「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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16章 聖王国 後編

235、様子見

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 アノルテラブル大陸が深刻な危機に瀕している中にあって、唯一デザイア軍の的から外れた大国が存在する。
 アノルテラブル大陸の南西に位置する広大な国で、その名に恥じず著名な魔法使いマジックキャスターを数多く輩出してきた魔法使いマジックキャスターの聖地。

 教育熱心な国であるため名だたる学校が各地域に建設され、国民全体の教育水準も他国に比べると高く、最先端の魔術理論を確立している。
 魔法研究においては他の追随を許さない魔法使いマジックキャスター魔法使いマジックキャスターによる魔法使いマジックキャスターのための国。
 それがここ『魔導大国アイズオブトゥルース』である。

 魔法使いマジックキャスターは強力な魔法から繊細な魔法まで幅広く使用出来、1人多くいるだけでミリタリーバランスが崩れるほど重要な存在。有用で有能な魔法使いマジックキャスターの育成が出来る貴重な国であり、魔法技術の粋を結集させた大国であるがゆえにデザイア軍の襲撃を受ければ世界規模の損失となるのは明らか。

 このことからも真っ先に自国が狙われるだろうと考えた魔導大国の上層部は最上級の守りを固めるため、各地域の領主である『魔導星スターズ』に協力を要請。厳戒態勢を敷き、防護魔法を幾重にも掛けた魔障壁を展開。外敵からの攻撃に備え、過剰なほどに万全の態勢を見せつけた。

 だが蓋を開けてみれば浮遊要塞が来ないばかりか、ちょっかいの一つも掛けられない。最も弱い国である忘れられた大陸以上に蚊帳の外にされていた。

 この結果に魔導星スターズは上層部に失笑。憶病者のレッテルを張り、厳戒態勢は即時解除された。
 思った以上に何もなかったことが災いし、これ以上無様を晒すことは失脚に繋がりかねないと悟り、いろいろ八つ当たりしながらも閉鎖的な情報収集に努める。
 世界各国に建てた魔導局から有益な情報を吸い上げ、異世界の侵略者に対する防衛策を準備していた。

 情報を集める内に最初に感じた危機感と厳戒態勢による防衛が間違いでなかったことが確認出来、それどころか完全完璧だと思われた防衛でも足りないだろうと推認された。

「まさに世界滅亡の危機といって過言ではない事態……じゃな」

 磨き上げられた大理石、天井は高く机と椅子以外を置かないようにした殺風景の広い部屋。ただ天井付近にはステンドグラスが吊るされているかのように小さな鉱石の粒が、キラキラと光を放ちながら旋回して部屋を照らしている。
 その一部がふよふよと机を囲む4人の老齢の男女に近付き、目の前に映像を映し出す。その映像を見る目は猛禽類のようにギラギラと輝き、その顔は老獪という言葉がピタリと当てはまる。

 最年長で禿げ上がった頭が目立つな男性『地賢師』サルモン=クラウスト=グリーザ。

 高身長で鼻が高く、彫りの深いナイスミドル『水賢師』ダルクフ=クラウスト=マドーラ

 筋骨隆々、亜麻色の髪に眼鏡を掛けた男性『火賢師』ジェダ=クラウスト=メルフロント

 長い金髪と右目の泣きボクロが特徴的な女性『風賢師』ルタ=クラウスト=オル=メフューム

 4人は国の管理、運営の決定権を持つ最高位の役職『四賢冠リゾーマタ』に属し、俗に上層部と呼ばれ、国の繁栄と拡大に尽力している。魔法使いマジックキャスターの最高位階であり、他と差をつけるため、名に『クラウスト』を冠することを義務付けられている。
 魔法の腕は凄まじいものの、管理、運営の手腕はそこそこ。おおよそ完璧とは程遠いが、自由意思を尊重する国なので情勢は温厚且つおおらか。地域ごとのもめごとや問題は魔導星スターズにすべて丸投げしているような状況だ。
 魔導星スターズ同士の抗争に発展するような事柄や反乱軍の台頭、はたまた他国の侵略行為など、自らの地位が危ぶまれる時や国家の危機にのみ重い腰を上げる。

 一部はそういった体制にかなりの不満や不信感を持っていたりもするが、四賢冠リゾーマタ大魔導師グランドマスターという最高位の称号を持つ魔法使いマジックキャスターを超えた魔法使いマジックキャスター。単純な実力も戦略も最上級であるため、逆らうような間抜けはいない。

 そんな到達者たちがデザイアの侵攻に恐怖し、世界滅亡すら展望に入っていることを嘆く。ポツリと呟いたサルモンの嘆きは若干大げさにも捉えられるが確信をついていた。

「この世界に現れた浮島の総数は6つ。我らを除く大国にそれぞれ1つずつ受け持つように上空に留まっているみたいだよぉ。この国が狙われなかったのは不幸中の幸いと言ったところかねぇ……」

