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ぼんやりと見えて来る淡く霞み掛かった、景色。
いつも使っているテーブルに並べられるトーストや目玉焼きにウインナーのワンプレート。ベビーリーフとミニトマトのサラダ。お気に入りのクローバーのマグカップには大好きなカフェオレ。
向こう側の席には同じワンプレートとサラダ、コーヒーが2つ並んでいた。
テレビからは朝のニュースの合間の占いの結果が出ていた。
私の星座は、12番目。最下位だった。
ちょっと、テンションが下がる。
『今日は、昼から雨か・・・』
広がっている新聞の向こうから声が聞こえた。
少し低くて、渋くて、優しい声だった。
『ほら、早く朝ごはん食べなさい』
柔らかくて、優しい声が聞こえた。
『ああ、そうだな。食べるか』
目の前の席に誰かが席に着いた。
だけど、目の前の座る2人の顔が何故か、見えなかった。
私は顔を見たくて、手を伸ばすけど、淡い景色が、白く靄が濃くなっていく。
だんだんと白い靄に覆われて見え辛くなっていく景色。
私は、ただ、それをぼんやりと見ている事しか出来なかった。
それが、ひどく名残惜しく、そして、少しだけ、淋しかった。
ぼんやりとした意識が、フッと引き起こされた。
「・・・・・ぁ、」
目に映る、白い布と木面の天井。
自分が、ベッドに寝ている事に気がつくのに大分時間がかかった。
あれ?ここって、確か・・・・。
その時、
♪~♬~♬♬~~♪~~
ぼやける思考で右手が聞き慣れた着信音の出所を探す。
すると、枕元に右手に親しみのある感触。
「ん?え?ダレ?」
無意識、反射的にいつものように電話に出る為にスマホの画面を寝ぼけ眼で見る。
画面をタップすると暗かった画面がパッと明るくなる。
だが、
「んん、はぃ、もしもし?」
「おや?まだ目は覚めきってはいないのかな?」
「ふぁ?」
「ふふふ、トロンとした顔は可愛いけど、ちょっと起きてくれるかい?紅音」
「・・・・・へ?」
スマホの画面には画面に表示されたのは、着信通知、では無く、ハリウッド俳優並みに麗しい男性の笑顔。
「へ?レ、レイ様?」
「はい。おはよう紅音」
「え?・・・・へ?!?!」
スマホの画面に映ったレイの顔を見て紅音は思わず、スマホを落としそうになった。
なんで、スマホの画面にレイ様?
思いっきり寝起き見られた?!
うわ、思いっきり寝ぼけた顔見られた?は、恥ず!!恥ずかしい!!出来ることなら夢であって欲しい!!
て言うか、
「え、え!な、なんでレイ様が?え?え?」
顔を真っ赤にして混乱する紅音。
思わず、寝ていた体を起こし、ベッドの上で正座になる。
だって、神様相手だもん。
「あ、紅音さん!!」
「っ!?」
スマホから今度は幼い声が聞こえる。
「ル、ルカ様?」
「は、はい!ルカです!紅音さん!!」
画面を見ると今にも泣きそうな顔をするルカ様が映っていた。
「紅音さん!!お体は大丈夫ですか?!気分を悪くさせていませんか!?」
「ル、ルカ様、落ち着いてください」
「コラ、ルカ」
ポカ!
「キャン!?」
一瞬、ルカ様が画面から消えた。
「紅音、大丈夫か?」
「ルカがうるさくて済まない」
「アディーダ様、レニックス様」
画面の向こうにさっき知り合ったばかりのこの世界の神様達が顔を出した。
「おーい。お嬢ちゃん。具合はどないや?」
ドルーネ様が、アディーダ様とレニックス様の後ろからコチラに声をかける。
その後ろにはパルアドルフ様の姿も見える。
「ド、ドルーネ様、あ、あの、どうして、皆さん私のスマホに?」
とりあえず、何が起きたのか情報を知りたい。
「いやな、お嬢ちゃんが気ぃ失った後なんやけどな」
~~回想~~
『紅音さん!?』
『大丈夫。恐らく、急激なレベルアップを受けて思考が追い付かなくて脳が疲れたんでしょう』
パル兄やとレイ兄やに支えられながら、その場にゆっくりと寝かされる異世界から飛ばされてきたお嬢ちゃん、紅音。
『おーおー、今見たんやけどお嬢ちゃんの『亜空間プライベートルーム』のレベル52やで』
『レベル52・・・。紅音がこの世界に来て約数時間。普通なら有り得ない成長ね』
『生身でモンスターが蔓延るダンジョンに放り込まれて一カ月生き残れるレベルだな』
『あ、紅音さんんん!!』
『紅音ちゃん!!!!』
『落ち着け二人とも』
アワアワと慌てるルカとロディを他所に、よく寝ているお嬢ちゃんの顔色は幸いにも悪くは無い。
スウスウと小さな寝息を立てている寝顔はどこか幼く見えた。
と、その時、
ポン!!
