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8章
85、最終局面
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爬虫類の魔族マッド=子爵=ガンプから女神復活の知らせを受け取ったアルルート=女王=フィニアスは、ガンプに案内されながら超特急で彼の地へと移動する。
(女神は力あるもの全員で掛かるべき事案……レッド=カーマイン。あの男には協調性というものがないのか?)
一度も見たことのないこの世の終わりのような風景に気持ちの悪さを感じ、一刻も早く女神を討伐しなければならないと気持ちだけが逸る。フィニアスは焦りながらも冷静に真っ白な空を駆ける。
闇夜を白に染める世界の理を超える力。まさに神と呼べる強力な力を前に勝率があるのかどうかが頭をよぎる。
(……いや、負ければ死ぬだけ。父上が築いた皇魔の歴史……私の代で終わらせるには早すぎる)
フィニアスが決意を固めた時、ガンプが「後もう少しです!」と叫んだ。戦場に近付くにつれ心臓が高鳴る。とその時、暗雲が出現するのをその目に認めた。
「な、なんだあれはっ!?」
ガンプの驚愕がフィニアスの頭を冷静にさせた。
「……隕石か」
*
次の瞬間には全てが無に帰す天体の暴力。接触はすなわち消滅。
ライトは剣を構え、オリーも諦めることなく隕石を睨む。グルガンも魔剣を出現させて柄を握りしめる。どうしようもない状況を前にして未だ諦めようとしない。その輝きを前にミルレースの目は血走る。
「とっとと吹き飛べぇ!!!」
ミルレースは顎が外れるかと思えるくらい口を開いて吼えた。怒りから余裕が消えたミルレースにグルガンが今にも飛び出しそうに腰を落としたが、何かに気付いたようにハッとし、直後ニヤリと笑った。
「……来たか。完璧なタイミングだ」
オリーとライトはその言葉にハッとしてグルガンに視線を向けた。その謎の笑みに2人が質問を投げかける直前、言葉以上の答えが出る。
「異空間への扉」
グニィィィッ
空間が歪む。宙空に信じられないほど大きな穴が開き、隕石を飲み込もうと待ち構える。突然の事態にミルレースは視線を巡らせ、その視界にフィニアスを捉えた。
「くっ……!あの魔族めっ!」
多種多様な能力がある以上、ミルレースがフィニアスに負けることなどまずあり得ないが、フィニアスの真価はこの世界で唯一ミルレースの世界に対抗出来ること。
たった2人の特異能力。ミルレースの天敵になり得る皇魔貴族の筆頭。女王の座は伊達ではない。
星が異空間への扉に飲まれる寸前、何かが起こる。
バガッ
星は真っ二つに裂ける。かと思えば中心から爆発。爆風が巻き起こり瞬時に灰となった。
目を潰すほどの光が瞬き、ミルレースを除く全ての生物の目を眩ませる。
ゾクッ
全身総毛立つほどの恐怖がミルレースを襲う。何が起こったのか分からぬままにミルレースは杖を振り、考えるまもなくアルカナを呼び出した。
「チャ……チャリオットォォォッ!!」
水蒸気爆発のごとく立ち昇った濃霧から瞬時に出現する金属の巨獣。4つの手に持つ武器を光の根源に向けて振り下ろした。
シパッ
巨大なハルバートとサーベルはまるで最初から切り離しが可能であったかのように刃が戦車の後方に飛び、同時に頭上半分も切り離される。断面は恐ろしく綺麗で、さっきまで1つだったのが信じられないレベルだ。
こんな事が出来る存在などこの世にただ1人。レッド=カーマインをおいて他に居ない。
「ミルレース!!」
太陽の熱で焼け焦げた姿のレッドが光から飛び出してきた。
「「「レッド!!」」」
その姿を目視したものたちの期待と喜び、恨みと憎しみ、恐怖と殺意、祝福と希望が一体となってレッドに注がれる。
戦車は使えなくなった武器を捨て、素手で小さな虫を捕まえるように手を伸ばす。
「邪魔だっ!!」
パグンッ
変な音だった。レッドは空気を蹴るように宙空で速度を上げ、戦車に一気に接近。そのまま通り抜けたかと思えば、戦車の体は積み木のお城を蹴ったようにバラバラに砕け散った。
