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2章
15、元凶
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少女との邂逅。
出会うなり戦闘を開始した彼女はレッドとミルレースの前で土下座をしていた。
「もうしわげねぇ!!女神様の従者とはいざ知らず、とんだご無礼を!!」
少女は訛った言葉で謝罪し、地面に額を擦り付けた。
「まぁまぁ、頭を上げてくれ。怪我一つ無いんだからさ」
「そうは言っでも……!!」
『レッドの言う通りですよ。頭をお上げなさい、謝罪は十分です。今私たちに必要なのは話し合いなのですから』
ミルレースに言われてようやく頭を上げる少女。その顔は見た目通り幼く、悲しげな表情からはあどけなさを感じた。
褐色の肌、黒い髪に黒い瞳。見た目からは鎧や斧を装備しているなど到底想像が付かない。麦わら帽子につなぎを着て、畜産用の大きなフォークを持っている牧歌的なイメージを抱かせる。
「えーっと……とりあえず自己紹介から始めるか。俺の名前はレッド=カーマイン。職業は剣士でギルドに所属している冒険者だ」
「お、おらは何もんでもねぇ。ただのゴーレムだで」
「ゴーレム?ゴーレムって名前なのか?」
「いや違ぇです。ゴーレムは種族で名前は無ぇです」
人間ではなかった。そう思えばこのくらいの歳であの身体能力はそれなりに納得が行くというもの。
レッドはチラリとミルレースを見る。ゴーレムを自称する女の子は女神ミルレースのことを知っている。しかしミルレースは彼女のことを知らないようだ。
「……じゃあゴーレム。君に聞きたいことがあるんだが、外に出てきて畑を荒らしてるのは君で間違いないかな?」
ゴーレムは一瞬目を泳がせたが、すぐに真っ直ぐレッドを見つめて頷いた。
「野菜のことか?そうだ。おらが盗った」
しらを切ることもせずに素直に答える。ミルレースはしゃがんで目線をゴーレムの高さに合わせる。
『あなたはお食事が出来るのですか?』
「いや、おらは食わねぇ。あれは餌でさぁ」
『餌?何か飼っているのですか?』
「へぇ。この奥で黒い小さな奴をたくさん」
ミルレースはレッドを見上げるように振り返る。レッドは口をへの字に曲げて一瞬考えた後、「見せてくれ」とゴーレムに頼んだ。ゴーレムは二つ返事で了解し、レッドの手を引っ張って奥へと誘う。
「ここだで」
ゴーレムが嬉しそうに指差したのは一段低い窪みから顔を出すブラックサラマンダーの幼体だった。
『レッド。これって……』
ミルレースの視線にレッドは小さく何度も頷く。
「ブラックサラマンダーの群れはここで増産されていたのか……あんな数は俺も見たことがなかったけど、自然淘汰されることなく生き延びたからだったのか……」
元気にモリモリ野菜を食べている魔獣の子供たちを唖然とした顔で見ている。ギルド総出の危機はまだ回避されていない。ここで静かに人知れず補充されていた。
「ちなみに……なんで育ててたんだ?」
「ん?暇つぶしだで」
ゴーレムはニカッと朗らかな笑みを見せた。
*
「……近い……感じる」
町の外で木の陰に隠れて様子を見ていた仮面を付けた黒き人影はしゃがれ声で呟いた。前の街で聞いた限りではここがレッドの滞在する町。
結局ベルク遺跡には女神の欠片は残されていなかった。十中八九レッドが持ち去ったものと思われる。若しくは最近噂になっているゴールデンビートルか。
ゴールデンビートルは現在最も有名で、噂の的になっていることもあり、わざわざ探さずとも簡単に捕まえられると踏んだ執事は、単独で動き回り見つけにくいだろうレッドにターゲットを絞って動くことにした。
それが功を奏した。
「女神は……一部……復活した……ようだな」
ダンベルクを屠り、女神の欠片を奪った男は最悪なことに女神を目覚めさせたようだ。魔族が懸命に封印した女神を目覚めさせるとは度し難い悪人だ。