『も、申し訳御座いませんんん!!!』
突然、目の前に一匹のモンスターのような魔獣が現れた。
それは、燕尾服の上着を着た白いリスのようなモンスターだった。
『お前は?』
『わ、私めは、ご主人様こと、紅音様のスキル『亜空間プライベートルーム』の案内人でございますぅぅ』
大きなつぶらな目に涙を溜め、大きなふさふさの尻尾を丸めて、土下座の勢いで座り込むリス。
『案内人?』
『はい。我がご主人様がこの『亜空間プライベートルーム』をより快適にお過ごし頂けるように御助力、ご案内をするのが私めの使命で御座います』
物腰が柔らかく紳士的な執事のようリス。
『本来であれば、ご主人様がプライベートルームに入室した時に私めが直々にご説明とご案内をするはず、でしたのですが、』
『我々が割り込んでしまい、出て来るタイミングを失ったと、そう言うことか?』
『は、はいぃぃ・・・・』
申し訳なさそうに正座をしてちゃっかりと紅音の側に控える、リス。
『この世界の神様の言葉を遮るのは失礼だと思い、皆様のお話が終わるまで、身を潜めつつ、側に控えておしました。
しかし、出て行こうとする度に、神様が入室し、タスクをクリアしたスキルのレベルが上がっていってしまい、』
『更にルカの『ギフトしたスキルのレベルアップ2倍』の加護の遡上効果とで本来あり得ないくらいのレベルアップをしてしまったと、言う事か』
『は、はいぃぃ』
パル兄やの考察に、リスは深々と頭を下げる。
『・・・わ、私、私・・・』
『いや、ルカのせいでは無い。いや、確かにルカの加護も原因の一つではあるが、』
『いいえ!!』
泣きそうなルカとパル兄やの言葉を遮り、リスが声を上げた。
『ルカリス様は何も悪くも非もございません!!悪いのは、こうなる前に、ご主人様の前に現れて、事の説明を怠ってしまった私めの責任で御座います。
如何なる処分も受ける所存で御座います!!』
そう言いながら床にゴンゴン頭を打ち付けるように頭を上げ下げするリス。
『あ、あ、あ、そ、そんなに頭を打ち付けるのは、』
『とりあえず、止まりなさい』
呆れたレイ兄やに首根っこを摘まれ、ブランと持ち上げられるリス。
ロディとルカはそんなリスの打ち付けていた額を優しく撫でてやっていた。
『なんや、随分と責任感の強いリスやな』
『とりあえず、謝るんなら、私達では無くて、紅音本人に謝るのね』
『我々にケジメを見せても意味はないぞ』
『は、はい・・・・』
打ち付けた額の痛さなのか、それとも己の不甲斐なさからなのか、リスはメソメソと泣く。
だが、
『は!あ、あの大変恐縮なのですが、どなた様かご主人様をこの部屋から連れ出して貰えないでしょうか?』
『え?』
『あら?どうしたの?リスのバトラーちゃん?』
『実はご主人様をこのまま、このプライベートルームに長時間滞在し続けるのは、余りお勧め出来ないのです』
レイ兄やに摘ままれたまま、身振り手振りで説明をするリス。
『どう言う事だ?』
『『亜空間プライベートルーム』はご主人様のスキル。つまり、ご主人様の気力、MPを使ったモノなのです』
そこまでリスが言うと、パル兄やが何かに気がつく。
『!、そうか、失念していた。このプライベートルームに入っている時点でスキルを発動している紅音は無意識に力を使い続けている状態と言う事か』
『はい、その通りです。そして、今のご主人様のレベルでは、少なくとも、半日以上プライベートルームに滞在する事はお勧め出来ないのです。
あ、申し訳御座いませんが、そろそろ、降ろしていただけないでしょうか』
レイ兄やに降ろしてもらったリスが寝ているお嬢ちゃんに側に寄る。
『ご主人様、すみません。失礼致します』
そう言ったリスは、お嬢ちゃんの荷物に頭を突っ込んだ。
『いや、何してんねん』
ゴソゴソと荷物の中に入って行き何かを探している様子を皆黙って見守っていた。