レッドは戦車を斬り伏せ、ミルレースの前に着地した。太陽の熱波に焼かれた体から立ち昇る湯気、そこから覗く目は猛禽類のように鋭くミルレースを睨みつけていた。口の端から泡を吹きながら細く長い息を吐き出す。
「ふしゅるるるっ……ミルレースぅ……ミルレースぅ!!ほ、本気で死ぬかと思ったぜこのやろう……こ、ここまで追い込まれたのは……いつ以来だ?」
「な、なんでまだ生きているのですか!?なんでまだ唾が出ているのですか?!あなたはただ強いだけの人間でしょう?!生き物なら炭化しなさいよ!!」
「ふへ……ふへへ……旋刃で熱を飛ばし続けてたんだ!あ~くそっ……あの玉を破壊しても熱いまんまだしよぉ……い、一体いつまで回り続けなければならないのかと思って肝を冷やしたぜ……」
「ただの回転斬でどうにかなるようなレベルではっ……!」
だがレッドならどうにかしてもおかしくはないと頭をかすめる。というより動かずただ焼かれていたとしても死にそうにない。
「いや…… 見縊っておりました。レッド=カーマインという存在を生き物であると認識していたのが私の過ち。どこかでまだただの人間だと思っていた節があったようです。……あなたを同じ神と定義し、戦いをやり直します。ここからは持久戦ですよ?」
「……は?持久戦?」
「そうです。死なないあなたと死なない私。永遠の戦いに身を投じるのです」
「……あ」
レッドはミルレースを一度斬っている。しかし死ぬことなく元の状態に戻り、レッドを殺しかけた。終わりの見えない戦いが始まる予感を感じ、レッドはさらに肝が冷えた。
「永遠とは大きく出たなミルレース」
そこにグルガンがライトとオリーを引き連れて宙空より降り立つ。
「グルガン……ふっ、あなた方の出る幕ではないですよ?」
「いや、今こそ我らが参戦する時よ。時に貴様、今自分が死なないと豪語したな?それはあり得ん」
「ほぅ?私と一度も戦っていないというのに分かったような口を利きますね。その心を聞きましょうか?」
「貴様が死ねば能力が掻き消える。レッドがどのような手段で斬ったかは見ていないが、再生する瞬間は見せてもらった。それが能力の一つであることも……ならばその能力の発動を阻害出来たなら、貴様は死ぬ。それこそ為す術も無くな」
ミルレースはグルガンの指摘に目を丸くするも、すぐに眉を顰めて歯を食いしばった。ライトはオリー共々グルガンに視線を向けた。
「なっ……貴様いつの間にそんな……」
「我は観察眼には少し自信があってな。……あの様子だと図星のようだ」
これにはレッドも驚愕の眼差しを向けると同時に、倒せるかもしれないという希望の光が灯る。
「ふふ……うふふっ……あっはっはっはぁっ!!ご明察です。頭が悪そうな顔をしているくせに思慮深いのですねぇ。ですがそれで看破した気になっているのは滑稽の極み。永遠の戦いは絶対なのです。運命の輪=自動化」
キィンッ
ミルレースの体が黄色いオーラに包まれる。異様な雰囲気にグルガンの顔も険しくなった。
「これを使うと理の大半が制限されてしまうのが玉に瑕ですが、私が死ぬよりはマシというもの。あなた方には逆に永遠の眠りを差し上げます。私の最強にして無慈悲のアルカナ……死でね」
ミルレースの手から杖が消え、バッと腕を大きく広げた。他のアルカナ同様、ミルレースの背後に濃霧が立ち登る。そこまでは一緒だが他と決定的に違うのは、壁のように立ち昇った濃霧にミルレースの影が這うように伸びていった。和紙に墨汁を垂らしたように滲む影は徐々に立体化して姿を現した。
黒や紫で彩られた毒々しく禍々しいドロドロの流動的なスライム。死はミルレースに触手を伸ばし、軽々と持ち上げながら体内に取り込んだ。
「あぁっ!?……ちょっ、おい……ミルレース?取り込まれちゃってるよ?」
「さぁ最終局面です。生き残るのは私か私以外か」
(女神は力あるもの全員で掛かるべき事案……レッド=カーマイン。あの男には協調性というものがないのか?)