しかしこれもまた良い方向に転がった。バトラーは女神の気配を読み取ることが出来る。気配を読み取れる範囲はそれ程広くないが、レッドがどこに逃げようと隠れようとも見つけ出して襲撃が可能となった。
「悩ましいことだ……私が直接叩ければ……一瞬で終わるものを……」
バサッと漆黒のローブを翻して町に背を向けた。
気配は森の奥にある。気配の元を目指して進み始めた。
*
「度々もうしわげねぇ!!」
ゴーレムはガツンッと額を地面に叩きつけた。自分の暇つぶしで起こしてしまった災害に対して、また女神ミルレースとその従者に対しての反省が2度の土下座を選ばせた。
地面が凹むほどの勢いには流石のレッドも驚き戸惑う。
「うわっ!大丈夫か!?」
急いでゴーレムの頭を持ち上げるが、汚れが付いている程度で傷は一つも付いていない。普通の生き物ではないためかなり頑強である。
ホッとしたレッドの背後でミルレースは首を捻る。
『……あなたを作った方はどなたでしょうか?』
ゴーレムはその質問に答えるべきか逡巡する。自分がやらかしてしまったことが回り回って創造主のせいにならないかと心配になったからだ。
口を開きかけては閉じて、口を開きかけては閉じて。パクパクと一定間隔で口を開閉している様はまるで死にかけの魚だ。
それでも急かさず待ってくれるミルレースとレッドに安心感を覚え、意を決して口に出した。
「……お、恐れ多くもおらをお作りくださったのは……ゆ、勇者様だで」
『やはりそうだったのですね!あなたが私を崇めたところからもしかしてと思っていました!あぁ良かった……首の皮一枚で繋がったような気分です!』
「……勇者……」
ミルレースもゴーレムも、勇者がまるでこの世界を救う救世主や、それに類する凄い者かのように称えているが、レッドの中で勇者とは単なる称号だ。
レッドの知る限り勇者の称号を持つのは2人。
1人はダンジョンがまだ認識されていなかった頃、ダンジョンから解き放たれた強い魔獣が人類に猛威を振るった時に、国軍を率いて戦った将軍に与えられた。
2人目は単独でドラゴンを討伐した最強の戦士。ドラゴンスレイヤーの称号と共に与えられたそうだ。
どちらも100年以上昔にこの世を去っている。
「一体いつからここに居るんだ?こういった暇つぶしが長いこと行われていたなら、他にも同様の事例があるかもしれないぞ?」
「それは問題ねぇ。おらがここに居たのは3年ほどの間だで。赤ちゃんが大人になるのを見送ったのは5、6回だけだし、こいつらはまだ赤ちゃんだ。このままほっといたら共食いを始めて勝手に減るで」
「いや、結構見送ってるなぁ……」
『そんなことよりも勇者さまは何処にいるのでしょうか?早くお会いしたいのですが』
ワクワクするミルレース。その問いにいち早く答えたのはゴーレムの曇った顔だった。
「勇者様は……3年前に亡くなっただ。おらに女神様を託して……」
『えぇ……そんな……』
ミルレースは大きなショックを受けた。信じていた勇者は既にこの世には亡く、世界に爪痕を残すこともなく終わっていたのだった。
「来てくれ。お二方に見で欲しいもんがある」
そう言うと踵を返して洞窟の奥に歩いていく。逆らうことなく付いて行くと、そこには女性とも男性とも見える胸像が置かれていた。ずいぶん不格好だが、一生懸命に作ったのが荒い削り方の中に表れている。
『……これは?』
ミルレースはそれなりにこの胸像の意味を理解していた。これが慰霊のための石像であろうことは聞かずとも分かった。それでも聞きたかったのは事実を事実とした飲み込みたかったのだ。
「勇者様のお墓だで」
「へぇ……この胸像が墓石代わりか」
「おらが彫っただ」
誇らしげなゴーレムを微笑ましく見るレッド。ミルレースは終始悲しげに胸像を見ている。この下に勇者が眠っているのかと思うと居た堪れなくなるのも分かるというもの。
そもそも何故勇者は死んだのか。それを聞こうと口を開きかけた時、ゴーレムが先に言葉を発した。
「レッド樣。あなたを見込んで2つお頼みしたいことがあるだ。女神様の復活はもちろんのこと、おらをこの墓の前に葬って欲しい」
「……は?」
