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16章 聖王国 後編
234、羨望と期待
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湯あみから戻ったレッドはベッドの位置を確認する。シルニカは既に二段ベッドの上で熟睡してしまっているようで、2人は下のベッドで向かい合うように座っていた。
「あ、お帰りなさーい」
「湯加減はどうでしたか?」
迎え入れられるとあったかい気持ちになったが、そんなことよりも2人の寝巻が薄い肌着であることに気付いて目を逸らす。
「う、うん。ちょっとぬるいくらいだったけど、この国では丁度良かったと思う」
「それは何よりです。あ、レッドさんも上を使ってください。私たちは下で寝ますので」
リディアは上の段を指差す。上に行くのは悪い気がしたが、2人は仲が良さそうなので隣同士の方が気兼ねが無さそうだと感じ了承する。
特に起きている理由もないので早速寝ようかと思ったが、ティオに止められた。
「寝る前に少し話しませんか?」
断る理由もないが、目のやり場には困る。レッドは床に座り、俯き加減に頷いた。
といっても何を話す気なのだろうか。シルニカに運転を頼み、車内でいろいろ話をすることになったのでこれ以上のことなど特にないと感じていた。
この大陸ではすっかり廃れてしまった冒険者制度のことやダンジョンの仕組み。魔族との邂逅から今の仲に深まるまでの話。他の仲間たちや敵の正体などさまざま。
レッドのつたない伝え方のせいでどれだけ話を理解してもらえているか分からなかったが、やはりこれ以上は答えられることなど何も無さそうだ。
「レッドさんは彼女さんとかいるの?」
「……へ?」
ティオはニコニコと楽しそうに質問を投げかける。
「い、居ないよ。俺は食っていくだけで精一杯だし……」
「え~? アリーシャさんとあんなに良い雰囲気だったのに? レッドさんってすっごく頼りにされてるし、居そうに感じたんだけどなぁ~」
「そ、そんなことはないよ。ごく最近運よく認められてきたからそういう風に見えるかもだけど、ちょっと前までは全然。チームから追い出されて田舎に引っ込んでたくらいなんだから……」
「えっ?! 追放!?」
「あ……」
口が滑ったと唇を口内に隠す。「やっぱそういうのあるんだ~」とティオとリディアは目を丸くして2人で頷き合っている。
「ってことは一時の間は1人で冒険なさってたんですね」
「……う、うん」
「不便とかなかったんですか?」
「えっと、ダンジョンに1人ではいけないことが不便だったかなって……外の仕事はどうしても報酬安かったし……」
昔を思い出したらみじめになって泣きそうな思いだが、もう過去のことだと自分を慰める。
「だからダンジョンにこっそり入ってたんですね?」
「え? うん。でもほとんど暇つぶしみたいなものだよ。正式な依頼を受注しないと報酬に繋がらないから。……ダンジョンでの薬草採取が唯一の楽しみだったなぁ……」
「うぅ~ん」
気が滅入りそうになる話にティオは微妙な顔で唸る。それに気づいたレッドは慌てて質問を振った。
「あ、えっと……俺の話なんかどうでも良くって。ふ、2人の話を聞きたいな。そんなに若いのにどうやって教皇直轄なんてなれたの?」
「選別です」
「選別? 功績や成績とかで選ばれたってこと?」
「近いですけど少し違います。ガブリエル様は魔力識別眼と呼ばれる眼をお持ちでして、その眼で潜在能力の高い7人をお選びになったのが私たち七元徳です」
「へ~っ。伸び代で選ばれてるってことなんだ。俺も文献でしか見たことないけど魔眼って奴でしょ? 凄いなぁ。さっきのお医者からもありがたがられてたし由緒ある部隊なんだろうなぁ」
「はは……それがそういうことも無くてですね。元々は遥か昔に創設された部隊だったようですが、どういうわけか形骸化していて忘れ去られていたようでして……。ガブリエル様が今の世に復活させたのです」
箔付けか実績作りか、それとも魔眼を活用して最強部隊を組みたくなったか。どうとでも取れるが、レッドにはいまいちピンとこない。
それに気付いたティオはリディアの説明に付け足すように口を開く。
「要するに戦力増強の一環で、ルオドスタ帝国の剣神や八剣聖。龍球王国アマツカグラの四臣創王のような目立った武力の保有を目指して編成し直された聖王国の切り札ってことです」
ふふんっと胸を張るティオ。自分で切り札と豪語出来る自信たっぷりのティオにレッドは羨望の眼差しを向ける。選ばれること自体が栄誉なことなのはよく分かったが、これだけ自信を持てるのは普通に羨ましかった。
「明日はその実力が見えるってことだ。楽しみにしてるよ」
「それはこっちのセリフですよっ」
ティオは床に座るレッドにズイッと詰め寄る。
「ローディウス卿が入れ込むくらいの人だもん! 絶対強いですよね! 楽しみです!」
「えぇ……期待されるのは嬉しいけどプレッシャーだな……」
後頭部を触りながら困るが、リディアはレッドに優しい微笑みを向けた。
「大丈夫ですよ。私たちも頑張りますので」
「う……うん」
レッドはリディアの笑顔に絆され、肩の荷が下りた気になった。
「……夜も更けてきましたし、そろそろ休みましょうか?」
「さんせい~」
ふわふわとした空気の中、リディアの提案を承諾して3人は自分のベッドに潜り込む。
