9 / 18
9
しおりを挟む
第三王子への嫉妬心はこれが初めてではないがこれまでは押さえてきた。だが、男爵令嬢のキラキラとした瞳は看過できなかった。
「僕も同じだよ。侯爵令嬢との婚約は解消だ」
僕にもその顔を向けてほしくて思わず言ってしまった。
侯爵令息二人も僕に続く。
『だが、大丈夫だ。僕は後継者だからこの婚約が僕の一言だけで解消されることはない。それどころか、僕が婚約解消を考えるほど侯爵令嬢の醜態に悩まされたと見なされるだろう。
ふふふ。僕は優位を手に入れる。愛人はこの男爵令嬢でなくともよいのだしな』
僕は僕の輝かしい未来を疑っていなかった。
侯爵令嬢は目を細めて悔しさを顕にしている。僕は思わずニヤリとほくそ笑んだ。
「相わかった。ワシの権限においてその婚約解消を認めよう」
この魔王のような言葉を聞くまでは、自分の優位を信じていた。
その席で、父上は僕を簡単に『廃嫡する』と言った。
僕は信じられなかった。
あんなに後継者だと言ってくれていたのに。
あんなに勉強させられたのに。
あんなにいい子でいたのに。
そして、母上は後継者でなくなりそうな僕を見ようともしなかった。
国王陛下のお言葉にも驚いた。
「爵位によりまわりへの影響の大きさが変わることはしっかりと理解せよ」
「言葉の価値が謝罪の金額に作用するのは当然だとは思わぬか?」
「権利には義務だけでなく、責任も伴うのだ」
僕がこれまで教わってきていないことを国王陛下は仰ったのだ。
僕が言えば何でも叶った。僕が言えば誰もが黙った。僕が言えば皆が従った。
僕が言葉にすればそれは全て正論になる。
その言葉に責任があるなんて聞いてない……。
あ然としているとさらに現実を突き付けられた。
「後継者制度を変更いたすゆえ今日は参集させたのだが、余計な騒ぎで話が逸れた。
大切な話であるのでしかと聞くように」
『え? 今日はパーティーではないのか?』
周りをよく見れば、派手なパーティーの装いをしているのは僕達五人だけであった。他の人達は登城の装いで色味を抑えてありアクセサリーなども控えめである。
僕は婚約者を断罪する高揚感で周りが見えていなかった。作戦会議のため第三王子の部屋に早々に集合したため、両親の装いも見ていないから違和感に気がつかなかった。
『そういえば、メイドに本当にこれを着るのかと聞かれたな』
僕は普段からメイドたちを無知者扱いをして話を聞かなかった。だって、僕がこれを着ると言えばそれが正しいことになるはずなのだから。
だからメイドたちも執事たちもしっかりとは言ってくれなかったのだろう。もしかしたら心の中で笑っていたのだろうか……。
僕は最後まで抗おうとしたが兵士二人に腕を掴まれ勝てる術はなく、冷たく暗い牢屋へと連れていかれた。
貴族用の牢屋とはいえ、他と比べると小さなベッドと食事のテーブルがベッド脇に付いているというだけの違いだ。
そんな場所に押し込まれた。侯爵家の二人と男爵令嬢が大声で泣き叫んでいる。耳障りだ。
「うるさいっ! 黙っていろっ!」
一瞬静まる三人。だが、それはほんの一瞬で、なぜか僕に罵詈雑言を浴びせてきた。
「公爵家だからなんとでもなると言っていたじゃないかっ!」
「婚約者の方が爵位が下だから問題ないって言ったわよねっ!」
そして肝が冷える一言が飛び出した。
「僕も同じだよ。侯爵令嬢との婚約は解消だ」
僕にもその顔を向けてほしくて思わず言ってしまった。
侯爵令息二人も僕に続く。
『だが、大丈夫だ。僕は後継者だからこの婚約が僕の一言だけで解消されることはない。それどころか、僕が婚約解消を考えるほど侯爵令嬢の醜態に悩まされたと見なされるだろう。
ふふふ。僕は優位を手に入れる。愛人はこの男爵令嬢でなくともよいのだしな』
僕は僕の輝かしい未来を疑っていなかった。
侯爵令嬢は目を細めて悔しさを顕にしている。僕は思わずニヤリとほくそ笑んだ。
「相わかった。ワシの権限においてその婚約解消を認めよう」
この魔王のような言葉を聞くまでは、自分の優位を信じていた。
その席で、父上は僕を簡単に『廃嫡する』と言った。
僕は信じられなかった。
あんなに後継者だと言ってくれていたのに。
あんなに勉強させられたのに。
あんなにいい子でいたのに。
そして、母上は後継者でなくなりそうな僕を見ようともしなかった。
国王陛下のお言葉にも驚いた。
「爵位によりまわりへの影響の大きさが変わることはしっかりと理解せよ」
「言葉の価値が謝罪の金額に作用するのは当然だとは思わぬか?」
「権利には義務だけでなく、責任も伴うのだ」