急な申し出に頭が働かない。すると突然ゴーレムはガチャリと音を立てて鎧の胸当てを開ける。女性が何も気にせず胸を晒そうとするのにレッドは慌てて顔を背けた。ゴーレムの「どうしただ?」の声に焦って吃ってしまう。
「い、いや……だだ、だって……」
レッドは観念してチラッとゴーレムに目を向けた。未成熟な胸があるはずの場所には空洞があり、心臓の部分には綺麗なクリスタルの欠片が浮いていた。
「……なん……」
一体何なのか。ただの人間でないことは分かっていたが、まさか土偶のように中身が空だとは思わない。肌の部分と鎧の部分が完全に結合し、観音開きのように開くなどとは思いも寄らない。
「このクリスタルを1つにすることで女神様は復活するだ。おらは単なる守護者。レッド樣、おらの……勇者様の最期の願いを聞いてけろ」
ゴーレムを作り、誰にも取られないように隠した欠片。ベルク遺跡の最下層に埋められていた欠片とは違って少し大きく見える。
ゴーレムに言われずともミルレース復活には力を貸しているが、一つだけ間違っていることがある。
「お、俺は世界最強の冒険者チーム”ビフレスト”にミルレースの復活をお願いする立場にある。俺も言ってみたら仲介役に過ぎないんだ……だから……」
『レッド』
ミルレースの声に反応してレッドは顔を上げた。そこには真っ直ぐ見つめるゴーレムの澄み切った目がレッドの答えを待っている。口上などはどうでも良いのだ。聞きたいのはイエスかノーか。
「……分かった。乗り掛かった船だ。俺の出来ることを精一杯やるよ」
「うぅ……かたじけねぇ。ありがとうございます」
ゴーレムは頭を下げた。
「……で?どうしたら良いんだ?」
「ああ、この欠片を取ってもらうだ。おらじゃ取ることは出来ねぇから」
「そうなのか?何かこう……難しい取り方とかそういう感じか?」
「違うで。これを取っちまったらおらは機能を停止するんだで。だから自分じゃ取れねんだ」
レッドは目をパチクリさせた。
「……何だって?それじゃ葬るってのは……」
「そうだ。これを取ることでおらはようやく勇者様のもとに行ける」
出会うなり戦闘を開始した彼女はレッドとミルレースの前で土下座をしていた。
「もうしわげねぇ!!女神様の従者とはいざ知らず、とんだご無礼を!!」
少女は訛った言葉で謝罪し、地面に額を擦り付けた。
「まぁまぁ、頭を上げてくれ。怪我一つ無いんだからさ」
「そうは言っでも……!!」
『レッドの言う通りですよ。頭をお上げなさい、謝罪は十分です。今私たちに必要なのは話し合いなのですから』
ミルレースに言われてようやく頭を上げる少女。その顔は見た目通り幼く、悲しげな表情からはあどけなさを感じた。
褐色の肌、黒い髪に黒い瞳。見た目からは鎧や斧を装備しているなど到底想像が付かない。麦わら帽子につなぎを着て、畜産用の大きなフォークを持っている牧歌的なイメージを抱かせる。
「えーっと……とりあえず自己紹介から始めるか。俺の名前はレッド=カーマイン。職業は剣士でギルドに所属している冒険者だ」
「お、おらは何もんでもねぇ。ただのゴーレムだで」
「ゴーレム?ゴーレムって名前なのか?」
「いや違ぇです。ゴーレムは種族で名前は無ぇです」
人間ではなかった。そう思えばこのくらいの歳であの身体能力はそれなりに納得が行くというもの。
レッドはチラリとミルレースを見る。ゴーレムを自称する女の子は女神ミルレースのことを知っている。しかしミルレースは彼女のことを知らないようだ。
「……じゃあゴーレム。君に聞きたいことがあるんだが、外に出てきて畑を荒らしてるのは君で間違いないかな?」
ゴーレムは一瞬目を泳がせたが、すぐに真っ直ぐレッドを見つめて頷いた。
「野菜のことか?そうだ。おらが盗った」
しらを切ることもせずに素直に答える。ミルレースはしゃがんで目線をゴーレムの高さに合わせる。
『あなたはお食事が出来るのですか?』
「いや、おらは食わねぇ。あれは餌でさぁ」
『餌?何か飼っているのですか?』
「へぇ。この奥で黒い小さな奴をたくさん」