『あ、ありました。コレです、コレです』
そう言ってリスはあるモノを取り出した。
『それって、『すまほ』ってヤツやろ?』
『はい』
以前の異世界から召喚された少女が持っていた、異世界の文明機械。
形や性能は過去の召喚者が持っていたので、兄妹の記憶に残っていた。
『そこで、時空の神、パルアドルフ様。
刻の女神アディーダ様。時間の神、レニックス様。
折行ってお願いがございます』
『ん?』
『願い?』
『はい、私が知る限り、貴方様方は、まだご主人様に加護の確定付与をなされておりません。
もし、お許し頂けるのであれば、このご主人様の『すまほ』に御三方の加護を付与して頂けないでしょうか』
『何?』
そう言って、リスはお嬢ちゃんのすまほを自身の手前に置いた。
『[時空]と[刻]と[時]を司る御三方の加護を授かる事が出来れば、ご主人様の元の世界と僅かに繋がる事が可能なのです』
『!?、それは、本当ですか?』
『はい。色々と制限はございますが、一時的、元の世界にアクセスが可能になります』
『『『『『『!?』』』』』』
『過度な神からの加護は危険の元だと、重々に承知しております。ですが、ご主人様のコレからの生活の御助力をしたい。
こんな小っぽけな私めの我儘でございます』
執事のリスは深々と頭を下げた。
その姿に兄妹全員で顔を見合わせる。
小さなその体躯。
だが、その言動には、自身の責任の重さ。そして、主人である紅音への思いやりと忠誠を感じさせた。
~~回想終了~~
「と、言う事やねん」
笑顔で私が眠っていた間の出来事を笑顔で話してくれたが、
「うん。どう言う事?」
色々とツッコミ所があり過ぎて、素で言ってしまった。
いつも使っているテーブルに並べられるトーストや目玉焼きにウインナーのワンプレート。ベビーリーフとミニトマトのサラダ。お気に入りのクローバーのマグカップには大好きなカフェオレ。
向こう側の席には同じワンプレートとサラダ、コーヒーが2つ並んでいた。
テレビからは朝のニュースの合間の占いの結果が出ていた。
私の星座は、12番目。最下位だった。
ちょっと、テンションが下がる。
『今日は、昼から雨か・・・』
広がっている新聞の向こうから声が聞こえた。
少し低くて、渋くて、優しい声だった。
『ほら、早く朝ごはん食べなさい』
柔らかくて、優しい声が聞こえた。
『ああ、そうだな。食べるか』
目の前の席に誰かが席に着いた。
だけど、目の前の座る2人の顔が何故か、見えなかった。
私は顔を見たくて、手を伸ばすけど、淡い景色が、白く靄が濃くなっていく。
だんだんと白い靄に覆われて見え辛くなっていく景色。
私は、ただ、それをぼんやりと見ている事しか出来なかった。
それが、ひどく名残惜しく、そして、少しだけ、淋しかった。
ぼんやりとした意識が、フッと引き起こされた。
「・・・・・ぁ、」
目に映る、白い布と木面の天井。
自分が、ベッドに寝ている事に気がつくのに大分時間がかかった。
あれ?ここって、確か・・・・。
その時、
♪~♬~♬♬~~♪~~
ぼやける思考で右手が聞き慣れた着信音の出所を探す。
すると、枕元に右手に親しみのある感触。
「ん?え?ダレ?」
無意識、反射的にいつものように電話に出る為にスマホの画面を寝ぼけ眼で見る。
画面をタップすると暗かった画面がパッと明るくなる。
だが、
「んん、はぃ、もしもし?」
「おや?まだ目は覚めきってはいないのかな?」
「ふぁ?」
「ふふふ、トロンとした顔は可愛いけど、ちょっと起きてくれるかい?紅音」
「・・・・・へ?」
スマホの画面には画面に表示されたのは、着信通知、では無く、ハリウッド俳優並みに麗しい男性の笑顔。
「へ?レ、レイ様?」
「はい。おはよう紅音」
「え?・・・・へ?!?!」
スマホの画面に映ったレイの顔を見て紅音は思わず、スマホを落としそうになった。
なんで、スマホの画面にレイ様?
