「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される

沙寺絃

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11話 追放聖女、伯爵家で生活する②

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 私がパーシヴァル伯爵領にやって来て、1週間が経った昼下がり。
 フレイさんは日中、伯爵としての仕事をしている。朝晩は稽古に励み、それ以外の空いた時間はすべて私の為に使ってくれている。
 その一方で、私が日中何をしているのかというと――。

「オオォォォオオ――……!」
「さあ、エリカ様! 今ですぞ!」
「は、はい! “ガイア・プロテクション”!!」

 教えてもらったばかりの大地属性支援魔法、“ガイア・プロテクション”を発動させる。
 地面から黄土色に輝く結界が出現した。
 私に向かってきたゴーレムは結界に阻まれ、一定の距離から近づけなくなる。

「さあ、次は?」
「“アース・バインド”!」

 今度は地面から、木の根っこのような植物の蔓が出現して、ゴーレムに巻き付いた。

「うむ、束縛効果のある魔法で動きを封じる。実に良いですぞ! さあ、仕上げは私が引き受けましょう!」

 執事服を着た紳士が剣を振るう。
 ゴーレムの額には魔石が輝いている。あれが弱点だ。
 紳士――執事のクレイトンさんが、魔石をくり抜くとゴーレムは土くれと化した。

「お見事でした、エリカ様」
「クレイトンさんの教え方がいいんですよ。それに私が取得した魔法では、まだ1人ではモンスターを倒せません」
「しかし1週間前は支援魔法しか使えなかったところ、今では回復魔法を取得したご様子ではないですか」
「クレイトンさんとフレイさんの教え方が良かったんですよ」

 フレイさんとの約束通り、私はクレイトンさんから魔法を教わっていた。
 まずクレイトンさんに魔法の基礎を学んでから、屋敷近くの森へと低級モンスター退治に出向くようになった。
 今、私たちがいるのは【裏山の森】。この世界の人里は【魔除けの結界】で守られているから、モンスターが入り込めないようになっている。
 ただし結界の及ばない範囲にはモンスターが出る。この辺りはモンスター出没区域だ。

「エリカ様、ステータスカードを。むむ、またレベルが上がったのではないですかな?」
「どれどれ……あ、本当だ! レベル5になってます!」

 バックパックから取り出したステータスカードに手をかざすと、最新のステータスが表示される。

――――――
名前:エリカ=ハザマ
レベル:5
クラス:聖女
魔力属性:大地
使用魔法:地属性支援魔法Lv3、地属性回復魔法Lv1、地属性攻撃魔法Lv1【New!】
スキル:無 
加護:女神スフィアの加護
――――――

 さすがにモンスターと戦うと、レベルアップしやすいみたいだ。

「攻撃魔法か。試してみたいけど、そろそろ戻らないといけない時間ですよね」
「そうですね。あまり遅くなるとフレイ様に叱責されますな。暗くなるまでエリカ様を連れ歩いていたとなれば、どのような誤解を受けるか……おお、考えただけで恐ろしいですな」
「なんだかごめんなさい。クレイトンさん、ご迷惑じゃないですか?」
「とんでもないです。エリカ様は物覚えが早いので教え甲斐があります。それにお美しい女性と共にモンスター退治というのも乙なものです。おっと、今のはフレイ様にはご内密に」
「あははははははは」

 なんかこの世界の男の人は、息を吸うように女の人を口説くなぁ。

「フレイ様はエリカ様の前では、年相応の若者らしい振る舞いを見せています。好ましい変化ですな」
「そうなんですか?」
「私が保証しましょう」

 クレイトンさんは28歳のダンディな男性だ。上品に整えられた口ひげに、黒い執事服がよく似合う。顔立ちは精悍で、大人の魅力と包容力を持っている。
 18歳の時からお屋敷に勤め始めて10年。今では上級使用人の執事バトラーとして腕を振るっている。
 私の身分を偽装してくれたのも彼だ。そう考えるとクレイトンさんには頭が上がらない。
 執事になる前は冒険者をしていたそうで、モンスターとの戦闘も慣れたものだった。

 ちなみにステータスカードは、冒険者ギルドで貰える。
 私はつい先日、冒険者ギルドに登録してステータスカードをもらってきた。
 魔法道具の一種のようで、レベルアップすると勝手に情報が更新される。この世界の文明レベルは中世~近世ヨーロッパに近いけど、こういう技術は現代日本以上だ。
 ……登録してくれた受付嬢には事情を話して、私が聖女であることは公表しないようにしてもらった。
 裏ではクレイトンさんがお金を渡していたような気もするけど、見なかったことにしよう。

「ただいま戻りましたー」
「お帰りなさいませ、エリカ様」

 帰宅した私は、汚れを落として服を着替える。
 モンスター退治の時には、動きやすさを重視した軽装に身を包んでいる。
 お屋敷で過ごす時は、フレイさんが用意してくれた衣装で過ごす。今日はたくさんのフリルやリボンがあしらわれた赤のワンピースだ。髪にはリボンを結ぶ。
 着替え終わると夕食の時間が迫っていたので、食堂に移動した。

「エリカ殿。明日は休日、俺の仕事も休みです。一緒に出掛けませんか?」
「ああ、確か休息日――でしたっけ。メイドさんから聞きました」
「いかがでしょうか」
「もちろんOKですよ。街とか村とか、まだあんまり見て回れていないから。フレイさんが一緒なら安心して回れそうですね」
「光栄の極みです。今のお言葉、感動が薄れないうちにエリカ殿語録に記載しておかなければ……」
「そんなの書いているんですか!? やめてください、私の知らないところで勝手に黒歴史を記録しないでください!」
「何を言うのですか。俺にとっては福音書ですよ」
「フレイさんの影響力だと新興宗教とか作れそうなので、本気でやめてください。私は女神に祭り上げられたくありません」
「俺にとっては女神も同然です」
「いくら寛容な女神様でも、そろそろ怒ると思いますよ。……2人の間のやり取りは、心の中に刻んで秘めておけばいいじゃないですか。万が一誰かに見られたら、その……恥ずかしいです」
「ああ……花も恥じらう乙女とは、エリカ殿の為にある言葉なのだと理解しました。承知しました、語録は処分します。エリカ殿のお言葉が記された手帳を処分するのは俺にとって身を切られるより辛いことですが、他ならぬエリカ殿たっての願いですからね。これも試練と受け止め、必ずや突破してみせましょう」
「そ、そんなに辛いなら処分しなくていいですよ。今後は追記しないで、あと金庫か何かに保管して、絶対他人の目に触れないようにしてくれれば」
「かしこまりました」

 食堂の席で交わされる私たちのやり取り。この1週間ですっかり定着した日常。
 私たちのやり取りを、給仕役のメイドさんたちが微笑ましそうに見守っていた。
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