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15章 聖王国 前編
227、獣王国の立て直し
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聖王国から南に下り、砂漠の王国ジャガラーム、広大な荒地を越えた先にある国『獣王国』ではドラグロスによる統治で着々と平和になりつつあった。
長年に渡る獣人族同士の戦争。魔族同様に力こそが全て、縄張りを取り合って血で血を洗う頭目の取り合いは、ドラグロスという脅威の存在の出現によって収束する。
みんなが認める最強の力を持ち、逆らうことがアホらしく思える絶対者の風貌とカリスマを備えた最高の指導者。
獣王国統一を目指してひた走って来た10の部族の長たちは皆一様に頭を下げてドラグロスに与した。
強いのは当然として、その後すぐに行われたレッドとの凄まじい戦いを目にし、世界は広いと悟った彼らは機械の如く統率され、逐一ドラグロスの命令を仰ぐようになる。
ドラグロスは獣人族の中で統率者にして最強の切り札となったのだ。
「ケッ……アホらしいぜ」
獣人族の心の変化にいち早く気づいたドラグロスは戦うこと以外の仕事を割り振り、インフラ整備に取り掛からせた。
何故なら戦って勝つことばかりに終始していたせいか、水は汚れ、魔獣は食い荒らされ、家畜は風前の灯。実のなる木もほとんど取り尽くされ、田畑と思われる場所には雑草が生茂る。
戦いの中で破壊されるからと家はなく、巣穴や藁屋根を乗せた縦穴式住居で雨風を凌ぎ、貴重なタンパク源だと食物連鎖の最底辺層にもちょいちょい手を出していた。もう少し遅ければ不毛の大地となっていた可能性もあるのだ。
とりあえず一番上さえ取れば何とかなるとでも思っていたのか、何もかもが枯渇してから考えても遅いことには気づいてなかったようだ。
「ったく兵糧攻めかよ。ガキをどれだけ多く産めたところで育たなきゃ戦力にならねぇ。自分たちが勝つことばかりを考えてお互いが食い合えばこうなることは目に見えていたはずだがな……」
国はルールがあるから成り立つ。ドラグロスは呆れながらも獣人たちが手を取り合って水路を引こうとするのを眺めていた。穀物が取れるのは来年の話になるだろう。
「頭目っ!!」
獣人の1人が慌てながら走ってきた。
「どうしたぁ? 何か問題か?」
ドラグロスは獣人の背後を確認したり、周りを見ながら気配を探ったりしている。
しかし特に危険となりそうなものは見えない。ドラグロス基準では魔神レベルでないと危険とは呼べないが、一応ドラグロスが思う獣人レベルまで基準値を下げてみても問題なさそうだった。
肩を上下させながら息を整える獣人は、ドラグロスを見てニコリと笑った。
「違うっす! 実はこの国の名前を頭目の名前にしたいんすよね! その許しを貰いてぇんす!」
「はぁ?」
「いや、聞いてくださいよ! 俺らはずっとテッペン争いしてて国の体を為してなかったじゃないっすか! 頭目が俺らをまとめてくれたおかげで将来の展望が明るくなったんすから、それを後世に残していきたいんすよ!」
「俺は侵略者だぞ? ここで生まれたわけでもねぇし、力で言うこときかせてるだけっつーか……」
「だからっすよ! 力あるものについていくのは俺らの道理! さらに頭目は俺らのこと考えてこうして指導してくれている! 俺らは感激してるんすよ!!」
ドラグロスはボリボリと頭頂部を掻いてため息をつく。支配されて喜ぶなんてあり得ない。
しかしそれもそのはずで、半世紀前に獣王国の統治者が亡くなって以降、当時の幹部たちが我こそが1番と旗揚げしたせいで国が崩壊。おおよそ47年に渡る内戦がようやく終わりを告げたとあれば感謝こそすれ、恨むことなどあり得ない。
旗揚げした幹部の血筋からは多少文句が飛んだが、絶対敵わない統治者に逆らうことなど出来ない。それだけでなく、国民を傷つけたり、滅ぼすために動いていたりするなら反乱する理由もあるが、獣人族の未来まで考えて行動してくれている。今の獣王国にとっては必要不可欠な存在である。
戦いが嫌で他国に渡った獣人たちも故郷が再起するならまた戻って来てくれるだろう。昔の活気ある獣王国に返り咲く希望が湧くきっかけとなったのなら、それを成したドラグロスは侵略者ではなく救世主である。
「……ったくバカだなお前ら。良いぜ。俺の名前を使いてぇってんなら使えよ。ただし俺の名を使う以上は覚悟しろよ? 繁栄させなきゃ許さねぇからな」
「ありがとうございます!!」
獣人は頭を深々と下げて感謝を述べると踵を返して走り出す。「今日からこの国は獣王国ドラグロスだぁっ!!」と大声で喧伝しながら。お祭り騒ぎになっている獣人たちを横目にドラグロスは苦笑いを浮かべる。
(……俺が離れたらもって2年。いや、半年か?)
