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第17話 心って魔法が無くても読めるって知ってた?
しおりを挟む「う~ん・・・」
「どうしたの? ミリアーデさん」
日常となってしまったリーゼとの昼食。
自分の事をモブと言っておきながら、一緒に昼食を取れることを楽しんでいるとリーゼが難しい顔をしている事に気付いた。
「えっと、もうすぐ授業でダンジョン探索があるじゃないですか。私、ダンジョンに行った事が無いので不安で」
「ああ、確かに授業とはいえ、いきなりダンジョンに行くのは怖いよね」
「・・・レインさんは、ダンジョンに行った事あるんですか?」
「えっ? あ、ああ、一応何回か行った事あるよ。入り口付近をうろちょろした位だけど・・・」
本当は、アルファにトレーニングと言われて、色んなダンジョンに無理矢理連れて行かれていただけだけど・・・。
トレーニングのついでとか言って、ダンジョンを何個かクリアもしたな。
「でも、入った事あるんですよね? 凄いです! 私達の年齢でダンジョンに入った事がある人は少ないって授業で習ったのに」
「そ、そんな、大した事無いって、えへへ」
『マスター、顔を引き締めて下さい。単純過ぎますよ。』
『何処かの誰かがいつもいじめるから癒やしに弱いんですよ』
『私も癒やしを与えていますよ。睡眠と食事をきちんと取らせているでは無いですか』
『それは、生きる上で最低限必要な行為だ、馬鹿野郎。リーゼが褒めてくれるだけで元気百倍になるよ』
『それは本当ですか? それなら今度のトレーニングは彼女にも付き合って貰いましょう。更なるトレーニングの効率化が見込めます』
『やめろ、唯一の癒やしが無くなる可能性しかない』
『何故そう思うのですか?』
『トレーニングが厳しすぎて引かれそうだからだよ』
リーゼに褒められた事で顔が緩んでいると、姿を消しているアルファから注意された。
気持ち悪いと言われるかもしれないが、美少女の笑顔を見たら男は意図せず口元が緩むだろう。
アルファに水を差され機嫌を悪くしていると、紫のローブとトンガリ帽子を被ったグラン先生が俺達の方にやって来た。
「あら、2人とも中庭で昼食ですか? 今日は天気が良いものねぇ」
「グラン先生、こんにちは」
「天気関係無く、ほぼ毎日中庭で食べていますけどね・・・」
グラン先生とリーゼには聞こえないようにボソッと呟いた。
ニコニコと笑いながらグラン先生はリーゼに話しかけた。
「あら? ミリアーデさんは、何か悩み事でもあるのかしら?」
「えっ?」
俺達の会話は聞いて無かった筈だが、リーゼが悩んでいる事に気付いたグラン先生。
長年やっている教師の勘みたいな物でもあるのだろうか。
「もしかして、私とレインさんの話し聞いてました?」
「いいえ、私は今ここに来たばかりよ。でも、何となくそう感じただけ」
「す、凄いですね。先生」
「ふふふ、貴方達も相手の事をよく見て知ろうと思えば、出来るようになるわよ」
(それは、無いな)
「否定する前にやってみるのも大事な事よ」
思わずグラン先生の顔を見てしまう。
「・・・先生、今俺の心読みました?」
「何のことかしら」
否定はしないということは、本当に読まれた可能性がある。
ニコニコ笑っているグラン先生の顔が少し怖くなってしまった。
『格好と70歳を超えてそうな見た目も相まって、マジで魔女なんじゃないかと思った』
『魔女の定義に年齢は関係ありませんがね。ちなみに魔法が使われた形跡はありませんでした』
『その情報は、本当に怖くなるんだが?』
俺とアルファの会話は聞こえてないようだが、グラン先生の前では隠し事が出来そうにないと感じた。
グラン先生が何者なのか考えている間に、グラン先生はリーゼの悩みを聞き終わっていた。
「なるほど、初めて行くダンジョンが怖いですか」
「はい、情けない話しだとは思うんですけど」
「何も情けない事はありません。誰も初めてやることは少なからず怖さがあるものです。それに、貴方がそれだけ怖がっているという事は、逆に言えば授業をきちんと聞いているとも言えます」
「ありがとうございます・・・でも」
「そうですね・・・それじゃあ、少しでも安心してダンジョンに行けるように貴方が信頼出来るパートナーでも召喚してみましょうか?」
「・・・召喚?」
(召喚!?)
思わず声に出したくなる言葉だった。
召喚という言葉を聞いて目をキラキラさせていると、グラン先生と目が合い「ふふふ」と笑われてしまった。
「シュトラウド君も、一緒にやってみますか?」
「えっ? 良いんですか?」
「ええ、勿論。それじゃあ、放課後また中庭に来て下さい。それまでに準備をしておくので」
召喚というのが正直どんなものか分かっていないが、期待が膨らむ自分がいた。
勿論、ダンジョンに行く事を不安に思っているリーゼの為だということは忘れていない。
本当だよ?
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