思いっきり寝起き見られた?!
うわ、思いっきり寝ぼけた顔見られた?は、恥ず!!恥ずかしい!!出来ることなら夢であって欲しい!!
て言うか、
「え、え!な、なんでレイ様が?え?え?」
顔を真っ赤にして混乱する紅音。
思わず、寝ていた体を起こし、ベッドの上で正座になる。
だって、神様相手だもん。
「あ、紅音さん!!」
「っ!?」
スマホから今度は幼い声が聞こえる。
「ル、ルカ様?」
「は、はい!ルカです!紅音さん!!」
画面を見ると今にも泣きそうな顔をするルカ様が映っていた。
「紅音さん!!お体は大丈夫ですか?!気分を悪くさせていませんか!?」
「ル、ルカ様、落ち着いてください」
「コラ、ルカ」
ポカ!
「キャン!?」
一瞬、ルカ様が画面から消えた。
「紅音、大丈夫か?」
「ルカがうるさくて済まない」
「アディーダ様、レニックス様」
画面の向こうにさっき知り合ったばかりのこの世界の神様達が顔を出した。
「おーい。お嬢ちゃん。具合はどないや?」
ドルーネ様が、アディーダ様とレニックス様の後ろからコチラに声をかける。
その後ろにはパルアドルフ様の姿も見える。
「ド、ドルーネ様、あ、あの、どうして、皆さん私のスマホに?」
とりあえず、何が起きたのか情報を知りたい。
「いやな、お嬢ちゃんが気ぃ失った後なんやけどな」
~~回想~~
『紅音さん!?』
『大丈夫。恐らく、急激なレベルアップを受けて思考が追い付かなくて脳が疲れたんでしょう』
パル兄やとレイ兄やに支えられながら、その場にゆっくりと寝かされる異世界から飛ばされてきたお嬢ちゃん、紅音。
『おーおー、今見たんやけどお嬢ちゃんの『亜空間プライベートルーム』のレベル52やで』
『レベル52・・・。紅音がこの世界に来て約数時間。普通なら有り得ない成長ね』
『生身でモンスターが蔓延るダンジョンに放り込まれて一カ月生き残れるレベルだな』
『あ、紅音さんんん!!』
『紅音ちゃん!!!!』
『落ち着け二人とも』
アワアワと慌てるルカとロディを他所に、よく寝ているお嬢ちゃんの顔色は幸いにも悪くは無い。
スウスウと小さな寝息を立てている寝顔はどこか幼く見えた。
と、その時、
ポン!!
『も、申し訳御座いませんんん!!!』
突然、目の前に一匹のモンスターのような魔獣が現れた。
それは、燕尾服の上着を着た白いリスのようなモンスターだった。
『お前は?』
『わ、私めは、ご主人様こと、紅音様のスキル『亜空間プライベートルーム』の案内人でございますぅぅ』
大きなつぶらな目に涙を溜め、大きなふさふさの尻尾を丸めて、土下座の勢いで座り込むリス。
『案内人?』
『はい。我がご主人様がこの『亜空間プライベートルーム』をより快適にお過ごし頂けるように御助力、ご案内をするのが私めの使命で御座います』
物腰が柔らかく紳士的な執事のようリス。
『本来であれば、ご主人様がプライベートルームに入室した時に私めが直々にご説明とご案内をするはず、でしたのですが、』
『我々が割り込んでしまい、出て来るタイミングを失ったと、そう言うことか?』
『は、はいぃぃ・・・・』
申し訳なさそうに正座をしてちゃっかりと紅音の側に控える、リス。
『この世界の神様の言葉を遮るのは失礼だと思い、皆様のお話が終わるまで、身を潜めつつ、側に控えておしました。
しかし、出て行こうとする度に、神様が入室し、タスクをクリアしたスキルのレベルが上がっていってしまい、』
『更にルカの『ギフトしたスキルのレベルアップ2倍』の加護の遡上効果とで本来あり得ないくらいのレベルアップをしてしまったと、言う事か』
『は、はいぃぃ』
パル兄やの考察に、リスは深々と頭を下げる。
『・・・わ、私、私・・・』
『いや、ルカのせいでは無い。いや、確かにルカの加護も原因の一つではあるが、』
『いいえ!!』
