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1章
第45話 フィーネの引っ越し
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わたくしたちの目の前には、4階建ての大きなアパートがあった。
木造でよく作ったなと思えるものだけれど、最近できたのか、付与魔法がかけられているのか新築のようにピカピカだ。
「ここがあたしが泊まってる宿よ」
「おお……結構立派ですわね」
「親が絶対に安全な場所にしておけってうるさくてね。それでさっきの偽装の魔道具も持ってたんだ」
「フィーネって結構なお嬢様ですの?」
「あんたに言われたくないわよ?」
わたくしも元貴族ではあるからそうかもしれない。
「それもそうかもですわね」
「でしょ? ま、そのことはいいから、サッサと引っ越ししましょう!」
「ええ!」
「夜だからうるさくするなよ?」
と、ティエラの小言をもらいながら、フィーネの部屋の中に入っていく。
フィーネの部屋は4階にあり、部屋の大きさとしては20畳くらいあった。
家具もあるにはあるが、ベッドや机やイスがあり、それ以外はほとんどドレッサー等だ。
家具や部屋はとても丁寧に使われていて、大事にされているのがとても伝わってくる。
ただ、ある一か所、机の上やその付近には多くの紙や布切れが散らばっていた。
「あーこれは昨日色々とデザインの勉強だったり新しいデザインを考えていて、それで置きっぱなしになっちゃってたんだよね」
「夜遅くまで勉強というのは仕方ないですわ。というか素晴らしいですわ。その努力があの素晴らしいデザインですのね」
「……もう……そんなことないから。クレアの方がスゴイから。っていうか、引っ越しをするわよ」
フィーネはちょっと赤くなった顔を見せないようにするためか、とりあえず前に進む。
「そうですわね。では、重たい物から持って行きますか?」
「重たいもの? でも、大変じゃない? あたしのマジックバッグに入るかも怪しいんだよね。ベッドだけならなんとかギリギリ入るかなぁ」
「このベッド……食べ物ってないですわよね?」
「食べるベッドって聞いたことないわよ?」
「でしたら……」
わたくしはベッドに近づき、【倉庫】に収納する。
「【収納】」
パッ。
目の前にあったベッドが一瞬でわたくしの【倉庫】に収納された。
「え? なに今の!? どうやったの!? マジックバッグじゃないよね!?」
「わたくしの【倉庫】スキルですわ。食べ物じゃなければ今のところなんでも入りますわ」
「すご……しかも持ち上げなくていいとかやばくない? 便利すぎる……」
「ですわ。ではドンドン入れていってもよろしいですか?」
「え? ベッド入れてまだ入るの?」
「入りますわ。どれくらい広いかはちょっとよくわかりませんが」
「ほんとに……? なら引っ越しとか一瞬で終っちゃうじゃん……すぐに引き払う準備しておこう」
フィーネはそう言って机の引き出しを探して、なにやらごそごそとしている。
「では、わたくしは家具を色々と入れていってもかまいませんか?」
「うん。お願い」
「わかりましたわ」
ということで、わたくしは部屋に中にある物を全て【倉庫】に入れていく。
なんて言っても、フィーネの部屋の家具はそんなにある訳ではない。
ベッド以外だと、ドレッサーが5個、タンスが5個あって壁を埋め尽くしてるくらいだ。
後は先ほどフィーネが向かっていた机とイスくらいだろうか。
わたくしはそれ以外の全てを【倉庫】にしまって、フィーネを見る。
「フィーネ。後はその机とイスだけですわ」
「え? もう仕舞ったの? すご! めっちゃ綺麗になってる!」
「フィーネが元々綺麗に使っていたからですわ」
わたくしは掃除等していない。
フィーネの普段の使い方が良かったからだろう。
「うーん。そうかしら……と、それだけ早いなら書類を探すのも引っ越ししてからにした方がいいわね。クレア。机とイスもしまってくれる?」
