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1章
第49話 みんなで一緒に
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「美味しかったですわ。ララ」
「どういたしまして」
わたくしたちは食事を終え、いつもののんびりタイムに入る。
だけれど、ララには言わないといけないことがある。
「ララ、洗い物は後にして、引っ越しを先にしませんか?」
「引っ越し?」
「ええ、もう部屋は作れていますので、家具を運ぶのを手伝います。あんまり遅くなってもよくありませんから」
「……」
ララは首を傾げてぼんやりとしている。
「どうかしましたか?」
「……わたし、家具は持ってない」
「え? 前に宿舎にあったではありませんか」
「あれは元々宿舎についていた備え付けのもの。わたしのじゃない」
「え……そうなんですの?」
「うん」
言われてみれば家具は全部同じだった気がする。
それは……どうしたらいいのだろうか。
今からララが望む家具を作るということもいいだろうか?
でも、今日はララが帰ってくる時間が遅かった。
なので、今から作ってもいいのができるかどうか……。
せめてベッドだけでも持ってこれたらと思うのだけれど。
「なら……今からでもベッドだけでも作りましょうか?」
「ううん。必要ない」
「宿舎に帰るということですの?」
「ううん。今夜は一緒に寝てもいい?」
「……へ?」
ララはそう言う表情はなんでもなさそうに言った。
わたくしたちは洗い物を終える。
それからマーレの魔法で身体を綺麗にした。
風呂も作らないと……と思いつつも、どういうのを作ろうかとか、色々とやることがあったのであまり出来なかった。
その内ちゃんと作りたいと思う。
「でも、今はそんなことよりも嬉しいですわ」
わたくしはベッドの近くの灯りの魔道具を点け、後は寝るだけという状況だった。
近くにはわたくし、ティエラ、マーレはいつもとして、ララも一緒にいる。
彼女が着ている服はいい物だけれど、少しボロくなっているパジャマだった。
「お待たせ」
「いいえ、待っていませんわ。それでは一緒に寝ましょうか」
「うん」
わたくしはララと隣り合うようにしてベッドに寝転がって灯りを消す。
わたくしの外側にはティエラが、ララの外側にはマーレも転がった。
この人数なので、わたくしとララとの距離はとても近く、お互いに息がかかりそうなほどだ。
「ふふ、こんな近くにいるのは初めてかもしれませんわね」
「うん。クレアって近くで見ると綺麗」
「まぁ、お上手ですわね。ララこそとても綺麗ですわ。髪も綺麗ですし、伸ばしてみてはいかがですか?」
「ううん。料理の邪魔になる」
「料理をする時はまとめれば問題ありませんわよ」
「そう?」
「ええ」
わたくしは頷き、ティエラがそれに続く。
「クレアでも髪の手入れはできるのだ。ララなら問題なくできるだろう」
「ティエラ……わたくしはちゃんとしたしっかり者ですわよ? あなたこそもうちょっと毛のごわつきをなんとかした方がいいのでは?」
「俺は必要ない。ごわつくもはクレアの感覚が間違っているだけだ」
「そんなことありませんわよ。ララも触ってくださいな」
わたくしはララの手をとってティエラに触らせる。
「モフモフ……」
「ほらみろ。これが正しい反応だ」
「でもちょっとゴワッてるかも?」
「な! そ、そんな……」
「マーレの方が毛はしっかりとしているような……」
ララはそう言って、マーレの方に手を伸ばす。
「う……ん。そんな気がする」
「なん……だと……」
ティエラはショックを受けているので、わたくしはティエラを撫でる。
「ふふ、あなたもちゃんと毛の手入れしましょうねー? わたくしが姉ですから、ちゃんとお手伝いしてあげますわ」
「くっ……屈辱だ。第一、マーレは何をしているのだ?」
ティエラがマーレに話を振ると、彼が口を開く。
「僕ー? 水魔法で毎日綺麗にしてるよー。エチケットとして整えてないといいお店に入れなかったりするからね」
「そういう理由なのか……」
「当然ー」
ギシ。
「?」
誰……? と思うまでもなく、相手が声を出す。
「あたしも一緒に寝ていい?」
「フィーネ? もちろんですわ。ティエラ、少し開けてくださいまし」
「ああ」
ということで、ティエラが少しずれてくれて、そこにフィーネが入った。
「フィーネはどうしたんですの?」
「どうって……皆一緒に寝てるのに、1人だけ上は……って、いいのよ。なんでも」
「なるほど、では一緒に朝までお話しましょう」
「明日仕事があるのよ?」
「少しくらいなら大丈夫ですわ」
「もう……お気楽家ね。まぁ、少しくらいはいいけど。ララもあなた、もうちょっといいパジャマはないの?」
フィーネがララに話を振ると、彼女は小さな小声で答える。
「持ってない……服を買うなら食材を買う……」
「全く……本当に料理一本なのね」
「それが楽しい」
「それがあんたかもね。でも、いいことがわかったわ」
きっとララに送る服のことだろうと分かった。
わたくしたちはそんなことや、取り留めもないことをただただのんびりと話す。
夜のベッドは暗く、会話以外にすることもなく、楽しく話し続けられる。
ティエラとマーレ、そしてシエロがいた家もいいけれど。
こうやって新しい仲間……家族でしょうか。
みんなと一緒に居られることが、とても嬉しく、素敵に感じられる。
この時間がもっと……ずっと続いて欲しい。
そう思いながら、わたくしはいつの間にか眠りについていた。
「どういたしまして」
わたくしたちは食事を終え、いつもののんびりタイムに入る。
だけれど、ララには言わないといけないことがある。
「ララ、洗い物は後にして、引っ越しを先にしませんか?」
「引っ越し?」
「ええ、もう部屋は作れていますので、家具を運ぶのを手伝います。あんまり遅くなってもよくありませんから」
「……」
ララは首を傾げてぼんやりとしている。
「どうかしましたか?」
「……わたし、家具は持ってない」
「え? 前に宿舎にあったではありませんか」
「あれは元々宿舎についていた備え付けのもの。わたしのじゃない」
「え……そうなんですの?」
「うん」
言われてみれば家具は全部同じだった気がする。
それは……どうしたらいいのだろうか。
今からララが望む家具を作るということもいいだろうか?
