「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

文字の大きさ
66 / 354
7章

66、無能な働き者

しおりを挟む
──バタバタバタッ

 レッドたちがライトと出会ったタイミングで受付嬢や元冒険者等のギルド会館スタッフが走り回り、館内が急に慌ただしくなった。

「ん?なんだなんだ?」

 怪訝な顔でその様子を観察するレッドたち。忙しなく動くスタッフを何も知らない冒険者たちが目で追っていると、トルメルンのギルドマスターが頼りなさげな顔でちょこちょこと食堂のところに出てきた。大きな熊のような獣人のくせにリスのようなこじんまりとした自信なさげな動きが凄く情けなく見えた。羊皮紙をチラチラ見ながら口を開いた。

「え~、え~、みなさん。大変なことになりました。え~……その、魔族に……いや、魔族が冒険者を2名連れ去る事案が発生した模様です」

 ざわざわと騒がしくなる館内。あたふたするギルドマスターのために受付嬢が「すいません。静かに聞いてください」と身振り手振りで冒険者たちの注意を引いた。ギルドマスターは静かになった館内を見渡した後、受付嬢に感謝を述べた。

「ありがとう。……え~、場所は魔導国ロードオブ・ザ・ケインの近くにある”花の宮”と呼ばれるダンジョンだったそうで、え~、連れ去られたのは……え~、名前が、クラウドサインのシルニカさん。それから、え~風花の翡翠のルーシーさん。いずれもチームのリーダーが連れて行かれたとのことです。え~、魔導国にいる冒険者たちが集まって救助隊を発足し、え~、これから救助に向かうと。そういうことだそうでして……」
「そんなもんもう死んでんじゃねえのか?」
「だよな。魔獣が食うために巣に運んだようなもんだろ?その瞬間に救えなかったなら諦めるのが得策だろうよ」
「え~、あのぉ……その、あまりそういった憶測で士気を下げないようにですね、え~、お願いします。え~、ここトルメルンは魔導国から比較的近いので、え~、よければ我々の方でも出来ることがあれば手伝いたいと、こう考えているわけでして……」

 ギルドマスターの発言に冒険者たちは難色を示す。

「知るかよ。手前ぇで捕まったんだ。しかもリーダーがだぞ?情けねぇ。自分たちでなんとかしろってんだよ」
「他人事だからって好き放題だな。一理あるが……」
「だいたい、冒険者ってのはチームメイト以外は敵だぜ?いつ仕事が取られるか分かんねぇのにライバルの心配なんてしてらんねぇよ」
「そりゃそうだ。ライバルが勝手に潰れるならそれに越したことはねぇぜ。はい、傍観確定」
「え~、その……ちょっとはっきり言いますが、人でなしが過ぎるのではないでしょうか?困った時はお互い様と言いますし、え~……」
「はぁ?シルニカ嬢は知らねぇけど、ルーシーの方は言わずと知れた横取り魔だぜ?ちょっと強いからっていい気になりすぎなんだよ。そんなんだから捕まるんだ自業自得ってやつだろ?」
「あのぉ、自分ではないからとそういう言い方をしてはいけません。え~、もう少しこう、広い心と視野を持って……」

 自分の命が可愛いために救助など行きたくない冒険者と、救助支援をして株を上げたいギルドマスターとで口喧嘩が始まった。おどおどしているが、ギルドマスターは意外にメンタルは強いので引き下がるつもりはない。

「なんか……えらいことになっちゃってるなぁ」

 レッドも対岸の火事といった風だが、ライトは心当たりがあるのか顎を撫でながら虚空を見つめている。

「これはもしやニールの言っていた今後の戦いという奴ではないだろうか……」
「え?あ、あの、ニールが何か……」

 レッドが目を離したその時、受付嬢が急いで羊皮紙をギルドマスターに渡した。口喧嘩中に言い返せなくなる隙を与えるのは癪だが、急ぎの連絡を無視出来るはずもなく、斜め読みでサッと目を通す。その内容ですっかり口喧嘩のことを忘れて声を上げた。

「ん?……レッド?……レッド=カーマインは今ここにいますか!?」
「え?あ、はい。お、俺です」

 急に名指しで呼ばれたことに驚きながら手を挙げる。ギルドマスターは大きな体を駆使して冒険者たちを押しのけながらレッドの元にやって来た。

「君が、え~、剣士セイバーのレッド=カーマインくんで間違いないかね?」
「そうですけど、なにか?」
「どうやら君をご指名のようだよ?今すぐに準備して魔導国に向かってくれるね?」
「は?えっ……と、なんで俺が救助部隊に呼ばれるんです?俺なにかしたっけ?」
『皇魔貴族を何体か倒してますし適任では?』
「そういうことか。ようやくレッドの功績が称えられる時が来たんだな」
「皇魔貴族……?」
『んふ?ライトは知らんのか?皇魔貴族というのはのぅ、それはそれは面倒で厄介な連中でのぅ……』