「ええ、もちろんですわ」
彼女は散らばっていた紙や布を集め、それらを自身のマジックバッグにしまっていく。
わたくしは言われた通り机とイスをしまうと、部屋の中には日焼けの跡以外何もなくなってしまった。
「うわ……こんなに広かったんだ」
「ですわ。というか、元々20畳くらいあったのに、本当に10畳……半分まで減らしてしまって良かったんですの?」
「ええ、問題ないわ。家って言っても、ベッドと使っていた机以外は収納にしか使ってなかったからね」
そういうフィーネは嘘をついているようには思えない。
彼女はわたくしの方……だけでなく、ティエラの方を見てニヤリと笑う。
「むしろ、これから色んな服を着させてあげるから、楽しみにしててね? ティエラのも作ってあげるから」
「む……俺はいらんぞ。重たくなるだけだ」
「そんなこといって、おしゃれとか興味あるんじゃない? というか、お兄さんなんでしょ? 妹におしゃれで先を行かれていいの?」
「な……なるほど。では今度作ってみるがいい。その良し悪しで判断しよう」
「おっけー。いいの作ったげる」
と、いうことを話して、家に戻った。
「おかえり」
「おかえりなさい」
家の中ではララさんがもう戻ってきていて、簡易キッチンで調理をしていた。
「ただいまですわ」
「ただいま」
「今戻った」
わたくしたちはそう答えて、ララさんに聞く。
「ララ、料理を作るのはまだ時間がかかりますか?」
「? 後10分くらい」
「なら、家具を置く時間はありそうですわね」
「んー……ちょっと狭くなっているから、詳細を決めるのは今度でいい? っていうか、あたしの荷物クレアの【倉庫】に入れっぱなしでも問題ない?」
「そうですわね。今の所問題があったようには思いませんわ」
最初に【倉庫】に入れた木も特に変わった様子はないので、そう答えた。
「そっか、なら、ベッドと机とイスだけはさっさと置いて、ご飯のしよう」
「了解ですわ」
ということで、わたくしはフィーネさんの指示に従って、家具を置いていく。
木造でよく作ったなと思えるものだけれど、最近できたのか、付与魔法がかけられているのか新築のようにピカピカだ。
「ここがあたしが泊まってる宿よ」
「おお……結構立派ですわね」
「親が絶対に安全な場所にしておけってうるさくてね。それでさっきの偽装の魔道具も持ってたんだ」
「フィーネって結構なお嬢様ですの?」
「あんたに言われたくないわよ?」
わたくしも元貴族ではあるからそうかもしれない。
「それもそうかもですわね」
「でしょ? ま、そのことはいいから、サッサと引っ越ししましょう!」
「ええ!」
「夜だからうるさくするなよ?」
と、ティエラの小言をもらいながら、フィーネの部屋の中に入っていく。
フィーネの部屋は4階にあり、部屋の大きさとしては20畳くらいあった。
家具もあるにはあるが、ベッドや机やイスがあり、それ以外はほとんどドレッサー等だ。
家具や部屋はとても丁寧に使われていて、大事にされているのがとても伝わってくる。
ただ、ある一か所、机の上やその付近には多くの紙や布切れが散らばっていた。
「あーこれは昨日色々とデザインの勉強だったり新しいデザインを考えていて、それで置きっぱなしになっちゃってたんだよね」
「夜遅くまで勉強というのは仕方ないですわ。というか素晴らしいですわ。その努力があの素晴らしいデザインですのね」
「……もう……そんなことないから。クレアの方がスゴイから。っていうか、引っ越しをするわよ」
フィーネはちょっと赤くなった顔を見せないようにするためか、とりあえず前に進む。
「そうですわね。では、重たい物から持って行きますか?」
「重たいもの? でも、大変じゃない? あたしのマジックバッグに入るかも怪しいんだよね。ベッドだけならなんとかギリギリ入るかなぁ」
「このベッド……食べ物ってないですわよね?」
「食べるベッドって聞いたことないわよ?」
「でしたら……」
