「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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13章 新たなる大陸へ

177、始動

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 ゴゥンゴゥンッ……

 6つの浮遊要塞はそれぞれの速度を維持してアノルテラブル大陸の空を我が物顔で飛んでいた。

 その中で2つの要塞は帝国上空を通り過ぎ、獣王国と聖王国に向けて飛んでいく。3つは帝国上空に至る前にコースを外れて別々の場所へと進行し始めた。

 最後の1つ、黒曜石のように光り輝く鉱物の浮遊要塞だけが急激に速度を落とし、ゆっくり時間をかけてチマチマ移動し始める。全員の要塞が各々の支配予定の国の上に停留するまでの時間稼ぎを行なっていた。
 これはデザイアからの指示であり、同じタイミングでの支配を望んでいたというのが大きい。各国が浮遊要塞に対してどの様な動きに出るのかという反応も込みで命令を受諾した結果でもある。

 答えは特に何もなし。

 帝国と聖王国はその先進的な国柄から強力な飛び道具を使って来ると予想も立てていたのだが、刺激することを恐れたのだろうという結論に至る。
 それは他の国にも当てはまることだが、こと獣王国は強力な飛び道具さえあれば途端に攻撃を仕掛けた可能性を見出す。
 かなり交戦的であり、上空から剣や槍、斧などを構えて戦闘を心待ちにしている様子が確認出来た。だが飛び道具の類は見当たらず、右往左往している様子だけが報告に上がった。

 そしてとうとう帝国の真上に黒光する浮遊要塞が止まった。
 玉座に座って今か今かと待ち侘びたその瞬間をデザイアは鋭敏に感じ取り、ギラリと金色の目を光らせた。

「……さぁ、始めようか。」

 聞こえるはずのない声に反応する様に姿を見せたのは禍々しい一本角を生やした白いローブの神々しい老人ヴァイザー=イヴィルファイド。
 最強で凶悪な二足歩行の竜ドラグロス=バルブロッソ。
 そして漆黒の剣士ガルム=ヴォルフガング。

 彼らは背後に控える配下を差し置いて要塞を離れる。

 ──ズンッ

 巨石や鉄球でも落ちて来た様な音を立てて着地したのはドラグロス。
 生き物ならば軽く昇天する上空から肉体能力だけで着地し、目の前にズラリと並ぶ獣人たちを睨みつけた。

「あれはなんだ? 竜人か?」
「俺たちを前に単身乗り込んでくるとはな……。」

 ざわざわとドラグロスの姿を見た獣人たちが感想を言い合う。爪や牙をキラリと見せつつ武器を構える獣人たちに対し、鎧を着ただけの武器を持たないドラグロス。
 見ただけで強そうではあるのだが、いつ戦闘が始まっても良い様に用意していた獣人たちとは明らかに心のありようが違う。明らかに舐め腐っている。

「かかれぇっ!!」

 獣人の中で一際強そうな熊の様な獣人が号令をかける。待ってましたとばかりに走り出した身軽な獣人たち。
 戦闘方式は至ってシンプル。小、中、大で体重別に前衛と後衛に分け、攻撃を徐々に重いものへと変化させていく戦略など有って無い様な突撃。
 そうは言っても獣と人間が合体した様な存在たちであるために生き物としての土台がまるで違う。身体能力は常人のはるか上を行き、爪や牙などの天性の殺傷能力を持ち、さらに武器や魔法を使用出来る。
 戦いの才能だけで語れば基本能力は人族で最強を誇る。

 獣人たちがいかに危険であるのかは、その身体能力だけで大国を維持出来ていることからも理解出来るはずだ。

 猿や猫を模した身体能力を持つ身軽な獣人が真っ先にドラグロスに一斉に飛びかかる。
 その攻撃はまるで示し合わせたかの様に隙間がなく、速度もかなりのものであるために避けることは不可能。

 ──パパパパパァンッ

 閃光が走る。
 ドラグロスに襲い掛かった獣人たちがまるで見えざる壁に弾かれた様に吹き飛んだ。

「……遅ぇな。」

 ドラグロスは右手を左右に振りながら面倒臭そうに呟く。

「魔障壁かっ!? ならばっ!魔法隊前へっ!!」

 そこに杖を振り上げる羊の群れが魔法を唱え始めた。

「違ぇよ。全部叩いてやっただけだ。」
「……なっ?!」

 ドラグロスはその体躯に似合わない速度で指揮官と思われる獣人の背後に立っていた。
 何が起こったのか理解不能だった。無論、動体視力も折り紙付きの獣人たちなのだが、ドラグロスはその動体視力をも置いてけぼりにし、軽く獣人軍の総大将に接近したのだ。
 次の瞬間には総大将も乾いた音と共に宙を舞った。