ミルレースはレッドを見上げるように振り返る。レッドは口をへの字に曲げて一瞬考えた後、「見せてくれ」とゴーレムに頼んだ。ゴーレムは二つ返事で了解し、レッドの手を引っ張って奥へと誘う。
「ここだで」
ゴーレムが嬉しそうに指差したのは一段低い窪みから顔を出すブラックサラマンダーの幼体だった。
『レッド。これって……』
ミルレースの視線にレッドは小さく何度も頷く。
「ブラックサラマンダーの群れはここで増産されていたのか……あんな数は俺も見たことがなかったけど、自然淘汰されることなく生き延びたからだったのか……」
元気にモリモリ野菜を食べている魔獣の子供たちを唖然とした顔で見ている。ギルド総出の危機はまだ回避されていない。ここで静かに人知れず補充されていた。
「ちなみに……なんで育ててたんだ?」
「ん?暇つぶしだで」
ゴーレムはニカッと朗らかな笑みを見せた。
*
「……近い……感じる」
町の外で木の陰に隠れて様子を見ていた仮面を付けた黒き人影はしゃがれ声で呟いた。前の街で聞いた限りではここがレッドの滞在する町。
結局ベルク遺跡には女神の欠片は残されていなかった。十中八九レッドが持ち去ったものと思われる。若しくは最近噂になっているゴールデンビートルか。
ゴールデンビートルは現在最も有名で、噂の的になっていることもあり、わざわざ探さずとも簡単に捕まえられると踏んだ執事は、単独で動き回り見つけにくいだろうレッドにターゲットを絞って動くことにした。
それが功を奏した。
「女神は……一部……復活した……ようだな」
ダンベルクを屠り、女神の欠片を奪った男は最悪なことに女神を目覚めさせたようだ。魔族が懸命に封印した女神を目覚めさせるとは度し難い悪人だ。
しかしこれもまた良い方向に転がった。バトラーは女神の気配を読み取ることが出来る。気配を読み取れる範囲はそれ程広くないが、レッドがどこに逃げようと隠れようとも見つけ出して襲撃が可能となった。
「悩ましいことだ……私が直接叩ければ……一瞬で終わるものを……」
バサッと漆黒のローブを翻して町に背を向けた。
気配は森の奥にある。気配の元を目指して進み始めた。
*
「度々もうしわげねぇ!!」
ゴーレムはガツンッと額を地面に叩きつけた。自分の暇つぶしで起こしてしまった災害に対して、また女神ミルレースとその従者に対しての反省が2度の土下座を選ばせた。
地面が凹むほどの勢いには流石のレッドも驚き戸惑う。
「うわっ!大丈夫か!?」
急いでゴーレムの頭を持ち上げるが、汚れが付いている程度で傷は一つも付いていない。普通の生き物ではないためかなり頑強である。
ホッとしたレッドの背後でミルレースは首を捻る。
『……あなたを作った方はどなたでしょうか?』
ゴーレムはその質問に答えるべきか逡巡する。自分がやらかしてしまったことが回り回って創造主のせいにならないかと心配になったからだ。
口を開きかけては閉じて、口を開きかけては閉じて。パクパクと一定間隔で口を開閉している様はまるで死にかけの魚だ。
それでも急かさず待ってくれるミルレースとレッドに安心感を覚え、意を決して口に出した。
「……お、恐れ多くもおらをお作りくださったのは……ゆ、勇者様だで」
『やはりそうだったのですね!あなたが私を崇めたところからもしかしてと思っていました!あぁ良かった……首の皮一枚で繋がったような気分です!』
「……勇者……」
ミルレースもゴーレムも、勇者がまるでこの世界を救う救世主や、それに類する凄い者かのように称えているが、レッドの中で勇者とは単なる称号だ。
レッドの知る限り勇者の称号を持つのは2人。
1人はダンジョンがまだ認識されていなかった頃、ダンジョンから解き放たれた強い魔獣が人類に猛威を振るった時に、国軍を率いて戦った将軍に与えられた。
2人目は単独でドラゴンを討伐した最強の戦士。ドラゴンスレイヤーの称号と共に与えられたそうだ。
どちらも100年以上昔にこの世を去っている。
「一体いつからここに居るんだ?こういった暇つぶしが長いこと行われていたなら、他にも同様の事例があるかもしれないぞ?」
