「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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3章

22、首都防衛戦

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 この日集められた冒険者たちはアヴァンティア国の兵士と共に魔族たちとの戦闘に駆り出された。守り切れば活躍に応じて報奨と名誉が賜われる。

「嘘だろ……何だよあれ……」

 本来防衛戦は初級冒険者でも対応出来る。それというのもダンジョンから追われる程度の、量だけが立派な弱い魔物が攻めてくるのが常識だからだ。
 しかしこと今回に限っては全く別物。今まさに襲撃してくる敵は遠くから見た姿形で既にその辺の雑魚と一線を画す。
 二足歩行の羽付き。体は赤黒く、魔力のせいかぼんやり光を放っている。頭に大きな二本角を生やした怪物。

 悪夢の使者。その名をデーモン。

 中級クラスの冒険者チームが1体を囲んで一方的に攻撃し、何とか倒せるレベル。ベテラン冒険者チームなら一度に3体と戦える。勝てるかはその時の運次第。
 ダンジョンの下層に住まう魔族が空を覆うほどやって来た。冒険者たちの間で不安がよぎる。

「これ……勝てるのか?」

 今すぐにでも投げ出したい気持ちが湧いてくる。けど、そんな風に思いながらも引かないのは、ここで一緒に戦ってくれる有名な冒険者チームのお陰だろう。
 ビフレストを筆頭に自他ともに認める実力者チームが、ここアヴァンティアに集結している。本当なら無理だろう戦いも『もしかしたら』と思わせる。
 そんな期待を背負ってビフレストは先陣を切る。

「怯むな!僕たちが戦えなくなったら、それこそこの街の最後だ!!諦めずに食らいつけ!!」

 ニールの激励に冒険者は奮起する。王国の兵士長もその激励に負けず劣らず声を張り上げた。

「王国の兵共つわものども!!冒険者に遅れを取るな!!」

 地鳴りがするほどの鬨の声が上がる。

 歴史上最大規模の防衛戦が幕を開けた。



「やり過ぎるなよ。俺たちは飽くまで陽動なんだからな」

 魔族を指揮するアークデーモンは部下に注意する。支配者であるハウザーの元にレッド=カーマインをおびき出さなければならないのだ。
 人間に無視出来ない損害を与え、魔族との決戦を余儀なくさせる。
 でも全滅させることは出来ない。ハウザーより上の存在がそれを許していない。であるなら慎重且つ大胆な破壊をしなければならないのだ。

 能力的に同じ水準だったなら犠牲を覚悟の上で動く必要があるものの、人間はそれほど強くないので今回の作戦は余裕でこなせるとアークデーモンは甘く見ている。
 山登り中に「足元しっかり見ろよ」というくらいの気軽さが言葉の端々に感じられた。

 アークデーモンの見通しが甘いのは人間との戦闘経験が浅いからだ。相手は曲がりなりにも知的生物。魔族の思いも寄らない攻撃方法を開発していることは想像に難くない。
 カタログスペックだけで判断すると痛い目を見るのはどの界隈でも変わらない。

 ドオォォンッ

「!?」

 壁の上部から解き放たれたエネルギー波はアークデーモンの真下を通過した。そこに居た一部のデーモンたちは為す術なく飲み込まれる。

「何っ!?こ、これは……!?」

 人類の生み出した最強の兵器、通称”魔導砲”。
 ダンジョンの下層で発掘された魔力を伝導させる鉱石、通称”魔鉱石”を使用し作られた特注品。
 高位の魔法使いマジックキャスターの叡智で書かれた魔法陣により、火、風、水、雷のエレメントを複合させ、膨大な魔力量を溜め込む蓄電池ならぬ蓄魔石を使用し、威力を増大させたアヴァンティアが誇る切り札である。

 魔導砲に飲まれた4体のデーモンは黒焦げになって落ちていった。それを見たアークデーモンはすぐさま「降下!!」と部下に指示を出し、一斉に地面に向けて降りて行く。

 地面から3m前後スレスレで一気に速度を上げ、首都の壁に向けて突撃する。対空砲として使用された魔導砲を掻い潜るように移動していると、そこに待ち構えていた地上部隊に阻まれる。
 同士討ちを避けるために地上戦では魔導砲が使えなくなったが、その代わりに最強の冒険者チームがズラリと待ち構えていた。
 冒険者の代表と言えるニールは誰より早く飛び出し、アークデーモンに向かって攻撃を仕掛けた。

「喰らえ!!烈風!三連爪刃!!」

 魔剣に風のエレメントを纏わせて振るう。ニールの剛腕から剣を振る勢いと纏った風のエレメントの効果が重なり、3つの斬撃となって敵に襲う。
 さらに魔剣の効果で魔力が高められ、通常使う魔法の倍近い威力を発揮する。

「ぬおっ!?」

 アークデーモンは腕を交差させて斬撃を防ぐ。魔法攻撃を軽減する常時発動型能力パッシブスキルを持っていたのが功を奏し、斬撃の威力を抑えることに成功。腕を切り落とされることはなかった。

