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14章 帝国編
207、歴史的瞬間
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──話はほんの少し前に遡る。
ドラグロスとの話し合いを終えたレッドとグルガンは船へと戻った。
ルイベリアたちの出迎えもそこそこに、馴染みない顔がレッドとグルガンに話し掛ける。
「はじめまして。私はイアン=ローディウスと言うものだ。先の戦いは見事だった」
「あ、どうも。俺レッドっていいます。レッド=カーマイン」
手を胸に当てて自己紹介するレッド。グルガンは流れを無視して話し掛ける。
「目が覚めたのかローディウス卿。重傷だと思ったが、エデン教の聖職者には腕の良い回復術師が居るようだな」
グルガンがチラリとハルを見てニヤリと笑う。その視線に照れるハルをローディウスも見た。
「ああ、おかげで助かった。この礼は規則通り金銭で支払うつもりだ。今は手持ちが無いから国に戻ってからになるが……」
「あ、規則ってあれですよね? 確かエデン教が独自にやっている相談出張所の奴。相談は無料で一部有料の。有料の中に回復系のメニュー表があったような……」
レッドが口を挟む。正教側の人間ならともかく冒険者は基本チームで行動するため、村人や町民以外で出張所を使用するのは珍しいことだ。それゆえにローディウスは「詳しいな……」と一言呟く。
「うむ、それと同じよ。薬の調合や回復術を無償で行うことは固く禁じている。重症患者や状態異常による一刻を争うようなものも例外はない」
ローディウスは自身の体を差しながら払うものは払うと豪語する。グルガンは肩を竦めた。
「確かに無償など碌なことにならない。規則も守れぬ輩が面白がって大挙する姿が想像出来る。適切な処置が適切なタイミングで届かなければ患者は死んでしまうだろうし、回復術が魔力に依存していることを思えば、尚更無償など有り得んな」
「……魔族にも同じ様に回復術のルールがあるのか?」
「いや、回復術を覚える間に攻撃性能を高めるのが推奨されるくらい戦いに特化した考え方をしている。さらに魔族は結束を軽視している。力で牽制し合い強いものが上に立つ、腕力至上主義だ。ほとんどは」
「なるほど。卿はそうではないと?」
「結束は大いなる力だ。信用と信頼は繁栄と共存を生み、安心と安全の上で幸福の中、命を育む。……それが全てではないが、我はそうすることが正しいと思って戦ってきた。今後もその思いが変わることはない」
グルガンの揺るがぬ意志を聞いたローディウスは納得した様に頷いた。
「……素晴らしい考えだ。私もそれに倣いたい。……えっと……?」
「ゴライアス=大公=グルガン。グルガンで。ローディウス卿」
「グルガン……殿? アレクサンドロスではなかったのか?」
「よく言われる。ただアレクサンドロスは我が祖父だ」
「……どうやら我々は助け合えそうだな」
ローディウスの差し出した手を眺めてグルガンは悪戯っ子が笑う様なふざけた面持ちで鼻を鳴らした。
「聖王国のナンバー2が魔族と手を携える? 歴史的な瞬間だな」
2人は固く握手を交わす。その2人の間にルイベリアが入ってきた。
「それじゃ僕らは歴史の証人ってわけだ」
「あ、確かにそうなりますね」
「でしょ? でもさぁ、ここが時代の転換点なんて乙なものだけどさぁ、歴史的瞬間にするなら場所は選ばないと。そうだね……例えば大火の中で両方の陣営が睨みを利かせている時に握手を交わすとか、それとは真逆に輝くほど美しい王宮で肩を並べて宣言する瞬間とか? 2人ともカッコ良いから絵になりそうじゃない?」
「それは良いんじゃないですか? ちょうど聖王国に行こうと思ってましたし」
レッドの言葉にローディウスは口角を上げた。
「好都合だ。私は聖王国に一刻も早く戻らねばならない。陸路では諦めていたところだったからな。私も同乗させてもらう」
「どうぞどうぞ。ここで降ろすなんて非人道的なことをするつもりはないし、好きにしてよ。どうせ空き部屋も多いし。ねぇレッド?」
ルイベリアの質問にレッドは頷いた。
「好きな部屋を選んでください。快適かどうかは分かりませんけど……」
「魔動車で移動していたのだ。横になれる時点で十分快適だよ。乗船許可に感謝する」
ドラグロスとの話し合いを終えたレッドとグルガンは船へと戻った。
ルイベリアたちの出迎えもそこそこに、馴染みない顔がレッドとグルガンに話し掛ける。
「はじめまして。私はイアン=ローディウスと言うものだ。先の戦いは見事だった」
「あ、どうも。俺レッドっていいます。レッド=カーマイン」
手を胸に当てて自己紹介するレッド。グルガンは流れを無視して話し掛ける。
「目が覚めたのかローディウス卿。重傷だと思ったが、エデン教の聖職者には腕の良い回復術師が居るようだな」
グルガンがチラリとハルを見てニヤリと笑う。その視線に照れるハルをローディウスも見た。
「ああ、おかげで助かった。この礼は規則通り金銭で支払うつもりだ。今は手持ちが無いから国に戻ってからになるが……」
「あ、規則ってあれですよね? 確かエデン教が独自にやっている相談出張所の奴。相談は無料で一部有料の。有料の中に回復系のメニュー表があったような……」
レッドが口を挟む。正教側の人間ならともかく冒険者は基本チームで行動するため、村人や町民以外で出張所を使用するのは珍しいことだ。それゆえにローディウスは「詳しいな……」と一言呟く。
「うむ、それと同じよ。薬の調合や回復術を無償で行うことは固く禁じている。重症患者や状態異常による一刻を争うようなものも例外はない」
ローディウスは自身の体を差しながら払うものは払うと豪語する。グルガンは肩を竦めた。
「確かに無償など碌なことにならない。規則も守れぬ輩が面白がって大挙する姿が想像出来る。適切な処置が適切なタイミングで届かなければ患者は死んでしまうだろうし、回復術が魔力に依存していることを思えば、尚更無償など有り得んな」
「……魔族にも同じ様に回復術のルールがあるのか?」
「いや、回復術を覚える間に攻撃性能を高めるのが推奨されるくらい戦いに特化した考え方をしている。さらに魔族は結束を軽視している。力で牽制し合い強いものが上に立つ、腕力至上主義だ。ほとんどは」
「なるほど。卿はそうではないと?」
「結束は大いなる力だ。信用と信頼は繁栄と共存を生み、安心と安全の上で幸福の中、命を育む。……それが全てではないが、我はそうすることが正しいと思って戦ってきた。今後もその思いが変わることはない」
グルガンの揺るがぬ意志を聞いたローディウスは納得した様に頷いた。
「……素晴らしい考えだ。私もそれに倣いたい。……えっと……?」
「ゴライアス=大公=グルガン。グルガンで。ローディウス卿」
「グルガン……殿? アレクサンドロスではなかったのか?」
「よく言われる。ただアレクサンドロスは我が祖父だ」
「……どうやら我々は助け合えそうだな」
ローディウスの差し出した手を眺めてグルガンは悪戯っ子が笑う様なふざけた面持ちで鼻を鳴らした。
「聖王国のナンバー2が魔族と手を携える? 歴史的な瞬間だな」
2人は固く握手を交わす。その2人の間にルイベリアが入ってきた。
「それじゃ僕らは歴史の証人ってわけだ」
「あ、確かにそうなりますね」
「でしょ? でもさぁ、ここが時代の転換点なんて乙なものだけどさぁ、歴史的瞬間にするなら場所は選ばないと。そうだね……例えば大火の中で両方の陣営が睨みを利かせている時に握手を交わすとか、それとは真逆に輝くほど美しい王宮で肩を並べて宣言する瞬間とか? 2人ともカッコ良いから絵になりそうじゃない?」
「それは良いんじゃないですか? ちょうど聖王国に行こうと思ってましたし」
レッドの言葉にローディウスは口角を上げた。
「好都合だ。私は聖王国に一刻も早く戻らねばならない。陸路では諦めていたところだったからな。私も同乗させてもらう」
「どうぞどうぞ。ここで降ろすなんて非人道的なことをするつもりはないし、好きにしてよ。どうせ空き部屋も多いし。ねぇレッド?」
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