「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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13章 新たなる大陸へ

185、勝ち目は……

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 ──コツ……コツ……コツ……

 ゆっくりと門を潜り、中の様子を確認しながらガルムは静かに口を開いた。

「……あの程度では分からなかったようだな。まさかこんなにも早く反旗を翻すとは……。」
「お待ちくださいガルム様。話を聞いていただけないでしょうか?」
「……私を倒す算段か? それとも贖罪にその男の首を差し出す話か?……誰が部下を殺そうとも関係ない。支配を受け入れないと言うのなら、その体に分からせてやるだけだ。」

 ガルムは淡々と語り、獲物を狙うような眼光で剣聖たちと侵入者を見回す。
 凄まじいまでの殺気を感じたディロンは勾玉を握り締めて臨戦態勢に入った。

「ヤ、ヤベェ……何だこの野郎は? 今まで会ったことがねぇ凄まじい気配だっ!何やってんだオメーらっ!構えろっ!!」

 全てをご破算にした男がしれっと最前線に立って剣聖を巻き込もうとしている。もちろん狙ってやっているわけではなく完全に天然で行っている。この短い間だが、それが何となく分かるからこそ剣聖たちの目は冷たい。

「ダメだディロン。この殺気……そして彼らの反応から察するに、目の前のこの男が剣神を殺したと見て間違いない。」
「はんっ?!じゃあどうすんだよ!? 俺らだけでやんのか?!」
「いや、役者は揃ってるんだ。……一人は残念なことに既に欠けているが、ここでやるしかない。」
「ちょ……何言ってんのっ?!撤退はっ?!」
「今逃げたら帝国は完全に平らげられる。次に来た時はここに居る全員が敵だ。……俺が出る。」

 ライトはサッと動き出しガルムの眼前に立つ。
 ガルムはライトをチラリと見て視線を外す。ライトは自分が侮られているのを感じて好機と捉えた。

(ここで力を示し、帝国を勢い付かせれば勝率は上がる。俺の力なんてこの男の足下にも及ばないだろう……けど。)

 ──バッ

 ライトは右手を横に水平に払う。それを合図に精霊王たちが動き出した。精霊王たちは人型だった姿を掌大の光る玉に変化させ、ライトの背中に入っていく。青、緑、茶の三つの玉がライトの体で発光し、ライトの髪の毛が逆立った。

 風帝フローラ、水帝ジュール、地帝ヴォルケン、そしてライト。
 四つの心、四つの力。

 ──四身一体・極意『花鳥風月』──

 基礎能力の高いライトを土台に精霊王の力を付属した最強の力。
 多種多様な魔法を使用出来、魔力が枯渇することもなく、身体強化はもちろん武器の強化や回復能力にも優れた万能型であり、誰もが成し得なかった気難しい精霊との合体は歴史的な快挙と言える。
 本来なら炎帝も入れて『五身合体』となりたかったが、精霊王レベルの火の精霊が現在不在であるために四身一体となっている。

「へぇっ! オメーもやってんなぁライトっ!」
「敵の到着が早かったから即席ではあるがな。少しでも役に立てるように俺たちも色々やってたんだ。……剣を取られているから不安は残るが、いつだって完璧な状態で戦えるわけじゃない。俺が隙を作ってみせる。」

 ライトは精霊たちの力を両手に収束させて手をかざす。するとライトの周りに小さな水の玉が無数に出現した。
 小さな水の玉は一つ一つが凄まじい力で圧縮された水の塊であり、ここから放たれる攻撃は防御無効の水圧カッターとなる。それに加えて真空の刃を飛ばすという遠距離での攻撃。
 体の表面を金剛の鎧に変化させ、魔力を硬質化させた半透明の刃を手の先に備えることで接近戦も可能。武器防具の類を魔力で補うので重量も関係なく十全に能力を発揮出来る。