年下の女の子たちにリードされる形で始まったこの遠征。少しでも年上としての威厳を出さないといけないなと思いつつも何も出来ない不甲斐なさにレッドは辟易していた。
しかしダンジョンは冒険者の領域。今度こそ活躍してみせると心に誓い目を閉じたのだった。
「あ、お帰りなさーい」
「湯加減はどうでしたか?」
迎え入れられるとあったかい気持ちになったが、そんなことよりも2人の寝巻が薄い肌着であることに気付いて目を逸らす。
「う、うん。ちょっとぬるいくらいだったけど、この国では丁度良かったと思う」
「それは何よりです。あ、レッドさんも上を使ってください。私たちは下で寝ますので」
リディアは上の段を指差す。上に行くのは悪い気がしたが、2人は仲が良さそうなので隣同士の方が気兼ねが無さそうだと感じ了承する。
特に起きている理由もないので早速寝ようかと思ったが、ティオに止められた。
「寝る前に少し話しませんか?」
断る理由もないが、目のやり場には困る。レッドは床に座り、俯き加減に頷いた。
といっても何を話す気なのだろうか。シルニカに運転を頼み、車内でいろいろ話をすることになったのでこれ以上のことなど特にないと感じていた。
この大陸ではすっかり廃れてしまった冒険者制度のことやダンジョンの仕組み。魔族との邂逅から今の仲に深まるまでの話。他の仲間たちや敵の正体などさまざま。
レッドのつたない伝え方のせいでどれだけ話を理解してもらえているか分からなかったが、やはりこれ以上は答えられることなど何も無さそうだ。
「レッドさんは彼女さんとかいるの?」
「……へ?」
ティオはニコニコと楽しそうに質問を投げかける。
「い、居ないよ。俺は食っていくだけで精一杯だし……」
「え~? アリーシャさんとあんなに良い雰囲気だったのに? レッドさんってすっごく頼りにされてるし、居そうに感じたんだけどなぁ~」
「そ、そんなことはないよ。ごく最近運よく認められてきたからそういう風に見えるかもだけど、ちょっと前までは全然。チームから追い出されて田舎に引っ込んでたくらいなんだから……」
「えっ?! 追放!?」
「あ……」
口が滑ったと唇を口内に隠す。「やっぱそういうのあるんだ~」とティオとリディアは目を丸くして2人で頷き合っている。
「ってことは一時の間は1人で冒険なさってたんですね」
「……う、うん」
「不便とかなかったんですか?」
「えっと、ダンジョンに1人ではいけないことが不便だったかなって……外の仕事はどうしても報酬安かったし……」
昔を思い出したらみじめになって泣きそうな思いだが、もう過去のことだと自分を慰める。
「だからダンジョンにこっそり入ってたんですね?」
「え? うん。でもほとんど暇つぶしみたいなものだよ。正式な依頼を受注しないと報酬に繋がらないから。……ダンジョンでの薬草採取が唯一の楽しみだったなぁ……」
「うぅ~ん」
気が滅入りそうになる話にティオは微妙な顔で唸る。それに気づいたレッドは慌てて質問を振った。
「あ、えっと……俺の話なんかどうでも良くって。ふ、2人の話を聞きたいな。そんなに若いのにどうやって教皇直轄なんてなれたの?」
「選別です」
「選別? 功績や成績とかで選ばれたってこと?」
「近いですけど少し違います。ガブリエル様は魔力識別眼と呼ばれる眼をお持ちでして、その眼で潜在能力の高い7人をお選びになったのが私たち七元徳です」
「へ~っ。伸び代で選ばれてるってことなんだ。俺も文献でしか見たことないけど魔眼って奴でしょ? 凄いなぁ。さっきのお医者からもありがたがられてたし由緒ある部隊なんだろうなぁ」
「はは……それがそういうことも無くてですね。元々は遥か昔に創設された部隊だったようですが、どういうわけか形骸化していて忘れ去られていたようでして……。ガブリエル様が今の世に復活させたのです」
箔付けか実績作りか、それとも魔眼を活用して最強部隊を組みたくなったか。どうとでも取れるが、レッドにはいまいちピンとこない。
それに気付いたティオはリディアの説明に付け足すように口を開く。
「要するに戦力増強の一環で、ルオドスタ帝国の剣神や八剣聖。龍球王国アマツカグラの四臣創王のような目立った武力の保有を目指して編成し直された聖王国の切り札ってことです」
ふふんっと胸を張るティオ。自分で切り札と豪語出来る自信たっぷりのティオにレッドは羨望の眼差しを向ける。選ばれること自体が栄誉なことなのはよく分かったが、これだけ自信を持てるのは普通に羨ましかった。
「明日はその実力が見えるってことだ。楽しみにしてるよ」
「それはこっちのセリフですよっ」
ティオは床に座るレッドにズイッと詰め寄る。
「ローディウス卿が入れ込むくらいの人だもん! 絶対強いですよね! 楽しみです!」
「えぇ……期待されるのは嬉しいけどプレッシャーだな……」
後頭部を触りながら困るが、リディアはレッドに優しい微笑みを向けた。
「大丈夫ですよ。私たちも頑張りますので」
「う……うん」
レッドはリディアの笑顔に絆され、肩の荷が下りた気になった。
「……夜も更けてきましたし、そろそろ休みましょうか?」
「さんせい~」
ふわふわとした空気の中、リディアの提案を承諾して3人は自分のベッドに潜り込む。
年下の女の子たちにリードされる形で始まったこの遠征。少しでも年上としての威厳を出さないといけないなと思いつつも何も出来ない不甲斐なさにレッドは辟易していた。
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