「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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18章 龍球王国 後編

343、問題発生

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 マシラ家の屋敷の前で行われていたのは喧嘩に近い言い合いだった。

「……良いから、サコンを出せ。……拙者は忙しい。これ以上邪魔をするなら拙者も容赦はせんぞ?」

 男は複数人に囲まれながらも凄む。
 長い髪を後ろで束ね、前髪は中央で分けておでこを出している。端正な顔立ちで、女性受けは良さそうだ。両目を閉じたような糸目で前が見えているのかも怪しいが、本人曰くちゃんと見えているし、実は戦闘時などの絶対必要な時には切れ長の目が開いているのを確認出来る。
 道着に袴の出立で腰に脇差を差し、隠し刀を杖のように持ちながら仁王立ちでゴロツキ相手に全く動じない。
 彼はモリシゲ=エダギ。ビャクガ家に仕える由緒正しいエダギ家の当主。

「あのね、勘弁してくださいよモリシゲ様。忙しいのはお互い様でしょう。俺らにも仕事があるんですから。わがまま言ってないで約束を取り付けてから来てくださいよ。ねっ? 何なら俺が責任を持ってサコン様にお知らせいたしますよ? 出来る限りすぐ会えるよう取り計らいます。そうですね……最短で明日なんて如何です?」
「……おぬしたちの魂胆は分かっている。……拙者の目を掻い潜り、よからぬことをしようとしていることぐらいな。……今を逃せば証拠は泡となろう。……それが何かまでは預かり知らぬが、ビャクガ家をも欺こうとする姿勢はいただけぬ。……潔く神妙にいたせっ」
「ふーっ……何回この話を繰り返すおつもりか分かりませんけどね? 全部言い掛かりじゃないですか。しかもこちらは丁寧に受け答えして譲歩までしてるのに、威圧的で高圧的な脅しかける態度。こっちだって黙っていられませんよ?」
かせっ」

 モリシゲは柄部分を握りしめ、鯉口を切る。戦闘態勢に入ったモリシゲを見てサコンの部下たちも色めき立つ。

「やる気かよっ?! 人数考えろやっ!」
「全員に勝てるわけないだろっ!!」
「嬲り殺しにしてやるぜっ!」

 口々に戦闘意欲を吐き散らかし武器を抜く。
 一触即発の空気をレッドたちは木陰から見守る。

「え、ちょっ……ヤバイんじゃないですかっ?」
「流石に助太刀した方が……」
「まぁ慌てるな。もう少し様子を見よう」

 ナガヨシに制され、レッドとモミジは焦燥感を感じながらも見に回る。
 息巻くサコンの部下たちにモリシゲはギラッと目を光らせる。

「……ほざいたな下郎共。……手加減はなしだ。掛かってこいっ!」

 ザッと足を開いて構える。異様なほどの重圧がモリシゲの体から湧き出るように押し寄せ、対峙する9人の部下たちは気圧される。圧倒的有利な真後ろにいる部下も手を出すことを躊躇ためらわせる凄まじい殺気。
 それを見てナガヨシは目を細めた。

「……もう勝敗は決している……」

 誰の目にも明らかだ。たとえ剣術を知らぬ一般人であろうと人数の優位性など存在しないことに気付く。
 ナガヨシのポツリと呟いた言葉に一瞬レッドとモミジはモリシゲから目を離す。

 ──スパァンッ

 その一瞬で響き渡る音にハッとして目を見張る。干した敷布団を鋭く引っ叩いたような音と共に大の大人が2人空中に浮いた。いつの間にか抜かれた太刀が光の軌跡を描きながら揺らめく。
 一息に2人も吹き飛ばされる様子を見れば、ただ呆然と眺める者と反撃に出る者の2種に分かれる。
 3人は呆けたが、4人はすぐさま反撃に出た。
 1人は最短距離で刃物を突き、2人は振り被り、1人は背後から羽交い締めにしようと飛び付く。

 ──ガツンッ

 しかしモリシゲは瞬時に4人の頭を鞘で殴り付け、次の瞬間には4人それぞれが背後に倒れた。
 かすり傷1つ付いていないモリシゲに驚愕した残りの3人は武器を捨てて逃げ出す。

「──おっと待ちなっ!」

 ナガヨシは木陰から飛び出し、刀を抜いて3人の前に立ち塞がった。同時にレッドとモミジも並び立ち、部下たちは逃げ場を失う。
 モリシゲは急な助っ人に不思議そうな顔を見せた。そんなモリシゲにナガヨシは不敵な笑みで1つ頷き、サコンの部下たちをじっと睨み付けた。

「……お前たちにはまだやってもらわねばならんことがある。痛い目に遭いたくなくばサコンを呼び出せ」



  脅しつけられた部下たちは急ぎ主人の元へと駆け出す。屋敷の最奥にある部屋の襖の前で跪き、大声でサコンを呼びつけた。

「……っせーな。会議中だっつってんだろうがっ」

 サコンが顔を覗かせるとすぐさま頭を下げて陳謝する。

「会議のお邪魔をしてしまい大変申し訳ございませんっ! しかし火急の用にてご容赦いただきたくっ!」
「分かった分かった。で、何だ?」
「エダギ様とツキグマ様が殿にお目通りを願い出ておりますっ! すぐにご支度の上、玄関までお越しくださいませっ!」
「あっ? 何で俺が出て行かなきゃなんねーんだよ。テメーらで何とかしろよっ! 何のために高い金出して雇っていると思ってんだっ!」
「はい……我々としても手を尽くしたのですが、追いつめられてしまって……特にエダギ様は話が通じず、6人が瞬く間に倒されてしまい……」
「チッ! 使えねぇっ! ……ってか、何だってツキグマのおっさんが出てくんだよっ!?」
「分かりませんが、急に木陰から姿を現したんです。結託している風にも見えたので最初から殿を囲い込むつもりだったのかもしれません」

 その瞬間にサコンの目が泳ぐ。トガノジョウを匿っていることがバレたのではないかと焦り始めた。
 出来得る限りの注意を払って連れて来たのでこの短期間にバレることは無いと高を括っていたが、どうやら想定が甘かったようだ。
 モリシゲのみなら勘が働いたのだろうとしても、ナガヨシが出てくるのは想定外である。
 キジン家当主ヨリマロへの足掛かりの確保を優先したがために、思い描いていた『マシラ家の復興』という悲願達成までの道が閉ざされてしまう。

「……何か問題か?」

 一部始終を見ていたトガノジョウが話に入ってくる。内心(お前が問題なんだよっ!)と責任転嫁しながらも、心の機微を読まれまいとへらへらしながら振り向いた。

「あっいや、ちょっと面倒な連中が来てるだけなのでお気になさらず。こいつらじゃ話にならないんで俺が行って話を付けてきます」

 そういうと部下を押しのけてそそくさと部屋を出て行く。トガノジョウは開けっ放しの襖をじっと見ながら「ふむ……」と意味ありげに考える素振りを見せた。
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