 ダルクフは顎を撫でながらのんびりとした口調で映像を眺める。そこに映し出されていたのは地図と遠くから撮影された浮遊要塞の形。映像を触ると見たい箇所をピックアップ出来るので、各国に侵攻済み、または進行予定の浮遊要塞を確認している。

「生き物が乗っかっていたり、ただ鉱石を浮かせただけの島だったり、かと思えば立派な建造物が建ってたりと……何というか何でもありというか……」
「相手の技術力は相当なものね。島を浮かせるほどの動力炉なんて機界と私たちが共同開発しても難しいんじゃないかしら?」

 ルタは椅子にもたれかかって釣り目がちな目を細める。ジェダはルタの意見に「然り」と返しながら筋肉で窮屈そうな服を目いっぱい伸ばしながら腕を組む。

「しかし頼もしきかな。帝国の剣師はよくやっているよぉ。まさか浮島を墜とすとは思いも寄らないよねぇ。やっぱりあれも剣神の仕業と思うかい? サル爺」
「当然じゃろう。はたまた帝国の武力を総動員して事に当たったか。まぁどちらでも良いが、剣神が大半を担っていたことは想像に難くない。エルフの王はとてつもない化け物を世に放ったと悲観していたが、まさかあ奴が救世主のように思えるとは面白い話よのぅ」

 ダルクフの質問にサルモンは気の抜けたような声でかすかに笑う。そんなサルモンにルタは眉間にシワを寄せた。

「でもそれが返って相手の強大さを助長しているわけね。帝国の損害がどれほどのものかハッキリしていないもの。もしかしたら剣神が重傷の憂き目にあってるかもしれないわよね?」
「おぉ! そうだねぇ。ルタちゃんの言う通り。剣神が出張ったのなら僕らもそれ相応の対処をしなければならないし、頑張っても僕らだけでは抑えきれないかもだよねぇ。こうなったら僕らも『魔導帝』を切る他ないかもしれないよぉ?」

 その言葉にサルモンの目がギラリと光る。

「口を慎めダルクフ。彼の御方は我が国の象徴ともいうべき御方。いくら四賢冠リゾーマタといえど、あの御方を切り札扱いすることはこの儂が許さん」
「怒んないでよぉサル爺。ちょっとした軽口だよ」
「猶更ダメじゃ」
「いやいや、落ち着いてよ。軽口だろうが冗談だろうが寝言だろうが関係ないでしょ? 僕は事実を述べてるのさ。だって剣神と並ぶ実力を持っているのはこの世界のどこを探したって魔導帝ただおひとりなんだよ? もしもルタちゃんの言った通りあの剣神が重傷を負うようなことになったなら、僕らが束になったって後一歩のところで勝ちきれないのは目に見えてる。手を貸して欲しいと懇願するのくらいいいでしょぉ?」
「……」

 確かにその通りである。もしかしたら敵の実力はそれぞれ違っていて、剣神クラスが居なくても倒せる可能性はあるが、それは希望的観測である。敵が強い場合は温存しているべきではないし、魔導帝が参加しているというだけでも士気が上がることだろう。

「……いや、懇願は好きにせい。それはそなたの勝手じゃ。たとえ断られることが目に見えても、儂らに迷惑が掛かるとしてものぅ」
「あ、意地悪な言い方だなぁ。ま、好きにしちゃうんだけども」

 ニヤリと不敵に笑うダルクフ。良からぬことを考えていそうだが、巡らせている考えを断ち切るようにジェダが口を開く。

「……問題は魔導星スターズだ」

 ジェダの射貫くような瞳はサルモンに向いていた。たった一言だったがサルモンには言いたいことが手に取るように理解出来た。バツが悪そうに禿げ頭をコリコリと掻く。

「ふぅむ。最初の肩透かしがじわじわと効いとるからのぅ。今一度危機を唱えても前ほど機敏には動くまい。どこぞでとんでもない破壊でも見せてくれれば話は変わるが、敵に期待するだけ無駄というものか……」

 危機を煽るならそれなりの脅威が必要になる。この際本当に剣神が重傷であったなら気を引き締めてくれるのだが、それは流石に都合が良すぎる。

「きっかけを待つしかなさそうね。そういえばこれに関しては何か分かった?」

 ルタは自分の目の前の映像をいじり、サルモンたちの映像に出るように操作した。そこに映し出されていたのはレッドたちの魔導戦艦ルイベー。それを知らない彼らからすれば、浮島同様に空を飛び、浮島よりも早く動く謎の飛行物体。ルタはこれを島から島への連絡船ではないかと睨んでいる。

「未だ正体は掴めておらんが、偵察機の可能性があるぞ? 何故なら浮島ではなく地上に降りていたとの報告がある。この世界の情報を探っとる可能性があるでな。引き続き監視対象じゃ」
「有益な情報を期待しているわ」

 ルタの反応以降、静まり返る部屋。会談の終わりを悟り、サルモンが締めに入る。

「今後どういった動きがあるのかは全く分からん状況じゃ。皆々気を引き締めて事に当たってくれ」
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