一度も見たことのないこの世の終わりのような風景に気持ちの悪さを感じ、一刻も早く女神を討伐しなければならないと気持ちだけが逸る。フィニアスは焦りながらも冷静に真っ白な空を駆ける。
闇夜を白に染める世界の理を超える力。まさに神と呼べる強力な力を前に勝率があるのかどうかが頭をよぎる。
(……いや、負ければ死ぬだけ。父上が築いた皇魔の歴史……私の代で終わらせるには早すぎる)
フィニアスが決意を固めた時、ガンプが「後もう少しです!」と叫んだ。戦場に近付くにつれ心臓が高鳴る。とその時、暗雲が出現するのをその目に認めた。
「な、なんだあれはっ!?」
ガンプの驚愕がフィニアスの頭を冷静にさせた。
「……隕石か」
*
次の瞬間には全てが無に帰す天体の暴力。接触はすなわち消滅。
ライトは剣を構え、オリーも諦めることなく隕石を睨む。グルガンも魔剣を出現させて柄を握りしめる。どうしようもない状況を前にして未だ諦めようとしない。その輝きを前にミルレースの目は血走る。
「とっとと吹き飛べぇ!!!」
ミルレースは顎が外れるかと思えるくらい口を開いて吼えた。怒りから余裕が消えたミルレースにグルガンが今にも飛び出しそうに腰を落としたが、何かに気付いたようにハッとし、直後ニヤリと笑った。
「……来たか。完璧なタイミングだ」
オリーとライトはその言葉にハッとしてグルガンに視線を向けた。その謎の笑みに2人が質問を投げかける直前、言葉以上の答えが出る。
「異空間への扉」
グニィィィッ
空間が歪む。宙空に信じられないほど大きな穴が開き、隕石を飲み込もうと待ち構える。突然の事態にミルレースは視線を巡らせ、その視界にフィニアスを捉えた。
「くっ……!あの魔族めっ!」
多種多様な能力がある以上、ミルレースがフィニアスに負けることなどまずあり得ないが、フィニアスの真価はこの世界で唯一ミルレースの世界に対抗出来ること。
たった2人の特異能力。ミルレースの天敵になり得る皇魔貴族の筆頭。女王の座は伊達ではない。
星が異空間への扉に飲まれる寸前、何かが起こる。
バガッ
星は真っ二つに裂ける。かと思えば中心から爆発。爆風が巻き起こり瞬時に灰となった。
目を潰すほどの光が瞬き、ミルレースを除く全ての生物の目を眩ませる。
ゾクッ
全身総毛立つほどの恐怖がミルレースを襲う。何が起こったのか分からぬままにミルレースは杖を振り、考えるまもなくアルカナを呼び出した。
「チャ……チャリオットォォォッ!!」
水蒸気爆発のごとく立ち昇った濃霧から瞬時に出現する金属の巨獣。4つの手に持つ武器を光の根源に向けて振り下ろした。
シパッ
巨大なハルバートとサーベルはまるで最初から切り離しが可能であったかのように刃が戦車の後方に飛び、同時に頭上半分も切り離される。断面は恐ろしく綺麗で、さっきまで1つだったのが信じられないレベルだ。
こんな事が出来る存在などこの世にただ1人。レッド=カーマインをおいて他に居ない。
「ミルレース!!」
太陽の熱で焼け焦げた姿のレッドが光から飛び出してきた。
「「「レッド!!」」」
その姿を目視したものたちの期待と喜び、恨みと憎しみ、恐怖と殺意、祝福と希望が一体となってレッドに注がれる。
戦車は使えなくなった武器を捨て、素手で小さな虫を捕まえるように手を伸ばす。
「邪魔だっ!!」
パグンッ
変な音だった。レッドは空気を蹴るように宙空で速度を上げ、戦車に一気に接近。そのまま通り抜けたかと思えば、戦車の体は積み木のお城を蹴ったようにバラバラに砕け散った。
レッドは戦車を斬り伏せ、ミルレースの前に着地した。太陽の熱波に焼かれた体から立ち昇る湯気、そこから覗く目は猛禽類のように鋭くミルレースを睨みつけていた。口の端から泡を吹きながら細く長い息を吐き出す。