「……す、すごい……。ライトがまさか……こんな……。」

 ニールはライトの変わりように驚愕を隠せない。ディロンもライトもなぜこんなにも強くなっているのか。内心自分よりも劣っていると思っていた存在の覚醒に、自分を天才だと自負していた今までが恥ずかしく思えるほどだ。
 レッドと関わったことで変わってしまった3人。ニールだけ置いていかれた事実に強い嫉妬と劣等感を感じずにはいられない。

 全ての準備が整い、満を辞して攻撃を仕掛けようと踏み込んだ次の瞬間。

 ──ドンッ

 ライトは吹き飛び、後方に倒れ伏した。衝撃波が起こるほどの一撃は合体していた精霊王を引き剥がし、フローラもジュールもヴォルケンも柱や壁に吹き飛ばされる。
 肝心のガルムは納刀された刀を前方に構えていた。当然のように無傷で。

「「ライトぉっ!!?」」

 あれだけ強化されたライトを瞬時に倒されたディロンとウルドラリスは驚愕し、そしてニールは絶望する。
 消えるほどの速度で踏み込んだライトをガルムは鞘のまま小突いたのだ。
 これを見た剣聖たちはライトが殺されなかった事に驚愕したが、ブルックはガルムのライトに対する見方が関係しているのではないかと考えた。

(……剣を抜くほどでもないと見たか?)

 弱者であったから小突かれる程度で済んだのではないかという想定。そうなると帝国の街を徘徊していたガルムに殺された剣師たちはかなり警戒されていたことになる。
 目の前で精霊と合体し、力を引き出したライトは殺された剣師たちよりも強く感じたのだが、見た目だけだったとでもいうのか。はたまたガルムの気が変わったか。

 前者であればこのまま戦っても勝ち目は皆無。しかし後者であれば……。

「……最も強い者を殺したところで反骨心は消えず、何とか状況を打開しようと抜け道を探す。下手に知恵が回るだけに獣のように簡単には行かぬか。……やはり体に教え込まなければ分からんようだな。他に逆らう者がいるなら早く来い。私が本当の絶望を心に刻んでくれる。だが、支配を受け入れるなら二度と裏切らぬという誓約の元、歓迎しよう。デザイア様もその方がお喜びになられる。」

 そのガルムの言葉でブルックの腹は決まった。

「……ならば。」

 ブルックは剣を握り締めた。



「はぁ~。ここが獣王国? 俺のダンジョンみたいな風景だなぁ……。」

 獣王国は多種多様な獣人種のみで構成された文字通りの獣の王国。風景に関しては、レッドの故ダンジョンの1階部分のようなサバンナが広がっていた。
 そこで雨風避け用のテントがズラリと並んで建てられているのが目に入る。獣人族は遊牧民のように王国内を移動しているのではないかと推察出来る。

 一箇所に留まらず、誰が統治しているのかも不明な国に『王国』を付けるのはどうかと思ったが、そういう国の形もあるのだろうと心の中で言い聞かせて疑問を飲み込む。

「見ろ、あの要塞を。既にここにも魔の手がかかったと見て間違いない。」
「な、なんて禍々しい要塞なんだ……。」

 タコのようなよく分からない巨大生物が蠢く要塞。あの怪物が降りて来たらそれだけで世界の終焉を迎えそうだが、それを乗り物にしているということは魔神はそれ以上の実力者なのだろう。
 これだけで既に絶望感が押し寄せてくるのだが、魔導戦艦を確認した獣人たちがワラワラとテントから出て来たと同時に現れた強大な存在が更なる恐怖をレッドに植え付けた。

「……ド、ドラゴンだ。」

 望遠機能を駆使して魔力の鏡面に映し出されたその魔神はドラグロス=バルブロッソ。
 最高硬度の鱗に凶悪な爪と牙、強靭な肉体と竜の頭を持つドラゴンの頂点。
 獣王国は権力争いで戦争の絶えぬ土地。荒くれたちの大地を無敵の力であっという間に平定してしまった。

「……よりにもよって……ドラゴンかぁ……。」

 レッドは頭を抱えた。
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