「俺に歯向かおうって覇気のある奴は前に出な。この俺に一発でも攻撃を当てたらこの国の支配は見逃してやっても良いぜ。だが俺が勝ったら……。」
「上等だこの野郎ォッ!!」
「ぶっっ殺してやるぜっ!!!」

 ドラグロスが喋っている最中に突っかけて来る獣人たち。ドラグロスは久々の気迫にニヤリと笑った。

「お前ら全員俺の手下にしてやるよ。」

 獣王国で戦闘が始まった頃、帝国でも侵略が行われていた。

 ──ヒュパッ

 空気を切り裂く音が木霊する。
 瞬きと呼べるわずかな時の中で幾度刀が振られたのか、その道を極めんと人生を掛けて剣を振り続けて来た剣師たちにも視認出来ない速度だった。

 そもそもいつ刀が抜かれ、いつ納刀したのかさえも認識出来ない。悪い夢でも見ているかの様な状況に立たされた剣師たちは漫然と進むガルムを止めることが出来ない。

 何故ならガルムの前に立った同僚の剣師が体内から破裂したかの様に四方八方に散っていく様を見てしまったら、帝国の剣としての誇りなど同僚の生命と共に消え去ってしまう。恐怖で動けなくなり、中には腰砕けになってへたり込んでしまう様な剣師も居たほどだ。

 剣師とは3級から1級までのランクがあり、3級でも彼の大陸で冒険者最強の名を欲しいままにしたニール=ロンブルスを鼻で笑いながら足蹴に出来、2級であれば実力揃いの冒険者たちで囲みながら手も足も出なかったハウザーを余裕で倒せてしまう実力を持った猛者揃い。準1級や1級であればその実力は計り知れない。
 そんな戦力を前にしてガルムは涼しい顔で無人の野を行く。

 掛かって行ったのはせいぜい3、4人。ガルムの戦力を見極められなかった愚か者たち。ガルムの行く手を牽制程度に阻もうとした者、たまたま立ってしまっていた者を含めると12人の犠牲を経て剣師たちは皆、同じ答えにたどり着いた。

 剣師程度の実力では戦うことは死を意味し、止める止めないの領域にはおらず、その姿を見ることすらおこがましい。

 その後は皆一様に俯き、ガルムが城に入ってからも剣師たちは壁際に立ってガルムを迎えた。
 実力を発揮することなく皇帝まで素通りとは、帝国という最強国家の栄えある戦力たちにとっては全くもって度し難く、極刑にあたる行為だが、情けなくもこの行動には意味がある。

 自分たち剣師ではどうにも出来ないが、剣聖なら勝負になるのではないか。帝国の英雄であり最強の剣神ならあるいは勝てるのではないだろうかと考えたのだ。

 もはや神頼み。
 『我こそは剣師なるぞ』と誇っていた者たちの心をも寸断する実力差。
 もはや祈ることしか許されていない。

 そんな中、衛兵が慌ただしく玉座の間に入って来る。息を切らせて入って来た衛兵に居合わせた剣聖も剣神も皇帝も、皆一様に怪訝な顔を見せ状況の報告を聞こうと皇帝が口を開きかけたその時、衛兵が声を張り上げた。

「皇帝陛下っ!!すぐにお逃げ下さいっ!!も、もうすぐここにあの化け物がが……がっ!!」

 衛兵の言葉が途切れると同時に全身に無数に光の筋が現れる。隙間だらけの木の板や隙間だらけの石の壁を陽の光を遮る様に置いた時に見える木漏れ日の様に異様な光を放った衛兵は、まるで内側から弾けた様に四散し、玉座の間のシミとなった。
 驚いたのも束の間、衛兵が先ほどまで立っていたすぐ後ろにガルムの姿があった。
 ガルムは皇帝を見るや、すぐに歩を進める。

「……は? なんだぁ? 今のは……?」

 剣聖1生意気な男であるセオドアは今目の前で起こったことに理解が追い付かず、ただ首を傾げた。それはほとんどの剣聖が同じことで、セオドアに同調する様に疑問符を頭に浮かべている。
 しかし先の事態に理解を示すものもいる。それは剣神ティリオンと剣聖ブルック、そしてニールの3人である。
 サイクロプスを斬った時に同じ現象を目の当たりにしたニールには馴染み深いものだった。
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