でも、今日はララが帰ってくる時間が遅かった。
なので、今から作ってもいいのができるかどうか……。
せめてベッドだけでも持ってこれたらと思うのだけれど。
「なら……今からでもベッドだけでも作りましょうか?」
「ううん。必要ない」
「宿舎に帰るということですの?」
「ううん。今夜は一緒に寝てもいい?」
「……へ?」
ララはそう言う表情はなんでもなさそうに言った。
わたくしたちは洗い物を終える。
それからマーレの魔法で身体を綺麗にした。
風呂も作らないと……と思いつつも、どういうのを作ろうかとか、色々とやることがあったのであまり出来なかった。
その内ちゃんと作りたいと思う。
「でも、今はそんなことよりも嬉しいですわ」
わたくしはベッドの近くの灯りの魔道具を点け、後は寝るだけという状況だった。
近くにはわたくし、ティエラ、マーレはいつもとして、ララも一緒にいる。
彼女が着ている服はいい物だけれど、少しボロくなっているパジャマだった。
「お待たせ」
「いいえ、待っていませんわ。それでは一緒に寝ましょうか」
「うん」
わたくしはララと隣り合うようにしてベッドに寝転がって灯りを消す。
わたくしの外側にはティエラが、ララの外側にはマーレも転がった。
この人数なので、わたくしとララとの距離はとても近く、お互いに息がかかりそうなほどだ。
「ふふ、こんな近くにいるのは初めてかもしれませんわね」
「うん。クレアって近くで見ると綺麗」
「まぁ、お上手ですわね。ララこそとても綺麗ですわ。髪も綺麗ですし、伸ばしてみてはいかがですか?」
「ううん。料理の邪魔になる」
「料理をする時はまとめれば問題ありませんわよ」
「そう?」
「ええ」
わたくしは頷き、ティエラがそれに続く。
「クレアでも髪の手入れはできるのだ。ララなら問題なくできるだろう」
「ティエラ……わたくしはちゃんとしたしっかり者ですわよ? あなたこそもうちょっと毛のごわつきをなんとかした方がいいのでは?」
「俺は必要ない。ごわつくもはクレアの感覚が間違っているだけだ」
「そんなことありませんわよ。ララも触ってくださいな」
わたくしはララの手をとってティエラに触らせる。
「モフモフ……」
「ほらみろ。これが正しい反応だ」
「でもちょっとゴワッてるかも?」
「な! そ、そんな……」
「マーレの方が毛はしっかりとしているような……」
ララはそう言って、マーレの方に手を伸ばす。
「う……ん。そんな気がする」
「なん……だと……」
ティエラはショックを受けているので、わたくしはティエラを撫でる。
「ふふ、あなたもちゃんと毛の手入れしましょうねー? わたくしが姉ですから、ちゃんとお手伝いしてあげますわ」
「くっ……屈辱だ。第一、マーレは何をしているのだ?」
ティエラがマーレに話を振ると、彼が口を開く。
「僕ー? 水魔法で毎日綺麗にしてるよー。エチケットとして整えてないといいお店に入れなかったりするからね」
「そういう理由なのか……」
「当然ー」
ギシ。
「?」
誰……? と思うまでもなく、相手が声を出す。
「あたしも一緒に寝ていい?」
「フィーネ? もちろんですわ。ティエラ、少し開けてくださいまし」
「ああ」
ということで、ティエラが少しずれてくれて、そこにフィーネが入った。
「フィーネはどうしたんですの?」
「どうって……皆一緒に寝てるのに、1人だけ上は……って、いいのよ。なんでも」
「なるほど、では一緒に朝までお話しましょう」
「明日仕事があるのよ?」
「少しくらいなら大丈夫ですわ」
「もう……お気楽家ね。まぁ、少しくらいはいいけど。ララもあなた、もうちょっといいパジャマはないの?」
フィーネがララに話を振ると、彼女は小さな小声で答える。
「持ってない……服を買うなら食材を買う……」
「全く……本当に料理一本なのね」
「それが楽しい」
「それがあんたかもね。でも、いいことがわかったわ」
きっとララに送る服のことだろうと分かった。
わたくしたちはそんなことや、取り留めもないことをただただのんびりと話す。
夜のベッドは暗く、会話以外にすることもなく、楽しく話し続けられる。
ティエラとマーレ、そしてシエロがいた家もいいけれど。
こうやって新しい仲間……家族でしょうか。
みんなと一緒に居られることが、とても嬉しく、素敵に感じられる。
この時間がもっと……ずっと続いて欲しい。
そう思いながら、わたくしはいつの間にか眠りについていた。
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