「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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9章

91、アラムブラド

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 結局二泊休んだレッドたちはシャングリラを離れ、シャングリラから1番近い人里"アラムブラド"に向けて出発した。丁度グルガンが留守の時の出立となったが、使用人には次の街に行くことを伝えているので用事が終わり次第来てくれるだろう。
 急な旅立ちには理由がある。それというのも、ライトがレッドたちのチームに未だ申請出来ていないことへの焦りからだった。
 ライトにギルド会館は逃げないことを何度か伝えたものの、それだけが気がかりで夜もまともに眠れないという話だ。体調を崩されては困るということで挨拶もそこそこに町を出たのだった。

 次の街アラムブラドは食料品から調度品などの様々なものを預かり、配送するという言わば物流倉庫の役割を担う街である。運送ギルドが取り扱う倉庫には世界各国の貴重な品も預かるので、ありがたいことに冒険者を護衛として雇ってくれる。
 冒険者ギルドも商魂たくましく、凄腕冒険者から弱小冒険者まででランク分けを行い、有名に従って賃金を変動させ警護任務クエストを宣伝にも使用していた。
 有名どころのビフレストなどは超高額となり、雇うのも難しい。しかし、吐いて捨てるほどいる底辺冒険者チームは破格の安さで買い叩かれる。金額の差が信用の差であると広報している。
 そんな街へと旅の道中、頭の上から急に話し掛けられた。

『こーんなとこにったかライト!』

 ふわぁっと羽根のように降りてきたのは精霊の王、風帝フローラ。

「フローラか。なかなか戻って来ないなと思ってたが、もう良かったのか?」
『ああ、もう良い。そんなことよりもまたエラいことになりそうじゃぞ?』
「なに?女神以上にか?」
『いや、あのレベルを引き合いに出されると分からんが、爺様がなんか言っとったわ』
「え?でも特に襲われるようなことは……うーん、思い……浮かばないけどなぁ?」
「そうだ。欠片は無くなったし、私たちは皇魔貴族を攻める理由も攻められる理由も失ったと言って良い。欠片奪還の際に倒した魔族の復讐であるならば、その限りではないがな」
『ふーむ。それはそうかも知れんが、それとは似て非なるものと此れは考えておるぞ。まぁ後で爺様が合流するからそこで詳しく聞いてくれの』

 フローラから不穏なことを聞かされつつ歩いて丸一日。街に着いて早々ギルド会館に足を運んだ。
 せっかくだからチームの手続きついでに仕事を受注しようと話し合いながらギルド会館の扉を開く。わいわいがやがやとうるさかった店が、レッドの入館と同時にしんっと静まり返った。「おい、あれ……」「マジか……」と、レッドの顔を見て何かに気付いたようだ。
 レッドたちは一瞬気になったが、特に気にすることなく受付へと進む。しかしその道中、レッドの元に何やらニヤついた冒険者の男たちが近づいてきた。極力気にしないように目を伏せていたが、彼らの一声で顔を上げざるを得なくなった。

「よぉレッド」
「……はぁ……パイク……」

 レッドは目の前に立つ冒険者たちに目を向けた。そこには予想通りゴールデンビートルの連中がずらっと並んで立っている。レッドの雰囲気からオリーは警戒心を上げ、じろりと仇でも見るように睨んだ。ライトもレッドとパイクの間に入れるように一歩前に出る

「おいおい、そう警戒してくれるなよ?ちょっとばかし聞きたいことがあるだけなんだからよ」
「前を防ぎながらその言い分はどうかと思うがなバイク」
「まぁ焦んなよすぐに退くって。んじゃ直球で聞くがよ、あの噂は本当か?女神を倒したって奴」
「ん?あれ?なんで知って……え?だって誰も見てないですよね?」
「そのはずだが……既に知れ渡っているようだな……」

 館内の喧騒をレッドの顔ひとつで黙らせたことを思えば、情報の出どころはともかく噂はここに居る全員が聞いたのだろうと推測出来る。

「おいっどうなんだ?」
「え、え~っと……そのぅ……」

 パイクの声にレッドは萎縮する。それを見越してライトがレッドを隠すようにパイクの視線を遮った。

「その通りだ。レッドは女神を倒した。それで?それを知った貴様らはどうする?」

 ライトが自信満々で言い放った一言にパイクは噴き出した。

「ぷっ……だーっはっはっはっ!!」

 大声で笑い飛ばすパイクに既視感を感じ、レッドは逃げたい衝動に駆られたが、ライトとオリーの手前そんなことは出来ずに苦笑いで周りを見渡す。他のゴールデンビートルの面々も腹を抱えて笑い出す。ライトが見兼ねて諌めようと口を開いた時、パイクたちの言葉で口を噤んだ。

「はっはっはぁっ!!レッドお前……なんでそんなことを隠してんだよお前っ!冒険者ってのは実力を見せてなんぼだぜ!ってのにお前ってば……!はぁーっ!おもしれっ!」
「マジ凄ぇぜっ!!」
「神倒すとかヤバすぎ!!」
「俺けっこう前に喧嘩売っちゃったよ~!知らんかったとはいえマジヒヤヒヤもんだよな!」
「人が悪ぃぜレッドくーん!」

 口々にレッドを讃えるゴールデンビートル。レッドもライトも急なことに困惑してしまう。涙を流すほどに大笑いしたパイクはライトに退けと手で払いのけるように指示を出す。2、3回同じ指示を出され、ライトは不服そうに横にずれた。ライトを退かせたパイクは満足そうにレッドに頭を下げる。

「すまん!今までのこと全部謝る!!申し訳なかった!」

 パイクが頭を下げたのと同時にゴールデンビートル全員が頭を下げた。「悪かった」や「すまねぇ」など各々の謝罪の声が聞こえる。しばらく頭を下げていたパイクはおもむろに頭を上げ、バッと勢いよく手を差し出した。

「あ、えっと……」

 レッドはおずおずと手を差し出す。レッドの性格をある程度知っているパイクは、朗らかに笑うと引っ掴むように握手を交わし、握ったまま2度3度と上下に振った。

「おぅ、こいつで友達ダチだ。また今度飲みにでも行こうぜ。それじゃ邪魔したな色男。と、可愛い子ちゃん。行くぜ野郎ども!」

 威勢よく「「「おぅっ!」」」と返事をしてゾロゾロとギルド会館から出て行くゴールデンビートルの面々。去り際に千穿のウルフが声を掛けてきた。

「よぉ、すっかり騙されちまってたぜ。お前にゃ負けたよ」

 ウルフは槍を担ぎ直してそそくさとギルド会館から出ていった。ぶち上げたテンションとその場のノリだけで生きる冒険者チーム"ゴールデンビートル"。それなりの実力を持つ彼らは同時に、成果を出せた相手を称賛出来るだけの度量も持ち合わせていた。レッドの中でゴールデンビートルの評価が少しだけ上がった。

「……悪い奴らでは無いんだろうが、普段の行いがな……」

 ライトはレッドの気持ちを汲み取ったように補足する。オリーは既に興味無さげに受付に歩き出す。

「さぁ、早くしよう。あまり時間をかけると仕事が出来ないぞ?」
「おっと!待ってくれオリーさん!まずは俺をチームに加入させてくれ!」

 慌てて追い掛けるライトの背中を見ながらレッドは夢を見ているような気持ちになる。1人で孤独に過ごし、バカにされ侮蔑され、悲哀に満ちたあの時。それが今となっては懐かしくも思える。レッドは仲間が居るという湧き上がる喜びを噛み締めるのだった。
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