【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です

宇水涼麻

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1 真実の愛

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 薔薇が咲き乱れる庭園は、春の優しい日差しにより尚更明るく輝いていた。隅々まで手入れされており、季節によっては薔薇だけでなく様々な花で彩られ、年中人々の心を和ませる。

 ここは王城から少し奥まった庭園であるが、一般開放されており、王城に勤務する者たちが休憩時間に訪れたりランチを楽しんだりすることはもちろん、午後の決められた時間には勤務していない貴族たちも訪れている。
 さらには平民にも週に一度開放されている。平民に開放する日は警備の強化が必要なので、週に一度になってしまうことはいたしかたないと言えるだろう。

 そんな王城庭園だが、今日に限り午後のこの時間に貸し切りとなっていた。
 そして、大きな日除けのタープが張られ、その下には大きめの丸テーブルとセットの椅子が並べられた。

 そこに座るのは、三人。
 短めの茶髪で青い目のでっぷりとした体の男は四十歳ほどに見える。少しくたびれた感のあるグレーのフロックコートの装いを一揃いで着ていて、額の汗を何度も拭いていた。見るからにソワソワしていて落ち着かない様子だ。
 隣に座る若い女も挙動不審に青い目をキョロキョロさせている。だが、中年男と違い上等なドレスを身に纏い、高価そうなアクセサリーを付け、ピンクの髪はハーフアップに整えられていた。美しい顔にその装いは似合っているが、挙動が似合っていないことが残念だ。
 一人だけ優雅に構える青年は紫紺の髪を後ろに一纏めにし、爽やかで美しい笑顔である。一口お茶を飲むと、金色の目を細めて味わいを喜んでいるようだ。装いはフリルの襟付きシャツにベストとズボンというシンプルなものだ。

「ボーラン男爵、暑かろう? コートは脱いだらどうだ?」

「いえいえ! 失礼があってはなりません! 大丈夫です!
娘にドレスをプレゼントしてくださりありがとうございます。お陰様で本日のお招きに恥をかかなくてすみました」

「私がサビィを更に美しくしたかっただけだ。気にするな」

「レン! 嬉しい!」

 サビィと呼ばれた若い女はサビマナ・ボーラン男爵令嬢である。サビマナは手を胸の前に合わせてクネクネした。
 レンと呼ばれたのは、レンエール・キャセロ。この国キャセロ王国の第一王子である彼は、クネクネしたサビマナをデレッとした笑顔で見つめた。先程の紅茶を嗜んだ優雅な笑顔は消え失せている。
 サビマナの隣に座る中年男性はサビマナの父親だ。サビマナはボーラン男爵の庶子ということだが、全く似ていない。

 レンエールがソーサーを置いたタイミングで執事二人に先導された美しいカップルがやってきた。
 短めの緑の髪に金の瞳を持った中年男性はレンエールに似ている。その男性にエスコートされている女性は紫紺の髪を複雑に結い上げており、黒蝶真珠の瞳だ。

 涼しげだが上品で高価だと一目でわかる装いの二人は優しげな笑顔でゆっくりと歩いてくる。テーブルにいた三人は立ち上がり最礼をして二人の到着を待った。

 執事がサッと椅子を引き、二人をテーブルに誘う。二人は笑顔でそこへ座った。

「気にすることはない。座ってくれ」

「「「はい」」」

 三人も再び座る。

「ボーラン男爵。息災か?」

 耳に残るテノールボイスが優しげに響いた。

「は、はい。両陛下におかれましては、ご健勝のご様子。大変、よ、喜ばしく……」

「よいよい。今日は未来の家族として会っているのだ。細かいことは気にすることはない」

 レンエールとサビマナは目を合わせて喜んだ。ボーラン男爵も目尻を下げた。
 今日は王家とボーラン男爵親子とのお茶会のために庭園は貸し切られたのである。

「は、はい。ありがたき幸せに存じます」

「レンはこのような美しい方と真実の愛を見つけられて幸せ者ね」

 王妃陛下は息子レンエールににっこりと笑った。
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