を秘めていました〜

大沢ピヨ氏
ファンタジー
地味で不遇な風魔法──でも、使い方しだいで!? どこにでもいる男子高校生が、意識高い系お嬢様に巻き込まれ、毎日ダンジョン通いで魔法検証&お小遣い稼ぎ! 目指せ収入UP。 検証と実験で、風と火が火花を散らす!? 青春と魔法と通帳残高、ぜんぶ大事。 風魔法、実は“混ぜるな危険…

処理中です...