没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友

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1章

第44話 防犯用の魔道具

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 時刻は夕方、そろそろ日が落ちるという時間に、フィーネは帰ってきた。

「ただいまーってまだ住んでないんだけど」
「フィーネ! 来て下さいな!」
「え? クレア? どうしたの?」
「いいからいいから」

 わたくしは彼女の手を取り、彼女の部屋の扉を開ける。

「え? こんなところに扉なんてなかったんじゃ……」
「作ったのですわ! さ、この階段を……と、灯りをつけるのを忘れていましたわ」
「灯り? てか、この階段なに……」
「さ、いいから登りますわ」
「あ、ちょっと!?」

 わたくしは彼女を連れてそのまま彼女の部屋まで登り切る。

「さ、ここがフィーネ部屋ですわ!」
「………………」
「ど、どうでしょうか?」

 彼女は呆然としながらもゆっくりと部屋の中を見回していた。

 わたくしは彼女の返答を待ち、もじもじする。

 少し待っていると、フィーネはわたくしの両肩をガッと掴む。

「クレア!」
「は、はい!」
「すごいわよこれ! こんなにすごく……綺麗で……素敵になるなんて思わなかった!」
「本当ですか!?」
「ええ! 最高よ! こんな……こんな素敵な部屋を1日で作るなんて……信じられない! 窓からの眺めも夕焼けが木に映えてとっても綺麗だし、窓の大きさもちょうどいい。風もお願いした通り入ってきてて、言うことなしよ!」

 フィーネはそう言って窓から身を乗り出し、茜色に染まる森を楽しそうに見ている。

「本当ですの? それはとても良かったですわ。でも、言わないといけないこともあるんですの」
「なに?」

 彼女は振り返って小首をかしげながら聞いてくる。

 ここまで褒めてもらった相手にこんなことを言うのはいいのか少し悩ましいけれど、言わずにおく方が確実に問題だ。

 わたくしは覚悟を決めて彼女に話す。

「実は、飛行種族の方々の侵入を止める手段が思いつかなかったのですわ。作っている最中に思いつくと思っていたのですが、何も思いつかないままに完成してしまいました」

 完成した時は嬉しくて早く見せたくて忘れてしまっていた。
 だけれど、こうやって戻ってきて、めちゃくちゃ広い窓を見たらすぐに思いだした。

「え? それくらい大丈夫だけど?」
「え? そうなんですの?」
「うん。それ用の魔道具……っていうか、防犯用の魔道具って売ってるの。そんで、あたしもたまたま持ってるのよね。だからそれを使うわ」
「そんな便利な物があるんですの!?」

 驚き過ぎて目が飛び出そう。

「便利なって……エルフの里じゃ当たり前にあったんだけど……っていうか、クレアって付与魔法使えるんでしょう? なら、作れると思うんだけど?」
「え……それは知らないですわ。そんなもの作れるんですの?」
「流石に作り方は知らないけどね。でも、だからこの部屋は完璧よ! ありがとう! クレア!」

 フィーネはそう言ってわたくしを抱きしめてくれる。

 問題が解決したのであれば、わたくしも嬉しい気持ちしかない。
 しっかりと彼女を抱き締め返した。

「うっぷ。ちょっと……優しくしてくれると嬉しいわ」
「え! そ、それはすみませんでしたわ!」
「い、いいのよ。クレアの気持ちは伝わってくるから」
「いえ……ティエラなどはこれくらい抱きしめてあげないと納得してくれなくて……」
「そ、そう……」

 というちょっと微妙な空気になったが、フィーネは話を変えてくれた。

「そう言えば、この部屋ってもう住んでもいいの?」
「もちろんですわ。もうたった今、この瞬間からこの部屋はフィーネのお部屋になりましたわ」
「それなら手伝って欲しいことがあるんだけど、いい?」
「かまいませんが、なんのお手伝いでしょう?」
「引っ越しをしたいから、家具とか持ってくる手伝いをしてほしいのよね。重たくてあたし1人じゃ持てないんだ」
「当然! 構いませんわ!」

 むしろそう言ってくれて、頼りにされることが嬉しい。
 もうなんでも嬉しいのかもしれませんわ。

 フィーネはわたくしの手を引いて、階段を降りる。

「それじゃあ今から行きましょう! ララが帰ってきてなかったし、家具だけ……いえ、ベッドとドレッサーとかだけでも持ってきたいんだよね!」
「そんなことは言わずに全部持ってきましょう! そして、一緒に住みましょう!」

 ということで、わたくしたちは、マーレに出掛けてくると言ってフィーネの宿に向かう。
 ちなみに、ティエラもなぜかついてきた。
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