 ニールの攻撃で戦列が乱れた魔族の軍勢に、兵士長の「突撃!!」という命令が響き渡った。兵士と冒険者が入り乱れて突撃を敢行。奇襲するはずだった魔族が逆にやり返されている。

「ぐっ……!貴様を知っているぞ!ニール=ロンブルスだな!?」
「っ!……僕のことを知っているのか?」
「……当たり前だ。貴様ほどの男を認識していないはずがない。人類最強であるニール=ロンブルスをな!」
「……」

 ビッと指を差されたニールの顔から感情が抜け落ちる。急な感情の高低差にアークデーモンは焦る。周りの喧騒が激しさを増す中にあって2人の空間だけが静かになってしまった。

雷光矢ライトニングアロー!!」

 その時、背後から後方支援の魔法が放たれた。プリシラを筆頭に高位の魔法使いマジックキャスターが攻撃を開始した。
 アークデーモン以外のデーモンたちに攻撃が通っている。前線の兵士や冒険者たちを援護しているようだ

 ニールはハッとして地面を蹴った。勢いそのままにアークデーモンと接敵すると、首や横腹、胸部や足などを狙って剣を振るう。
 しかしただ剣を当てる程度では傷一つ付かない。物理攻撃をある程度無効化する常時発動型能力パッシブスキルのせいだ。
 そしてそれはアークデーモンだけではない。部下も同様の能力を保有しているためか、気付けば他の冒険者も苦戦しているのが見て取れる。

(そうか。物理攻撃が効かないのか)

 ニールの通常攻撃でアークデーモンが傷付かないように、部下のデーモンも物理は効かない。魔法でなら攻撃が通る。そのせいか周りのデーモンは冒険者を手を出すことなく煽るようにひらひらと飛び回る。ただ、プリシラたちの魔法攻撃でデーモンはようやく焦り始めた。
 ならばとニールは立ち止まり、魔力を引き出し始める。それと同時にローランドの声が響く。

「神のご加護を!速度向上クロックアップ!!」

 その声にアークデーモンは鼻で笑う。

「バカめ!いくら速くなろうが攻撃を通せないなら意味がない!」
「そいつはどうかなぁ?」

 背後から聞こえた声にアークデーモンの視線が向く。そこにはいつから居たのかジンの姿があった。ローランドの神聖魔法で速度を強化されたジンが即座に後ろに回り込んだのだ。

溶解液爆弾アシッドボム!!」

 ジンは手のひらサイズの黒いボールを投げ付けた。この距離、このタイミングでは避けられない。アークデーモンは一瞬驚いたが、ジンの叫んだボールの名前で余裕が生まれる。
 人間が扱う程度の溶解液ではアークデーモンに害を与えることなど出来ない。

 ボンッ

 アークデーモンに接触した瞬間に弾けたボール。その中身はベタッとした粘着液。咄嗟に受けた両手が巻き込まれてくっ付いた。

「ぬぅっ!?」
「おっ?その顔。もしかして俺の言葉を信じちゃった?」
「なっ?!……貴様っ!!」
「ほあチャァッ!!」

 パパァンッ

 視界がブレる。アークデーモンの顔面にワンが二度蹴りを入れた。何が起こったのか分からず、腕も固定されて頭が混乱している。続けてワンはアークデーモンの腹に両手で掌底を打つ。

「気功丹震掌!!」

 ズンッと内部に響く気功を纏った掌打はアークデーモンにダメージを与える。
 後退りするアークデーモンにアルマが魔導弓で光の矢を5本放ち、眉間、肩、胸に二本、腕と突き刺さる。

「ぐぁっ!……き、貴様ら……っ!!」

 息つく間もなく攻撃されたので苛立ちを募らせたアークデーモン。そこにニールが飛び掛かった。

「雷牙!明光烈刃!!」

 ギャドッ

 凄まじい勢いと雷魔法で叩き降ろす。ニールの魔剣から放たれた雷光が戦場で輝いた。アークデーモンの片腕が吹き飛び、胸から腹にかけて火傷のような切り傷を作った。
 衝撃波が巻き起こり、アークデーモンは後方に吹き飛んでいく。手傷を負ったアークデーモンはその勢いを利用して飛び去る。

「引けぇっ!!退却ぅっ!!」

 デーモンたちはそれに合わせて逃げ始めた。ビフレストの見事なまでの連携はデーモンの大群を退去させたのだ。

「「「うおおおおおっ!!」」」

 そこらかしこで勝鬨が上がる。

「すげぇ……流石だぜみんな……」

 そんな中、リックは仲間を称賛しながらも寂しい気持ちで居た。
 自分があの連携の中に居ない事実。
 肩を落とすリックの背中をプリシラがパンッと叩いた。

「な~にガッカリしてんのよ」
「プリシラさん。いや、なんつーか……1年一緒に居るのに入って行けないっつーか……」
「ああ。ていうか、あんたまで一緒になって敵ボコってたら私はどうなんの?魔術師わたしを守ってくんなきゃ魔法使えないじゃん」
「そ、そりゃそうだけどさ」
「ね?頼りにしてんだから、あんまわがまま言わないの。ほら行くよ」

 プリシラに腕を引かれてニールたちの元へと走った。

 首都防衛成功。人類の勝利。
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