 フローラの解説に耳を傾けるライトの傍ら、ギルドマスターは今一度羊皮紙に目を通した。

「え~……いや、救助部隊ではなく、魔族から指名されているとここに……って、えっ?!魔族っ!?本当に何をしたんだいっ?!」
「え……あ、すいません……よく分からないです……」

 レッドは面倒な質問が飛んでくることを想定し、すぐさま知らぬ存ぜぬで逃げる。その後ギルドマスターに言われるがまま、さっさと魔導国に向けて出発したのだった。



「何のつもりだベルギルツ!」

 日を置いて花の宮に到着したグルガンがベルギルツに怒り心頭の表情で詰めていた。ロータスから人質の話を聞かされた時はまさかと思っていたが、牢屋に入れられた2人を見て愕然とした。

「貴公はこの人間との話し合いが何なのか理解していないのか?初手で人質を取るなど敵対行為でしかないではないか!」
「まぁまぁ、グルガン様。そう目くじらを立てずとも良いではないですか。より良い交渉に臨むならこちらが圧倒的に有利な状況でなければならないでしょう?フィニアス様から私に一任されている以上、口出しはしないでいただきたいのですが?」
「何をふざけたことをっ!!貴公は会場の設営を任されたのみで、我がこの和平交渉を任されているのだ!勝手なことをして場を乱しおって!!」
「おお、落ち着いて。その爪をお仕舞いください。……フゥ、ええその通りです。私が委任されたのは会場の設営のみ……ですから、会場を彩る1つとしてあえて人質を取ったのです。まぁ聞いてください。あらゆる交渉ごとに置いて必要なのは誰が主導権を握るかです。ロータス様の報告によればニール=ロンブルスはさほど強い存在ではありません。レッド=カーマインさえ何とか出来れば私たちの将来は安泰。今までやられた分を取り返すならこの時しかありませんよ?」
「黙れベルギルツ!強い人間は何もニール=ロンブルスやレッド=カーマインにとどまらんわ!!将来などと軽々しく言うが、貴公にはその展望が見えておるのか?あらゆる事象を想定しての行動とはとても思えん!」

 グルガンの怒声が場内に響き渡る。今にもベルギルツを殴りそうな空気だが、グルガンはプルプルと拳を震えさせるだけで何とか耐えている。あと一言でも余計なことを言えば鉄拳が飛びそうな状況にロータスが割り込む。

「……待てグルガン。これは私にも責任がある。人質交渉の件もバトラーを介してすでに人間側に伝えている以上、取り消すことは出来ん……腑に落ちんだろうが、人質を有利に使えるか今からでも考えるべきだ」
「そうそう!まさにロータス様の言う通り!そこで私に考えがあります!将来の展望云々を言えば、そこはまだ未知数の部分が多い。となれば、今すぐに取りかかれるレッド=カーマインの死を手に入れるべきです!1人の犠牲で2人が助かるならあちら側としても願ったり叶ったりではありませんか?」
「貴公はお遊戯でもしているつもりか?命は等価ではない。魔獣2頭の命を救う代わりに貴公の命を差し出せと言っているようなものだ。貴公の企み事その首を飛ばして人質と共に送ってやりたいところだが、そんなことはフィニアスが許すまい」
「何を馬鹿な……冗談もほどほどにしてください。人質を取ったのは私ではなくロータス様です。首を差し出すならロータス様であって私ではありませんよね。あ、悪く思わないでください。これが上下関係というものです」
「……正気か?全て私にお任せくださいと言ったのはお前だろう?」
「はぁ……もう良い」

 グルガンは苛立ちながらマントを翻した。

「我が事態を収拾する。貴公らはこれ以上何もするな。これは命令だ」

 公爵デュークの権限を振りかざされたベルギルツとロータスはそれ以上の言葉を全て飲み込んだ。ロータスは蔑みの目でベルギルツをチラリと見たが、ベルギルツの方はロータスを意に介さず、グルガンに憎しみの目を向けていた。

「私の方が絶対に良き方向に舵を取れるのに……絶対そうなるのに……これだからバカは困るんですよ……」

 ブツブツと呟くベルギルツ。漏れ出す怨嗟えんさにロータスは呆れ返った。

(……最初からグルガンの話だけを聞くべきだな。まさか私が土壇場で裏切られるとは……過信しすぎた結果か……もう少し賢く立ち回るべきだ)

 ロータスは遅れてグルガンの元に歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

風魔法を誤解していませんか? 〜混ぜるな危険!見向きもされない風魔法は、無限の可能性を秘めていました〜

大沢ピヨ氏
ファンタジー
地味で不遇な風魔法──でも、使い方しだいで!? どこにでもいる男子高校生が、意識高い系お嬢様に巻き込まれ、毎日ダンジョン通いで魔法検証&お小遣い稼ぎ! 目指せ収入UP。 検証と実験で、風と火が火花を散らす!? 青春と魔法と通帳残高、ぜんぶ大事。 風魔法、実は“混ぜるな危険…

処理中です...