「ふしゅるるるっ……ミルレースぅ……ミルレースぅ!!ほ、本気で死ぬかと思ったぜこのやろう……こ、ここまで追い込まれたのは……いつ以来だ?」
「な、なんでまだ生きているのですか!?なんでまだ唾が出ているのですか?!あなたはただ強いだけの人間でしょう?!生き物なら炭化しなさいよ!!」
「ふへ……ふへへ……旋刃で熱を飛ばし続けてたんだ!あ~くそっ……あの玉を破壊しても熱いまんまだしよぉ……い、一体いつまで回り続けなければならないのかと思って肝を冷やしたぜ……」
「ただの回転斬でどうにかなるようなレベルではっ……!」
だがレッドならどうにかしてもおかしくはないと頭をかすめる。というより動かずただ焼かれていたとしても死にそうにない。
「いや…… 見縊っておりました。レッド=カーマインという存在を生き物であると認識していたのが私の過ち。どこかでまだただの人間だと思っていた節があったようです。……あなたを同じ神と定義し、戦いをやり直します。ここからは持久戦ですよ?」
「……は?持久戦?」
「そうです。死なないあなたと死なない私。永遠の戦いに身を投じるのです」
「……あ」
レッドはミルレースを一度斬っている。しかし死ぬことなく元の状態に戻り、レッドを殺しかけた。終わりの見えない戦いが始まる予感を感じ、レッドはさらに肝が冷えた。
「永遠とは大きく出たなミルレース」
そこにグルガンがライトとオリーを引き連れて宙空より降り立つ。
「グルガン……ふっ、あなた方の出る幕ではないですよ?」
「いや、今こそ我らが参戦する時よ。時に貴様、今自分が死なないと豪語したな?それはあり得ん」
「ほぅ?私と一度も戦っていないというのに分かったような口を利きますね。その心を聞きましょうか?」
「貴様が死ねば能力が掻き消える。レッドがどのような手段で斬ったかは見ていないが、再生する瞬間は見せてもらった。それが能力の一つであることも……ならばその能力の発動を阻害出来たなら、貴様は死ぬ。それこそ為す術も無くな」
ミルレースはグルガンの指摘に目を丸くするも、すぐに眉を顰めて歯を食いしばった。ライトはオリー共々グルガンに視線を向けた。
「なっ……貴様いつの間にそんな……」
「我は観察眼には少し自信があってな。……あの様子だと図星のようだ」
これにはレッドも驚愕の眼差しを向けると同時に、倒せるかもしれないという希望の光が灯る。
「ふふ……うふふっ……あっはっはっはぁっ!!ご明察です。頭が悪そうな顔をしているくせに思慮深いのですねぇ。ですがそれで看破した気になっているのは滑稽の極み。永遠の戦いは絶対なのです。運命の輪=自動化」
キィンッ
ミルレースの体が黄色いオーラに包まれる。異様な雰囲気にグルガンの顔も険しくなった。
「これを使うと理の大半が制限されてしまうのが玉に瑕ですが、私が死ぬよりはマシというもの。あなた方には逆に永遠の眠りを差し上げます。私の最強にして無慈悲のアルカナ……死でね」
ミルレースの手から杖が消え、バッと腕を大きく広げた。他のアルカナ同様、ミルレースの背後に濃霧が立ち登る。そこまでは一緒だが他と決定的に違うのは、壁のように立ち昇った濃霧にミルレースの影が這うように伸びていった。和紙に墨汁を垂らしたように滲む影は徐々に立体化して姿を現した。
黒や紫で彩られた毒々しく禍々しいドロドロの流動的なスライム。死はミルレースに触手を伸ばし、軽々と持ち上げながら体内に取り込んだ。
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