僕がこれまで教わってきていないことを国王陛下は仰ったのだ。
僕が言えば何でも叶った。僕が言えば誰もが黙った。僕が言えば皆が従った。
僕が言葉にすればそれは全て正論になる。
その言葉に責任があるなんて聞いてない……。
あ然としているとさらに現実を突き付けられた。
「後継者制度を変更いたすゆえ今日は参集させたのだが、余計な騒ぎで話が逸れた。
大切な話であるのでしかと聞くように」
『え? 今日はパーティーではないのか?』
周りをよく見れば、派手なパーティーの装いをしているのは僕達五人だけであった。他の人達は登城の装いで色味を抑えてありアクセサリーなども控えめである。
僕は婚約者を断罪する高揚感で周りが見えていなかった。作戦会議のため第三王子の部屋に早々に集合したため、両親の装いも見ていないから違和感に気がつかなかった。
『そういえば、メイドに本当にこれを着るのかと聞かれたな』
僕は普段からメイドたちを無知者扱いをして話を聞かなかった。だって、僕がこれを着ると言えばそれが正しいことになるはずなのだから。
だからメイドたちも執事たちもしっかりとは言ってくれなかったのだろう。もしかしたら心の中で笑っていたのだろうか……。
僕は最後まで抗おうとしたが兵士二人に腕を掴まれ勝てる術はなく、冷たく暗い牢屋へと連れていかれた。
貴族用の牢屋とはいえ、他と比べると小さなベッドと食事のテーブルがベッド脇に付いているというだけの違いだ。
そんな場所に押し込まれた。侯爵家の二人と男爵令嬢が大声で泣き叫んでいる。耳障りだ。
「うるさいっ! 黙っていろっ!」
一瞬静まる三人。だが、それはほんの一瞬で、なぜか僕に罵詈雑言を浴びせてきた。
「公爵家だからなんとでもなると言っていたじゃないかっ!」
「婚約者の方が爵位が下だから問題ないって言ったわよねっ!」
そして肝が冷える一言が飛び出した。
486
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした
由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。
無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。
再び招かれたのは、かつて母を追放した国。
礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。
これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
婚約者として五年間尽くしたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?
中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。
殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。
入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。
そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが……
※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です
※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
悪役令嬢は断罪の舞台で笑う
由香
恋愛
婚約破棄の夜、「悪女」と断罪された侯爵令嬢セレーナ。
しかし涙を流す代わりに、彼女は微笑んだ――「舞台は整いましたわ」と。
聖女と呼ばれる平民の少女ミリア。
だがその奇跡は偽りに満ち、王国全体が虚構に踊らされていた。
追放されたセレーナは、裏社会を動かす商会と密偵網を解放。
冷徹な頭脳で王国を裏から掌握し、真実の舞台へと誘う。
そして戴冠式の夜、黒衣の令嬢が玉座の前に現れる――。
暴かれる真実。崩壊する虚構。
“悪女”の微笑が、すべての終幕を告げる。
真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。
反論する婚約者の侯爵令嬢。
そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。
そこへ………
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる