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23 国王陛下「推薦人制度を見直す」
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沈黙が会場を包む中、国王陛下は息を小さく吐いてから再び口を開いた。
「初級試験に不合格の者は即解雇はせず一年の猶予を与え再不合格の場合は解雇とする。ただし、自発的な退職は引き止めない」
国王陛下の感情の見えない表情に聴衆も侯爵も身を引き締めざるをえずゴクリと喉を鳴らす。
「初級試験を不合格になるような者を推薦したことへ咎めがないことを温情と思え。
宰相の言葉を取れば、国家への背信、反逆罪国家転覆罪であるぞ」
数名がガタガタと震えたことを国王陛下も宰相も当然チェックしている。
「とはいえ、推薦人制度は代々王家が重用してきたものだ。それをそなたたちだけの責任にしようとは思わぬ」
あからさまにホッとする者もいるが国王陛下は目の隅に留め置くだけに留めた。
「三十歳以上の者はこれまでのことを鑑み当面は不問とするが、能力を考慮し役職を再検討せよ。あまりにも能力に見合わないと思われる者には筆記テストを受けさせることを許可する。こちらも自発的な退職は引き止めない」
国王陛下はふぅと息を漏らした。
「宰相。それで調整し各部署に徹底させるように」
「かしこまりました」
各部署の大臣副大臣に至っては国王陛下と宰相の指名なので能力はある。
当主二人はいわゆる窓際族で王城勤務というステータスのために在籍していたので当然大臣でも副大臣でもない。
「お前たちの息子はすでにテストを受け不合格となったようだが一年の猶予を与えるゆえ努力するように伝えるがよい」
「「はい……」」
侯爵たちは国王陛下に向くことなく項垂れたまま了承した。
「だが、第一王子の側近の任は解く」
当主たちがガバリと顔を上げた。
「何かあるのか?」
「いえ……」
自分たちの王城での居場所はなくなるだろうと予想した当主たちはせめて第一王子殿下に信用されているかもしれない息子たちだけでも残したいし長男でない者に仕事がないことも困ると考えたが国王陛下の冷め冷めとした視線に二の句を告げなかった。
宰相がサッと手を挙げ国王陛下が頷いて発言の許可を出す。
「再採用テストを早急に行い不合格の者を集めて再教育部署を一年間限定で作るのはいかがでしょうか」
「それはよいな。教師も手配してやれ」
「はい」
「後は任せたぞ」
国王陛下のその言葉で聴衆は立ち上がり宰相と宰相の脇にいた文官たちも立ち上がり後ろを向いた。
国王陛下と王妃陛下が立ち上がると皆が頭を垂れ近衛兵に守られるように両陛下は退室していった。
第三裁判室を後にしたエーティルは頃合いを見計らってキリアの部屋へ赴くと困り微笑を浮かべたキリアの側近コークレルに快く受け入れられた。
キリアはソファに座り膝に肘を乗せ床を睨みつけている。
「キリア殿下。エーティル様です」
「えっ!?」
驚いて顔を上げたキリアへエーティルは極上の本物の笑顔を見せた。
「キリア殿下。本当にお疲れ様でございました。国王陛下の代理は大変なお仕事でしたわね」
エーティルはコークレルに促されてキリアの正面のソファに腰掛けた。
「お茶を頼んで参りますのでごゆるりとなさってくださいませ」
コークレルは優雅な仕草でその場から離れキリアの部屋の扉を開けたまま退室していった。
「エーティル嬢。兄上はやつらのために苦難の道に進まねばならなくなるやもしれません。そんなの間違っていませんか?」
「ですが、わたくしにはラオルド殿下の最後のお言葉からその道はラオルド殿下がお選びになった道かもしれないと思いましたわ」
「まさか……。そんな……」
「もちろんわたくしの杞憂かもしれませんしラオルド殿下にお聞きしてももしそうだとしても答えてはくださらないでしょう」
「兄上はそういう優しい方です」
エーティルもコクリと頷き肯定する。
「ならば、キリア殿下はお心を切り替えて何をしていくことがそのお心にお応えすることになるのかをお考えになるべきかと存じますわ」
