「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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17章 龍球王国 前編

317、組み分け

 レッドが挨拶回りで忙しくしているかたわら、みんな思い思いの観光を楽しみ、リクゴウ家の屋敷に戻って用意された晩飯にありついていた。

 食べ慣れた家庭料理しか出さない魔導戦艦の食堂とは違って、コース料理のような一品一品豪華な食事が振る舞われ、感動しながら絶品の料理に舌鼓する。

 広い浴場もあると聞き、食事のあとも楽しみがてんこ盛りである。

 快適すぎる旅館といった風なおもてなしに自分たちが一瞬何をしに来たのか分からなくなりそうになったが、思ったよりも時間が掛かったレッドたちの帰還と事の顛末を聞かされて正気に戻る。

 龍球王国の問題の解決とドラグロスのグレゴール勧誘成功が達成目標であり、行動は明日の朝から開始されるようだ。
 すぐに組み分けが開始されたが、そんな時に例の話を聞かされる。

「何っ?! レッドが情報収集っ?!」

 グルガンからの話を聞いたライトたちは困惑を隠せない。

「ならば俺もその情報収集に参加しよう。それなりに実力を伸ばした俺ならレッドと共に行動しても問題ないはずだ」
「いや、そういうわけには行かないんだが……」

 その困惑は一緒に話の輪にいたモミジにも伝わり、不安を感じさせた。その心の機微を読んだグルガンは手を広げて制した。

「案ずるな。レッドには優秀な案内人ナビゲーターがついている。例えっ、もしもっ、絶望的な方向音痴であったとしてもっ、今は常人並と言って良い」

 ライトたちの目はオディウムに向かう。口は悪いが能力の高いエデンズガーデン産の魔神。

「な、何だよ。俺に全部押し付けるつもりかっ?」
「そうだグルガン。こいつは信用ならない。やはり俺もついていくのが……」
「あ? 信用ならないだぁっ? ふざけんじゃねぇよっ! 俺はお前らと違って自由がないんだぞっ?! こき使われる俺の身にもなれってんだっ!」

 我慢していたものが吹き出るようにライトにぶつけるが、レッドが鎖を引っ張ってどうどうと宥める。

「今回の作戦は目立っちゃダメなんです。俺はみんなと違って有名じゃないし、平凡過ぎてあんまり目立たない。この大陸出身じゃない俺たちの中でもライトさんはイケメン過ぎてすれ違っただけでも顔を覚えられるでしょうし、ディロンさんは単純に大きいから目立ちます。今回に限っては俺とモミジさんだけで動くのが一番なんですよ」

 レッドの言葉に皆が納得する。グルガンが懇切丁寧に話しても頷くことは容易ではなかっただろうが、チームリーダーであるレッドの言葉とあれば話は別だ。これ以上のわがままは無粋というもの。

「また一緒に行動出来る機会かと思ったんですけど、私は無理ですね。七元徳イノセントだし」
「レッドの手腕をこの目で見たかったところだが、剣聖であるこの身は対象外ということか。……残念だが、出来ることに専念するとしよう」
「──共に行動してみたかったです。あなたと一緒に街を散策したかったですが、全て終わってからの楽しみに取っておきましょう」
「ふんっ! 私は残念でも何でもないですけどねぇ。むしろ、この胡散臭い存在がアリーシャさんから離れてくれるのは助かります。……抜かりなくお願いしますよ? 面倒は御免ですからね」

 ティオ、ブルック、アリーシャ、フィアゼスなど、常人では会話することもおこがましい頂上の方々が口々にレッドに話しかける。レッドは腰低くペコペコしながら対応するが、フィアゼスを除くみんなが尊敬や畏敬の念を持っているのはひと目で分かる。先ほどまでのモミジの不安を一気に吹き飛ばした。

「さすがに四臣創王をも納得させた男だよなぁ。俺もこれで安心してモミジを預けられるってもんだっ」

 アキマサは気安くモミジの頭をポンポンっと撫でるように軽く叩く。モミジはムッと口を結んだが、すぐに満更でもない顔をしながら頬を緩ませる。

「……うん。まぁね」

 今日一日一緒に行動してみて、レッドは緊張しいでいろいろ頼りない面があるとしみじみ思ったが、それを差し置いてこれほどの人物と行動を共に出来るとあれば学べることは多いかもしれない。大変かもしれないが、なんだかんだワクワクしている自分がいるのに気付いた。
 アキマサはそんなモミジの雰囲気を感じ取り、ニヤリと笑いながらレッドに目を向ける。

「いいね。でも俺の所感だが、レッドはそこまで裏に精通した感じじゃない。情報の収集には少々時間が掛かる可能性がある」
「それは……確かに……」
「そこで俺っちから提案だが、異国人である彼らが表立って動けば声高に内政干渉や間者扱いされて面倒なことになると推測する。というか俺がキジン派閥ならそこから突き崩そうと思うね。でも龍球の武将が異国人に観光案内しているていならある程度のことは許される気がするんだよねぇ……」
「え……マジっ? 師匠あたしに武将を仲間に引き入れろっていうのっ?」
「大まかには、な? 俺的にはモミジがレッドを仲間に引き入れられそうな武将の元へ案内して、レッドが武将を仲間に引き入れるってのが理想的かな?」
「……あたし自身はそこまで顔広くないんですけど?」
「もちろん俺の名を使え。領地ごとの各家の武将を仲間に引き入れれば大抵の場所は出入りが可能になるだろうぜ」

 それは魅力的な提案だった。武将が今の仕事をほっぽり出して仲間に加わるという無茶な選択肢を受け入れるかどうかの問題だが。

「武将たちも今か今かと痺れを切らしていることだろうぜ。それが善にしろ悪にしろ、今すぐ動きたいのは誰でも同じこと。大っぴらに兵を動かせない分、溜まった鬱憤の吐き出す場がない。そんな時にキジン派閥の企みに対応出来るなんて願ったり叶ったりだろう? まさに垂涎すいぜんものだ。そうだろ?」

 そう言われてみたら簡単な気がしてくるが、思い返せばやはり難しいことこの上ない。
 モミジの不安いっぱいの顔にアキマサは顎を触る。

「……よし、それじゃ俺から1つ推薦してやろう。行く先をあらかじめ決めておけば次の行動も簡単になる」
「本当?」
「ああっ。俺のおすすめは『月湧げつゆう』だ」
「ヒビキさんっとこの庭じゃないですか。しかも『月湧げつゆう』といえば……」
「おうよ。お前もよく知ってんだろ? あの人なら面白いことになりそうだぜ?」

 モミジはニヤつくアキマサの顔からレッドへと視線を移す。
 みんなに囲まれたレッドの楽しそうな顔を見ながらモミジは肩を竦めた。
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