「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

文字の大きさ
228 / 342
15章 聖王国 前編

228、私も行く

しおりを挟む
 魔神たちの諍いの裏では大きな動きはなく、会合が終わったレッドは浮遊戦艦に戻る。
 あんまり頭も体も使っていないのでそれほど疲れていないはずだが、終始フィアゼスからの殺気を感じていたため変な気疲れを感じていた。

「……嫌われてるよなぁ……俺」

 アリーシャが絡んできた時にフィアゼスの嫉妬が爆発していることは何となく分かっていたが、アリーシャの反応は好意からではなく珍しいものに対する興味に他ならない。
 目を覆う布が特別な力を発揮して周りを見せているのか、魔眼の類で見えてはいけないものまで見えるため封印しているのかは定かではないが、何故かレッドだけ見えないことを不思議がって興味をそそられたようなのだ。
 なのでフィアゼスのレッドに対する嫉妬心は誤解だと考えていた。
 そのことで個人的に話し合おうかとも思ったが、グルガンから「やめておいた方が良い」とやんわり否定され、それでもフィアゼスに話しかけようとこっそり近付いても敵意を向けられる。人との会話が苦手なためにどもってしまったりもしょっちゅうなので、その部分で苛つかせているのもマイナスポイントだ。
 そんな中にあってもアリーシャは面白がってレッドの手をにぎにぎしてくるのでフィアゼスからの殺意は留まることを知らない。

(……しかもジャガラームに行くから誤解を解くような時間もないし、帰ってきてすぐヴァイザーと戦うことになったら連携も取れない。このまま放置してたら、いざヴァイザー戦の時に俺の背中を斬りつけてくるかもしれないよなぁ……)

 不安が不安を呼ぶ。
 仲間と連携して戦うことが最も効率が良く、勝率も高い。
 しかし獅子身中の虫を抱えながら背後を任せるのは自殺も同義。何とか状況を変えたいところだが、フィアゼスの拒絶っぷりは発狂のレベルに達している。
 どうにも出来ないことを心で嘆きつつトボトボと自室に向かって歩いていると背後から呼び止められる。

「レッド!」

 ビクッと体を跳ねさせて恐る恐る背後を確認する。そこには街に繰り出して散策していたシルニカたちの姿があった。

「な、なんだ、シルニカさんたちか……」
「なぁにビクビクしてんのよ。なんかあった?」
「い、いえ別に……何か御用ですか?」
「よそよそしいなぁもう。敬語なんかやめなさいっ! 同業者でしょっ!」
「えぇ……急にそんなこと言われても……」

 レッドは後頭部を掻きながら困惑する。シルニカはふんっと鼻を鳴らして剣をかざした。

「……え?! シルニカさんもしかして魔法剣士マジックセイバー転職ジョブチェンジですか? 凄ぇ……っ」
「全然違うわ。これはあんたのために買ったロングソードよ。今のそれ切っ先折れてるから新しい武器が必要でしょ?」
「あ……え? お、俺の……ため? ありがとうござ……あ、幾らでした?」
「いいわよお金なんて。今回だけ特別だから受け取んなさいよ」
「へぇっ?! いや、そんなわけには…… 」
「いいからっ! ほらっ!」

 シルニカは恥ずかしそうにぐっと剣を突き出す。後方に居るハルやコニたちはニヤニヤしながらシルニカとレッドを見ている。
 レッドはシルニカの気配りに感激して恭しく受け取った。
 シルニカが腕を組んで高飛車な態度を取りつつ内心嬉しそうにしているとハルたちが横入りして来た。

「んふふっ! レッドも隅におけないねーっ!」
「よかったじゃーん! 私2人を応援しちゃうよーっ!」

 キャイキャイと囃し立てる4人。シルニカは「からかわないでよっ!」とぷんぷん怒りだす。

「でもさー。ここの物価高すぎ問題。マジなんも買えなかったんだけど」
「なんか超かわいいアクセとかあったのにさぁ。あれで私たちの大陸の10倍はぼり過ぎってゆーか。ブランド? とか言ってたよね~。何にそんな付加価値があるってのよ~」
「だよねー。それだって本当は魔剣を買おうとしてたんだよ? でも手持ちじゃ買えないからロングソードにしたんだよね」
「余計なこと言わないでよ! もーっ!!」

 シルニカが顔を真っ赤にして泣きそうになったが、レッドはロングソードを眺めて微笑んだ。

「俺はこのロングソードで良かったと思ってる。魔剣よりもずっと嬉しいよ。ありがとうシルニカさん」

 握り込んで大事そうに抱えるレッドにシルニカの頬緩む。

「ふ、ふんっ。まぁね。てゆーか『さん』も要らないから。たく、しょうがない奴よね。あんたってば……」
「今度ジャガラームって国に行かなきゃいけなくて困ってたんですよ。本当助かりました」
「また敬語に戻ってる……ってジャガラーム? すぐ飛ぶの?」
「あ、いや。戦艦じゃ行きませ……い、行かないよ。ヴァイザーが聖王国の玉座を占拠しているのが分かったから、これ以上目立つのは避けたいとグルガンさんが……だから俺と案内人とでジャガラームまで歩いて行って来ます」
「ふーん。いつ?」
「それはまだ。でも割とすぐだと思う……かな?」

 レッドが首を傾げながら折れた方のロングソードを背負い、シルニカからのプレゼントを腰に下げた。その一連の動作を見ていたシルニカは腕を組んで胸を張る。

「私も行くわ。そのジャガラームとかいう国」

 シルニカの言葉にハルたちもレッドも目を丸くする。

「……え? 正気?」

 驚きのあまり漏れた声は誰からというわけでなく今この場にいる全員の総意。実力は全く伴っていない。しかしシルニカの決意は固かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

キメラスキルオンライン 【設定集】

百々 五十六
SF
キメラスキルオンラインの設定や、構想などを保存しておくための設定集。 設定を考えたなら、それを保存しておく必要がある。 ここはそういう場だ。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

処理中です...