キリアはエーティルの言葉を脳内で反芻して悄然とテーブルを見ていた。
「初級試験に不合格の者は即解雇はせず一年の猶予を与え再不合格の場合は解雇とする。ただし、自発的な退職は引き止めない」
国王陛下の感情の見えない表情に聴衆も侯爵も身を引き締めざるをえずゴクリと喉を鳴らす。
「初級試験を不合格になるような者を推薦したことへ咎めがないことを温情と思え。
宰相の言葉を取れば、国家への背信、反逆罪国家転覆罪であるぞ」
数名がガタガタと震えたことを国王陛下も宰相も当然チェックしている。
「とはいえ、推薦人制度は代々王家が重用してきたものだ。それをそなたたちだけの責任にしようとは思わぬ」
あからさまにホッとする者もいるが国王陛下は目の隅に留め置くだけに留めた。
「三十歳以上の者はこれまでのことを鑑み当面は不問とするが、能力を考慮し役職を再検討せよ。あまりにも能力に見合わないと思われる者には筆記テストを受けさせることを許可する。こちらも自発的な退職は引き止めない」
国王陛下はふぅと息を漏らした。
「宰相。それで調整し各部署に徹底させるように」
「かしこまりました」
各部署の大臣副大臣に至っては国王陛下と宰相の指名なので能力はある。
当主二人はいわゆる窓際族で王城勤務というステータスのために在籍していたので当然大臣でも副大臣でもない。
「お前たちの息子はすでにテストを受け不合格となったようだが一年の猶予を与えるゆえ努力するように伝えるがよい」
「「はい……」」
侯爵たちは国王陛下に向くことなく項垂れたまま了承した。
「だが、第一王子の側近の任は解く」
当主たちがガバリと顔を上げた。
「何かあるのか?」
「いえ……」
自分たちの王城での居場所はなくなるだろうと予想した当主たちはせめて第一王子殿下に信用されているかもしれない息子たちだけでも残したいし長男でない者に仕事がないことも困ると考えたが国王陛下の冷め冷めとした視線に二の句を告げなかった。
宰相がサッと手を挙げ国王陛下が頷いて発言の許可を出す。
「再採用テストを早急に行い不合格の者を集めて再教育部署を一年間限定で作るのはいかがでしょうか」
「それはよいな。教師も手配してやれ」
「はい」
「後は任せたぞ」
国王陛下のその言葉で聴衆は立ち上がり宰相と宰相の脇にいた文官たちも立ち上がり後ろを向いた。
国王陛下と王妃陛下が立ち上がると皆が頭を垂れ近衛兵に守られるように両陛下は退室していった。
第三裁判室を後にしたエーティルは頃合いを見計らってキリアの部屋へ赴くと困り微笑を浮かべたキリアの側近コークレルに快く受け入れられた。
キリアはソファに座り膝に肘を乗せ床を睨みつけている。
「キリア殿下。エーティル様です」
「えっ!?」
驚いて顔を上げたキリアへエーティルは極上の本物の笑顔を見せた。
「キリア殿下。本当にお疲れ様でございました。国王陛下の代理は大変なお仕事でしたわね」
エーティルはコークレルに促されてキリアの正面のソファに腰掛けた。
「お茶を頼んで参りますのでごゆるりとなさってくださいませ」
コークレルは優雅な仕草でその場から離れキリアの部屋の扉を開けたまま退室していった。
「エーティル嬢。兄上はやつらのために苦難の道に進まねばならなくなるやもしれません。そんなの間違っていませんか?」
「ですが、わたくしにはラオルド殿下の最後のお言葉からその道はラオルド殿下がお選びになった道かもしれないと思いましたわ」
「まさか……。そんな……」
「もちろんわたくしの杞憂かもしれませんしラオルド殿下にお聞きしてももしそうだとしても答えてはくださらないでしょう」
「兄上はそういう優しい方です」
エーティルもコクリと頷き肯定する。
「ならば、キリア殿下はお心を切り替えて何をしていくことがそのお心にお応えすることになるのかをお考えになるべきかと存じますわ」
キリアはエーティルの言葉を脳内で反芻して悄然とテーブルを見ていた。
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