莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千

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命名 シロ

 ドルーネ様に私が眠っていた間の出来事を説明されても、情報量が多すぎる。

「とりあえず、気ぃ失ってた、お嬢ちゃん
を『亜空間プライベートルーム』の外に連れ出して、そのベッドに寝かせたんやけど、寝てた時間は20分くらいやな」
「そ、そうですか・・・、ご迷惑とお手数をおかけしました・・・」

 笑顔のドルーネ様に対して私は、寝顔を見られた気恥ずかしさと、寝ていた間に起きた情報量の多さに思わず、頭を抱える。
 そこに、

「紅音、『亜空間プライベートルーム』の鍵を出してごらん」
「へ?鍵?なんで?」
「いいから。恐らく、元の入っていた所に戻っているはずだから」
「は、はい」

 スマホの越しのレイ様に言われて、私は鍵を入れていたポーチの中を見る。
 確かに、ポーチの中に青い鈴のキーホルダーがついた古い鍵が入っている。
 だけど、

「あれ?」

 鍵に付いている青い鈴に違和感を感じた。
 鍵に付いていた鈴は、普通の丸く小さ鈴一個だけだった筈り
 だけど、今付いていた鈴は青いベルタイプの鈴が三個束ねられた物になっていた。
 心なしか、細やかな模様が入ったアンティーク調になっている気がする。
 
「鈴が、違う」

 それに、

「あれ?音が鳴らない?」

 軽く振っても、鈴の音が聞こえない。

 紅音は何度振っても鈴が鳴らない事に不可解に感じ、首を傾げる。

「大丈夫、鍵はちゃんと君の物だから」

 にっこりと微笑むレイ様。

「鳴るように念じながら3回振ってみて」
「は、はい」

 レイ様に言われた通り、鳴る様に念じながら3回振る。

 リリン、リリン、リリリンと、澄んだ音が鳴り、部屋に響く。
 すると、

 ポン!!

「お呼びでしょか?ご主人様」
「うわ!?」

 いきなり目の前に、薄い煙共に燕尾服の上着をきた白いリスが目の前に現れた。

「失礼いたしました。私は、『亜空間プライベートルーム』の案内人、紅音様の忠実な僕でございます」

 ベッドに座って居る私の前で、大きな真っ白い尻尾をピンと立て、深々と頭を下げる白いリス。
 見た目は、シマリスよりも、いや普通のリスのサイズよりもだいぶ大きい。
 昔、子供の頃動物園で見たハイイロリスと同じくらいの大きさかな?

「アナタが、ドルーネ様が言っていた案内人?」
「その通りでございます」

 顔を上げて、ピンと背筋を伸ばすリス。

「この度は、ご主人様にご迷惑をおかけし、申し訳ございません。この失態は、これより全身全霊ご主人様にお仕えする事で挽回させてもらいたく思います」

 うん。な、なんか、とても真面目な性格らしい。

「うん、だいたいの話はドルーネ様達から聞いたよ。えっと・・・、貴方の名前、なんて言うの?」
「私に名前は有りません」
「え?」
「名前が無い?」
「はい。私は、案内人でございます」

 さも、当たり前と言った風に小さな耳をピルピル動かすリス。

「でも、名前が無いと不便だよね・・・」

 呼び名が案内人と言うのもなんだか違和感を感じて、呟くとリスがその言葉にピクッと反応した。

「っ!、で、では、どうか、ご主人様のお好きな様にお呼び下さい」
「え?」
「あら、リスのバトラーちゃんは紅音ちゃんに名前を付けて欲しいのね」

 スマホの向こうでロディ様が微笑ましそうに笑っている。

「は、はい。僭越でございますが、ご主人様のご迷惑で無ければ、是非・・・・」

 モジモジと恥ずかしそうに顔を俯かせつつ、チラリと上目遣いで私を見る円な瞳。
 うん、可愛い。

「んー、じゃあ、『シロ』で」

 私は直感的にそう言った。
 その瞬間、リスの周りに淡い光が現れて、消えた。
 
「ご命名、感謝を申し上げます。私めは、今日この時を持って『シロ』と名乗らせていただきます」

 リス、いや、シロは嬉しそうに目を輝かせた。

「うん、一応、スキル『鑑定』」

 目の前に半透明のディスプレイと円が現れ、円をシロに翳す。

『ナビモンスター、シロ。契約者、紅音。
『亜空間プライベートルーム』の案内人』

 おお、契約者が私になっている。

「いや、シロって、」
「随分と安直な名前だな・・・・」
「見たままやな」

 アディーダ様とレニックス様、ドルーネ様に苦笑された。

「え、んー、私が『紅』だから」
「え?」

 シロがきょとんとした顔をする。

「私の世界では『紅白』っていう物があるの。
 諸説は幾つか有るんだけど、『紅』は喜び、『白』は始まりを意味して、とても縁起が良いとされているの。
 この世界での初めての験担ぎの意味を込めて、私の紅音と貴方のシロで紅白。これからの新しい生活にピッタリだと思うんだだけど・・・・・。どうかな?」

 そう言いながら、シロの頭を優しく撫でる。
 フワフワでスベスベな毛並みがとても気持ちよくて、触り心地がクセになりそう。

「・・・・・はい。とても素敵な由来の名前をありがとうございます」

 シロは円な瞳からポロリと一粒の涙を零した。

「これからよろしくね、シロ」
「はい!ご主人様!!」

 シロは嬉しそうに目を細めた。

「良かったですね。シロさん」
「可愛い名前を授かって良かったね。シロちゃん」
「ありがとうございます。ルカリス様、ロディーメイア様」

 シロはスマホ越しに神様達に祝福の言葉を贈られ嬉しそうに尻尾をユラユラと振る。

 予想以上にシロと言う名前を喜んでくれたみたいで良かった。

 さて、

「で、シロ、早速聞きたい事があるんだけど、いい?」
「はい!ご主人様!なんなりとお申し付けください」

 さっきから聞きたかった事をシロに問いかける。

「ドルーネ様が言っていた、『一時的、元の世界にアクセスが可能』って言うのはどう言う事?」

 その言葉を聞いたシロは、シャンと背筋を伸ばす。

「はい。ご説明させて頂きます」
「うん。お願い」

 シロと私は互いに向かい合った。

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