泣きそうなルカとパル兄やの言葉を遮り、リスが声を上げた。
『ルカリス様は何も悪くも非もございません!!悪いのは、こうなる前に、ご主人様の前に現れて、事の説明を怠ってしまった私めの責任で御座います。
如何なる処分も受ける所存で御座います!!』
そう言いながら床にゴンゴン頭を打ち付けるように頭を上げ下げするリス。
『あ、あ、あ、そ、そんなに頭を打ち付けるのは、』
『とりあえず、止まりなさい』
呆れたレイ兄やに首根っこを摘まれ、ブランと持ち上げられるリス。
ロディとルカはそんなリスの打ち付けていた額を優しく撫でてやっていた。
『なんや、随分と責任感の強いリスやな』
『とりあえず、謝るんなら、私達では無くて、紅音本人に謝るのね』
『我々にケジメを見せても意味はないぞ』
『は、はい・・・・』
打ち付けた額の痛さなのか、それとも己の不甲斐なさからなのか、リスはメソメソと泣く。
だが、
『は!あ、あの大変恐縮なのですが、どなた様かご主人様をこの部屋から連れ出して貰えないでしょうか?』
『え?』
『あら?どうしたの?リスのバトラーちゃん?』
『実はご主人様をこのまま、このプライベートルームに長時間滞在し続けるのは、余りお勧め出来ないのです』
レイ兄やに摘ままれたまま、身振り手振りで説明をするリス。
『どう言う事だ?』
『『亜空間プライベートルーム』はご主人様のスキル。つまり、ご主人様の気力、MPを使ったモノなのです』
そこまでリスが言うと、パル兄やが何かに気がつく。
『!、そうか、失念していた。このプライベートルームに入っている時点でスキルを発動している紅音は無意識に力を使い続けている状態と言う事か』
『はい、その通りです。そして、今のご主人様のレベルでは、少なくとも、半日以上プライベートルームに滞在する事はお勧め出来ないのです。
あ、申し訳御座いませんが、そろそろ、降ろしていただけないでしょうか』
レイ兄やに降ろしてもらったリスが寝ているお嬢ちゃんに側に寄る。
『ご主人様、すみません。失礼致します』
そう言ったリスは、お嬢ちゃんの荷物に頭を突っ込んだ。
『いや、何してんねん』
ゴソゴソと荷物の中に入って行き何かを探している様子を皆黙って見守っていた。
『あ、ありました。コレです、コレです』
そう言ってリスはあるモノを取り出した。
『それって、『すまほ』ってヤツやろ?』
『はい』
以前の異世界から召喚された少女が持っていた、異世界の文明機械。
形や性能は過去の召喚者が持っていたので、兄妹の記憶に残っていた。
『そこで、時空の神、パルアドルフ様。
刻の女神アディーダ様。時間の神、レニックス様。
折行ってお願いがございます』
『ん?』
『願い?』
『はい、私が知る限り、貴方様方は、まだご主人様に加護の確定付与をなされておりません。
もし、お許し頂けるのであれば、このご主人様の『すまほ』に御三方の加護を付与して頂けないでしょうか』
『何?』
そう言って、リスはお嬢ちゃんのすまほを自身の手前に置いた。
『[時空]と[刻]と[時]を司る御三方の加護を授かる事が出来れば、ご主人様の元の世界と僅かに繋がる事が可能なのです』
『!?、それは、本当ですか?』
『はい。色々と制限はございますが、一時的、元の世界にアクセスが可能になります』
『『『『『『!?』』』』』』
『過度な神からの加護は危険の元だと、重々に承知しております。ですが、ご主人様のコレからの生活の御助力をしたい。
こんな小っぽけな私めの我儘でございます』
執事のリスは深々と頭を下げた。
その姿に兄妹全員で顔を見合わせる。
小さなその体躯。
だが、その言動には、自身の責任の重さ。そして、主人である紅音への思いやりと忠誠を感じさせた。
~~回想終了~~
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