ずっとは面倒を見られないし、獣人たちの性質からドラグロスがこの世界から離れた近い将来また内紛が起こるのは目に見えている。獣人たちから日常的に命を狙われても大丈夫な実力を持つような化け物でも居ない限り維持することは出来ないだろう。
(平和を保つならあいつらくらいしか考えられねぇ。んで、獣の顔を持つゴライアスが一番適任か。あいつなら獣王国をこの世界最大国家まで育て上げることが可能だろうぜ。俺の名前を使う以上はあいつを後釜に据えてぇが……野郎も野郎で忙しそうだよなぁ。どうすっかなぁ……)
チョロチョロ走り回る獣人を見ながら考えに耽っていると、悩む自分が面白く感じて来た。
(へっ……俺って奴はどうも危機感ってのが足りねぇ。デザイアがまだ居るってのに何を浮かれてやがる。あいつをぶっ殺さなきゃ真の意味での平和は訪れねぇ……だが今までにないこの余裕。っぱ、あいつらの影響だよなぁ)
ドラグロスは希望を思い出しながらニヤニヤと笑ってしまう。ずいぶん前に萎れた報復の感情がむくむくと湧き上がってくる。
「……俺の勘が正しけりゃあよぉレッド……お前が……」
──ゾクッ
突如背筋に悪寒が走る。
それはドラグロスだけではなかったようで、見える範囲内だけでも獣人たちは仕事の手を止めてキョロキョロと負の気配を探っている。この気配の正体を知っていたドラグロスは苛々とした表情で呟いた。
「……モロクかよ」
その言葉に返答するようにドラグロスの背後にズンッと巨躯が着地した。ぬぅっと立ち上がった姿はドラグロスよりも大きく見えた。
「ふんっ……精が出るなドラグロス。既に支配が完了しているようで何よりだ」
「お前が出てくるとはな……珍しいじゃねぇか。デザイアの差し金か?」
「今回は吾のわがままと言ったところ。デザイア様がお許しになったとはいえ、今後は少し自重するところも増えよう。だからこそ今回の件も迅速に終わらせたい」
「へ、そうかよ。で? 何の用だ?」
モロクはギョロギョロと目だけで獣王国の様子を確認する。獣人たちは突然の化け物の登場にビクビクしながらもドラグロスの知り合いだと推察して恐る恐る仕事を再開する。
「殺風景な……しかし雑草の生え具合から短い期間にこのような景色になったわけではないな。数十年という長い期間放置された結果か……」
「あぁ? そんなことが分かんのか? こりゃ、意外だなぁおい」
「水路のための穴掘り?……だが妙だ。破壊された痕跡がない。新しいところに水を引くつもりか?」
「何だ何だ? 元の世界じゃ破壊しか能のないお山の大将だった野郎が支配にでも興味が沸いたってのか?」
「支配などどうでも良い。ただ……」
ぐるっと見渡して広範囲の破壊痕を見つける。
「……あれだけか?」
「ん? 何がだ?」
モロクはゆっくりと歩き出し、身を屈めて破壊痕を確認した。
「……うぬはガルムが倒れたことは知っておろう。世界を破壊し尽くすほどの力を出し切り……破れ去った」
肩を落とし、項垂れるモロク。
「ケッ……ガルムの死にテメーをみたか? いつになく情けねぇ姿だな」