わたくしはベッドに近づき、【倉庫】に収納する。
「【収納】」
パッ。
目の前にあったベッドが一瞬でわたくしの【倉庫】に収納された。
「え? なに今の!? どうやったの!? マジックバッグじゃないよね!?」
「わたくしの【倉庫】スキルですわ。食べ物じゃなければ今のところなんでも入りますわ」
「すご……しかも持ち上げなくていいとかやばくない? 便利すぎる……」
「ですわ。ではドンドン入れていってもよろしいですか?」
「え? ベッド入れてまだ入るの?」
「入りますわ。どれくらい広いかはちょっとよくわかりませんが」
「ほんとに……? なら引っ越しとか一瞬で終っちゃうじゃん……すぐに引き払う準備しておこう」
フィーネはそう言って机の引き出しを探して、なにやらごそごそとしている。
「では、わたくしは家具を色々と入れていってもかまいませんか?」
「うん。お願い」
「わかりましたわ」
ということで、わたくしは部屋に中にある物を全て【倉庫】に入れていく。
なんて言っても、フィーネの部屋の家具はそんなにある訳ではない。
ベッド以外だと、ドレッサーが5個、タンスが5個あって壁を埋め尽くしてるくらいだ。
後は先ほどフィーネが向かっていた机とイスくらいだろうか。
わたくしはそれ以外の全てを【倉庫】にしまって、フィーネを見る。
「フィーネ。後はその机とイスだけですわ」
「え? もう仕舞ったの? すご! めっちゃ綺麗になってる!」
「フィーネが元々綺麗に使っていたからですわ」
わたくしは掃除等していない。
フィーネの普段の使い方が良かったからだろう。
「うーん。そうかしら……と、それだけ早いなら書類を探すのも引っ越ししてからにした方がいいわね。クレア。机とイスもしまってくれる?」
「ええ、もちろんですわ」
彼女は散らばっていた紙や布を集め、それらを自身のマジックバッグにしまっていく。
わたくしは言われた通り机とイスをしまうと、部屋の中には日焼けの跡以外何もなくなってしまった。
「うわ……こんなに広かったんだ」
「ですわ。というか、元々20畳くらいあったのに、本当に10畳……半分まで減らしてしまって良かったんですの?」
「ええ、問題ないわ。家って言っても、ベッドと使っていた机以外は収納にしか使ってなかったからね」
そういうフィーネは嘘をついているようには思えない。
彼女はわたくしの方……だけでなく、ティエラの方を見てニヤリと笑う。
「むしろ、これから色んな服を着させてあげるから、楽しみにしててね? ティエラのも作ってあげるから」
「む……俺はいらんぞ。重たくなるだけだ」
「そんなこといって、おしゃれとか興味あるんじゃない? というか、お兄さんなんでしょ? 妹におしゃれで先を行かれていいの?」
「な……なるほど。では今度作ってみるがいい。その良し悪しで判断しよう」
「おっけー。いいの作ったげる」
と、いうことを話して、家に戻った。
「おかえり」
「おかえりなさい」
家の中ではララさんがもう戻ってきていて、簡易キッチンで調理をしていた。
「ただいまですわ」
「ただいま」
「今戻った」
わたくしたちはそう答えて、ララさんに聞く。
「ララ、料理を作るのはまだ時間がかかりますか?」
「? 後10分くらい」
「なら、家具を置く時間はありそうですわね」
「んー……ちょっと狭くなっているから、詳細を決めるのは今度でいい? っていうか、あたしの荷物クレアの【倉庫】に入れっぱなしでも問題ない?」
「そうですわね。今の所問題があったようには思いませんわ」
最初に【倉庫】に入れた木も特に変わった様子はないので、そう答えた。
「そっか、なら、ベッドと机とイスだけはさっさと置いて、ご飯のしよう」
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ということで、わたくしはフィーネさんの指示に従って、家具を置いていく。
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