転生先の説明書を見るとどうやら俺はモブキャラらしい

夢見望

文字の大きさ
10 / 42

第10話  時には神様を恨んでも良いと思います

しおりを挟む

「えっ? ローズヴェルクさんも平民の方なんですか?」
「うん、ていうか、レインで良いよ。呼びずらいでしょ」
「それなら私の事もリーゼと呼んで下さい」
 何故か、俺は今この世界のメインヒロインであろう女性と対面している。学園に来ていきなり遭遇するとは思っていなかったので、少し戸惑っている。
 自分でこんなこと考えたく無かったが、モブである俺はあまり近づかない方が良いのだろうとは思ったが、道に迷った彼女を放ってもおけなかった。
「えっと、俺はミリアーデさんて呼ばせて貰うよ」
「そう・・・ですか」
 名前で呼ばれなかったのがショックだったのか、少しションボリとした表情をしていた。
「とりあえず、入学式が行われる場所に行こうか」
「あ、はい」

 これが最後かもしれないヒロインとの会話を楽しみたいと思っていたが、学生達が集まって何か騒いでいた。
 人が多く、しっかりと確認出来た訳では無いが王子達がいたと思われる。理由としては、女子達がキャーキャー言いながら、「王子! 王子!」と連呼していたからだ。
「何かあったんでしょうか?」
「う~ん、気にしなくて良いと思う。それより、このままだと通れそうにないから遠回りしようと思うけど大丈夫?」
「案内をお願いをしてるのは私の方ですから、レインさんに付いていきますよ」
 ミリアーデさんの笑顔が可愛くて、会ったばかりなのに惚れそうだった。いや、俺がモブという自覚無かったら惚れてたと思う。この世界が、本当に乙女ゲームの世界だとしたら彼女と俺が結ばれる確率は0、そう希望が無いのである。初めて神様を恨んでしまいそうになった。
「こんなこと言うと失礼かもしれないですけど、私と同じ平民の方がいて安心しました。特待生として入学することになって不安だったんです」
「まあ、いきなり貴族様達の通う学園に入ることになったら不安だよな。正直、俺もさっきまで逃げ出したいと思ってた」
「でも、入ってすぐにレインさんと出会えたのは本当に良かったです」
「クラスまで一緒かは分からないけどね」
「・・・・・・あっ、あの、レインさん」
「どうしたの?」
「・・・・・・私とお友達になってくれませんか?」
 お友達になって欲しいと言った彼女の表情は緊張で少し強張っていたが、真っ直ぐに俺を見ていた。正直、驚きの方が大きく俺は動揺していた。
「えっ? お友達?」
「はい・・・ダメですか?」
「ダメじゃない、ダメじゃない、全然ダメじゃない。むしろ、ありがとうございますというか」
「えっと・・・」
「コホン、それじゃあこれからは友達ということで」
「はい! よろしくお願いします!」
 眩しすぎる笑顔を見て倒れないように必死に堪え、彼女と友達になれたことを心の底から喜び、入学式の会場に入っていった。

 入学式は、滞りなく進んで行き、代表挨拶として王子が壇上に上がっていた。攻略対象の内の1人だった気がするが正直覚えていない。後で、確認しておこう。
 無事に入学式は終わり、こうして俺の学園生活が幕を開けたのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...