ドラグロスの煽りに首を少しだけ動かす。
「ルオドスタ帝国と呼ばれる場所を空から確認した。あれは……見事な破壊だった。吾も一度は浮遊要塞の破壊を夢見たものだが、まさか先越されるとは思いも寄らん」
「はっはっは! マジか! あいつあれを壊したのかよ!……あ、悪い。で? それがどうしたよ?」
「分からぬか。吾が言いたいことが……」
グッと体を伸ばし、立ち上がると肩越しにギラリと目を光らせた。
「うぬもまた本気を出したはず。うぬほどの力を持つ者が何故局地的な破壊で済むのか……」
レッドとの戦いを思い出してドラグロスはバツの悪そうな顔をする。
「あ……ああ、それな。こいつらをビビらすのにちょっとな……」
──ゴドンッ
モロクは思いっきり足を踏みしめて地面を踏み抜く。あまりの勢いに衝撃波が突風となって吹きすさび、獣人たちも襲う。
「吾が分からぬと思っているのか? 世界を拳で制覇したこの吾に……うぬが踏み抜いた地面、獣人たちの足跡、そして……人間の足跡か。獣人たちには問題なく勝利したようだが、この人間との戦いは消化不良といったところか……」
「マジかよ。そんなの分かんのか? いや、分かるはずねぇ。戦いを見てもねぇくせに……」
──ドンッ
モロクは一瞬にしてドラグロスの眼前に立ち、直後岩のように巨大な拳でドラグロスの頬をぶん殴って地面へと叩き潰した。
──ボゴンッ
顔が埋まるほどの一撃に対応出来なかったドラグロスは顔の土を振るいながら立ち上がる。
「……痛ぇなぁ何すんだコラ」
ギラつく瞳にモロクは訝しんだ。
「うぬは……まさか負けたのか?」
「……気持ち悪い野郎だな。殺すぞこの野郎」
モロクとドラグロスは睨み合う。
魔神同士の戦いが始まろうとしていた。
長年に渡る獣人族同士の戦争。魔族同様に力こそが全て、縄張りを取り合って血で血を洗う頭目の取り合いは、ドラグロスという脅威の存在の出現によって収束する。
みんなが認める最強の力を持ち、逆らうことがアホらしく思える絶対者の風貌とカリスマを備えた最高の指導者。
獣王国統一を目指してひた走って来た10の部族の長たちは皆一様に頭を下げてドラグロスに与した。
強いのは当然として、その後すぐに行われたレッドとの凄まじい戦いを目にし、世界は広いと悟った彼らは機械の如く統率され、逐一ドラグロスの命令を仰ぐようになる。
ドラグロスは獣人族の中で統率者にして最強の切り札となったのだ。
「ケッ……アホらしいぜ」
獣人族の心の変化にいち早く気づいたドラグロスは戦うこと以外の仕事を割り振り、インフラ整備に取り掛からせた。
何故なら戦って勝つことばかりに終始していたせいか、水は汚れ、魔獣は食い荒らされ、家畜は風前の灯。実のなる木もほとんど取り尽くされ、田畑と思われる場所には雑草が生茂る。
戦いの中で破壊されるからと家はなく、巣穴や藁屋根を乗せた縦穴式住居で雨風を凌ぎ、貴重なタンパク源だと食物連鎖の最底辺層にもちょいちょい手を出していた。もう少し遅ければ不毛の大地となっていた可能性もあるのだ。
とりあえず一番上さえ取れば何とかなるとでも思っていたのか、何もかもが枯渇してから考えても遅いことには気づいてなかったようだ。
「ったく兵糧攻めかよ。ガキをどれだけ多く産めたところで育たなきゃ戦力にならねぇ。自分たちが勝つことばかりを考えてお互いが食い合えばこうなることは目に見えていたはずだがな……」
国はルールがあるから成り立つ。ドラグロスは呆れながらも獣人たちが手を取り合って水路を引こうとするのを眺めていた。穀物が取れるのは来年の話になるだろう。
「頭目っ!!」
獣人の1人が慌てながら走ってきた。
「どうしたぁ? 何か問題か?」
ドラグロスは獣人の背後を確認したり、周りを見ながら気配を探ったりしている。
しかし特に危険となりそうなものは見えない。ドラグロス基準では魔神レベルでないと危険とは呼べないが、一応ドラグロスが思う獣人レベルまで基準値を下げてみても問題なさそうだった。
肩を上下させながら息を整える獣人は、ドラグロスを見てニコリと笑った。
「違うっす! 実はこの国の名前を頭目の名前にしたいんすよね! その許しを貰いてぇんす!」
「はぁ?」
「いや、聞いてくださいよ! 俺らはずっとテッペン争いしてて国の体を為してなかったじゃないっすか! 頭目が俺らをまとめてくれたおかげで将来の展望が明るくなったんすから、それを後世に残していきたいんすよ!」
「俺は侵略者だぞ? ここで生まれたわけでもねぇし、力で言うこときかせてるだけっつーか……」
「だからっすよ! 力あるものについていくのは俺らの道理! さらに頭目は俺らのこと考えてこうして指導してくれている! 俺らは感激してるんすよ!!」
ドラグロスはボリボリと頭頂部を掻いてため息をつく。支配されて喜ぶなんてあり得ない。
しかしそれもそのはずで、半世紀前に獣王国の統治者が亡くなって以降、当時の幹部たちが我こそが1番と旗揚げしたせいで国が崩壊。おおよそ47年に渡る内戦がようやく終わりを告げたとあれば感謝こそすれ、恨むことなどあり得ない。
旗揚げした幹部の血筋からは多少文句が飛んだが、絶対敵わない統治者に逆らうことなど出来ない。それだけでなく、国民を傷つけたり、滅ぼすために動いていたりするなら反乱する理由もあるが、獣人族の未来まで考えて行動してくれている。今の獣王国にとっては必要不可欠な存在である。
戦いが嫌で他国に渡った獣人たちも故郷が再起するならまた戻って来てくれるだろう。昔の活気ある獣王国に返り咲く希望が湧くきっかけとなったのなら、それを成したドラグロスは侵略者ではなく救世主である。
「……ったくバカだなお前ら。良いぜ。俺の名前を使いてぇってんなら使えよ。ただし俺の名を使う以上は覚悟しろよ? 繁栄させなきゃ許さねぇからな」
「ありがとうございます!!」
獣人は頭を深々と下げて感謝を述べると踵を返して走り出す。「今日からこの国は獣王国ドラグロスだぁっ!!」と大声で喧伝しながら。お祭り騒ぎになっている獣人たちを横目にドラグロスは苦笑いを浮かべる。
(……俺が離れたらもって2年。いや、半年か?)
ずっとは面倒を見られないし、獣人たちの性質からドラグロスがこの世界から離れた近い将来また内紛が起こるのは目に見えている。獣人たちから日常的に命を狙われても大丈夫な実力を持つような化け物でも居ない限り維持することは出来ないだろう。
(平和を保つならあいつらくらいしか考えられねぇ。んで、獣の顔を持つゴライアスが一番適任か。あいつなら獣王国をこの世界最大国家まで育て上げることが可能だろうぜ。俺の名前を使う以上はあいつを後釜に据えてぇが……野郎も野郎で忙しそうだよなぁ。どうすっかなぁ……)
チョロチョロ走り回る獣人を見ながら考えに耽っていると、悩む自分が面白く感じて来た。
(へっ……俺って奴はどうも危機感ってのが足りねぇ。デザイアがまだ居るってのに何を浮かれてやがる。あいつをぶっ殺さなきゃ真の意味での平和は訪れねぇ……だが今までにないこの余裕。っぱ、あいつらの影響だよなぁ)
ドラグロスは希望を思い出しながらニヤニヤと笑ってしまう。ずいぶん前に萎れた報復の感情がむくむくと湧き上がってくる。
「……俺の勘が正しけりゃあよぉレッド……お前が……」
──ゾクッ
突如背筋に悪寒が走る。
それはドラグロスだけではなかったようで、見える範囲内だけでも獣人たちは仕事の手を止めてキョロキョロと負の気配を探っている。この気配の正体を知っていたドラグロスは苛々とした表情で呟いた。
「……モロクかよ」
その言葉に返答するようにドラグロスの背後にズンッと巨躯が着地した。ぬぅっと立ち上がった姿はドラグロスよりも大きく見えた。
「ふんっ……精が出るなドラグロス。既に支配が完了しているようで何よりだ」
「お前が出てくるとはな……珍しいじゃねぇか。デザイアの差し金か?」
「今回は吾のわがままと言ったところ。デザイア様がお許しになったとはいえ、今後は少し自重するところも増えよう。だからこそ今回の件も迅速に終わらせたい」
「へ、そうかよ。で? 何の用だ?」
モロクはギョロギョロと目だけで獣王国の様子を確認する。獣人たちは突然の化け物の登場にビクビクしながらもドラグロスの知り合いだと推察して恐る恐る仕事を再開する。
「殺風景な……しかし雑草の生え具合から短い期間にこのような景色になったわけではないな。数十年という長い期間放置された結果か……」
「あぁ? そんなことが分かんのか? こりゃ、意外だなぁおい」
「水路のための穴掘り?……だが妙だ。破壊された痕跡がない。新しいところに水を引くつもりか?」
「何だ何だ? 元の世界じゃ破壊しか能のないお山の大将だった野郎が支配にでも興味が沸いたってのか?」
「支配などどうでも良い。ただ……」
ぐるっと見渡して広範囲の破壊痕を見つける。
「……あれだけか?」
「ん? 何がだ?」
モロクはゆっくりと歩き出し、身を屈めて破壊痕を確認した。
「……うぬはガルムが倒れたことは知っておろう。世界を破壊し尽くすほどの力を出し切り……破れ去った」
肩を落とし、項垂れるモロク。
「ケッ……ガルムの死にテメーをみたか? いつになく情けねぇ姿だな」
ドラグロスの煽りに首を少しだけ動かす。
「ルオドスタ帝国と呼ばれる場所を空から確認した。あれは……見事な破壊だった。吾も一度は浮遊要塞の破壊を夢見たものだが、まさか先越されるとは思いも寄らん」
「はっはっは! マジか! あいつあれを壊したのかよ!……あ、悪い。で? それがどうしたよ?」
「分からぬか。吾が言いたいことが……」
グッと体を伸ばし、立ち上がると肩越しにギラリと目を光らせた。
「うぬもまた本気を出したはず。うぬほどの力を持つ者が何故局地的な破壊で済むのか……」
レッドとの戦いを思い出してドラグロスはバツの悪そうな顔をする。
「あ……ああ、それな。こいつらをビビらすのにちょっとな……」
──ゴドンッ
モロクは思いっきり足を踏みしめて地面を踏み抜く。あまりの勢いに衝撃波が突風となって吹きすさび、獣人たちも襲う。
「吾が分からぬと思っているのか? 世界を拳で制覇したこの吾に……うぬが踏み抜いた地面、獣人たちの足跡、そして……人間の足跡か。獣人たちには問題なく勝利したようだが、この人間との戦いは消化不良といったところか……」
「マジかよ。そんなの分かんのか? いや、分かるはずねぇ。戦いを見てもねぇくせに……」
──ドンッ
モロクは一瞬にしてドラグロスの眼前に立ち、直後岩のように巨大な拳でドラグロスの頬をぶん殴って地面へと叩き潰した。
──ボゴンッ
顔が埋まるほどの一撃に対応出来なかったドラグロスは顔の土を振るいながら立ち上がる。
「……痛ぇなぁ何すんだコラ」
ギラつく瞳にモロクは訝しんだ。
「うぬは……まさか負けたのか?」
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