「それは問題ねぇ。おらがここに居たのは3年ほどの間だで。赤ちゃんが大人になるのを見送ったのは5、6回だけだし、こいつらはまだ赤ちゃんだ。このままほっといたら共食いを始めて勝手に減るで」
「いや、結構見送ってるなぁ……」
『そんなことよりも勇者さまは何処にいるのでしょうか?早くお会いしたいのですが』
ワクワクするミルレース。その問いにいち早く答えたのはゴーレムの曇った顔だった。
「勇者様は……3年前に亡くなっただ。おらに女神様を託して……」
『えぇ……そんな……』
ミルレースは大きなショックを受けた。信じていた勇者は既にこの世には亡く、世界に爪痕を残すこともなく終わっていたのだった。
「来てくれ。お二方に見で欲しいもんがある」
そう言うと踵を返して洞窟の奥に歩いていく。逆らうことなく付いて行くと、そこには女性とも男性とも見える胸像が置かれていた。ずいぶん不格好だが、一生懸命に作ったのが荒い削り方の中に表れている。
『……これは?』
ミルレースはそれなりにこの胸像の意味を理解していた。これが慰霊のための石像であろうことは聞かずとも分かった。それでも聞きたかったのは事実を事実とした飲み込みたかったのだ。
「勇者様のお墓だで」
「へぇ……この胸像が墓石代わりか」
「おらが彫っただ」
誇らしげなゴーレムを微笑ましく見るレッド。ミルレースは終始悲しげに胸像を見ている。この下に勇者が眠っているのかと思うと居た堪れなくなるのも分かるというもの。
そもそも何故勇者は死んだのか。それを聞こうと口を開きかけた時、ゴーレムが先に言葉を発した。
「レッド樣。あなたを見込んで2つお頼みしたいことがあるだ。女神様の復活はもちろんのこと、おらをこの墓の前に葬って欲しい」
「……は?」
急な申し出に頭が働かない。すると突然ゴーレムはガチャリと音を立てて鎧の胸当てを開ける。女性が何も気にせず胸を晒そうとするのにレッドは慌てて顔を背けた。ゴーレムの「どうしただ?」の声に焦って吃ってしまう。
「い、いや……だだ、だって……」
レッドは観念してチラッとゴーレムに目を向けた。未成熟な胸があるはずの場所には空洞があり、心臓の部分には綺麗なクリスタルの欠片が浮いていた。
「……なん……」
一体何なのか。ただの人間でないことは分かっていたが、まさか土偶のように中身が空だとは思わない。肌の部分と鎧の部分が完全に結合し、観音開きのように開くなどとは思いも寄らない。
「このクリスタルを1つにすることで女神様は復活するだ。おらは単なる守護者。レッド樣、おらの……勇者様の最期の願いを聞いてけろ」
ゴーレムを作り、誰にも取られないように隠した欠片。ベルク遺跡の最下層に埋められていた欠片とは違って少し大きく見える。
ゴーレムに言われずともミルレース復活には力を貸しているが、一つだけ間違っていることがある。
「お、俺は世界最強の冒険者チーム”ビフレスト”にミルレースの復活をお願いする立場にある。俺も言ってみたら仲介役に過ぎないんだ……だから……」
『レッド』
ミルレースの声に反応してレッドは顔を上げた。そこには真っ直ぐ見つめるゴーレムの澄み切った目がレッドの答えを待っている。口上などはどうでも良いのだ。聞きたいのはイエスかノーか。
「……分かった。乗り掛かった船だ。俺の出来ることを精一杯やるよ」
「うぅ……かたじけねぇ。ありがとうございます」
ゴーレムは頭を下げた。
「……で?どうしたら良いんだ?」
「ああ、この欠片を取ってもらうだ。おらじゃ取ることは出来ねぇから」
「そうなのか?何かこう……難しい取り方とかそういう感じか?」
「違うで。これを取っちまったらおらは機能を停止するんだで。だから自分じゃ取れねんだ」
レッドは目をパチクリさせた。
「……何だって?それじゃ葬るってのは……」
「そうだ。これを取ることでおらはようやく勇者様のもとに行ける」
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