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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様
41、番外編 オリビア・クリスタルの生誕祭1
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・はじめに
こちらは2022~2023年末年始の番外編です。
本編で言うと第11話内の
『十五歳の誕生日に、ジョージに乗せられボトルごと酒を飲んで二日酔いを経験した悲惨な思い出』
にあたります(笑)
それでは、はじまりはじまり~!
◇
これはオリビアがリアムと再会する少し前、オリビアの十五歳の誕生日に起きた出来事である。
オリビアの誕生日は年末、十二月三十一日だった。毎年恒例の誕生会と新年会を兼ねたパーティーはクリスタル家の屋敷で盛大に開かれる。
この日は使用人たちも無礼講で、料理や飲み物の準備が終われば、一緒にパーティーを楽しむことになっている。彼らは家族も参加を許可されていた。
「「オリビアお嬢様、お誕生日おめでとうございます!!」」
「ありがとう! みんなも楽しんでね!」
オリビアへの祝いの言葉を合図に、パーティーが始まる。人々は料理や飲み物を片手に同僚や家族たちと笑顔を交わしていた。オリビアは、一年の締めくくりを満足げな笑みを浮かべて眺めている。
「オリビア様、お誕生日おめでとうございます」
「お嬢様、成人おめでとうございます」
「ありがとう、ふたりとも。これで私も大人ってことになるのね」
オリビアの侍女リタと護衛のジョージが歩み寄り、主人に祝いの言葉を贈る。
オリビアは礼を言ってにっこりと微笑んだ。すると、ジョージが目の前に葡萄酒の入ったボトルを差し出した。
「酒も解禁っすね。飲みますか!」
「葡萄酒かしら? そうね、せっかくだし飲んでみたいわ」
「それでは私はグラスをお持ちいたします」
「リタ、三つ持ってきてね!」
オリビアがリタに指を三本立てながら声をかけると、彼女は静かに微笑んで頷き、人混みの中に入り込んでいった。
ふと、ジョージの持つ葡萄酒のボトルに目を向ける。オリビアはラベルに書いてある数字を見てその部分を指さした。
「これ……製造年が私の生まれ年だわ」
「そうっすね。たまたま手に入ったんで。粋な計らいって感じでいいでしょ?」
ジョージが肩をすくめてニヤリと笑みを浮かべていた。オリビアは自分の生まれ年の葡萄酒が貴重なのを知っている。照れ隠しに軽口を叩いたであろう彼に合わせ、笑い顔で憎まれ口を返した。
「もう! そういうことを言わなければ本当に粋なのに。そういうところよ、ジョージ」
「手厳しいですねえ。大人になったんだからもっと包容力を見せてくださいよ」
「ああいえばこういうんだから……」
「お待たせいたしました。グラスをお持ちしました」
オリビアがため息をついたタイミングで、グラスを三つ持ったリタが戻ってきた。
「ありがとう、リタ」
「お、いいねえ。イケそうイケそう」
ジョージがポケットから栓抜きを取り出し、慣れた手つきでコルクを抜いた。内側についた葡萄酒の香りを確認して頷く。
次にリタの持っているグラスを一つ受け取ってから静かに葡萄酒を注いだ。そして、それをオリビアに差し出した。
「さ、どうぞ」
「ありがとう」
ジョージが残り二つのグラスにもワインを注ぎ、その一つをリタに渡した。彼は自分の持っているグラスを軽く上げる。
「改めてお嬢様、成人おめでとうございます」
「オリビア様、おめでとうございます」
「ありがとう」
オリビアはグラスに口をつけ、濃い赤紫色の葡萄酒を含んだ。葡萄の渋みが口に広がり、飲み込むときに喉が熱くなるのを感じた。鼻から息を吐くと、普段食べている葡萄によく似た香りが通り抜ける。
「どうっすか?」
「なんだか喉の奥にグッとくるけど、フルーティで……嫌いじゃない」
自分の顔を覗き込んでいるリタとジョージにそう返事をすると、ふたりからは笑顔が返ってきた。そのままオリビアはふたりと一緒に葡萄酒を飲んで楽しく過ごした。
その後、他の使用人たちも酒を飲んでいるオリビアに次々とお酌をして、オリビアはどんどん酒を飲み続けた。気がつくと、数時間経過しており、新年を迎えようという時刻になっていた。
「オリビア様、そろそろ花火の時間ですね」
「あら、もうそんな時間? あはは! 楽しい時間はあっというまね! ああ楽しい~」
「うわ、酔ってますね。お嬢様」
オリビアは笑い続けながら、ふらつく足元を護衛に支えてもらい、庭に出て空を眺めた。
ドーン、ドーン! という音と共に、冬の夜空には大輪の花が咲く。
「新年、おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「おめでとうございま~す」
家族同然の信頼できる従者ふたりと一緒に、オリビアは今までにないくらい心地よい気分で新年を迎えた。
「リタ、ジョージ、今年もよろしくね!」
「はい。今年もよろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします~」
そう言ってあらためて乾杯しようと緩みきった顔をさらに緩ませていたはずのオリビアは、眉を寄せじっとりと自分の持つグラスを見ていた。中身が空になっているのだ。
「あらあ、お酒がないわ……。ジョージ、おかわり!」
「お、オリビア様……、そろそろお控えになってはいかがでしょうか? だいぶ飲まれていますし……」
酒を求めるオリビアに、リタが心配そうに声をかける。が、オリビアは聞き分けることなく空のグラスをブンブンと振って駄々をこねた。
「今日は無礼講なのよ! 飲んで飲んで飲みましょうよ! 酒よ、酒を持ってきてちょうだい!」
「なんかめんどくさくなってきましたねえ……。これでもどうぞ」
ジョージがため息をついて、近くのテーブルにあった葡萄酒のボトルを手に取り、オリビアの持つグラスとそれを交換した。
要求が満たされ満足したオリビアは再び顔を綻ばせ、飲み口に口をつけた。
正面でリタが手で口を抑え青ざめているが、オリビアは気に留めることなく葡萄酒を流し込む。
「ありがとう。無礼講ついでに、このまま飲んじゃいましょ」
「オリビア様! おやめください!」
「ははっ。すっげー酒乱」
こうして夜は更けていった。
こちらは2022~2023年末年始の番外編です。
本編で言うと第11話内の
『十五歳の誕生日に、ジョージに乗せられボトルごと酒を飲んで二日酔いを経験した悲惨な思い出』
にあたります(笑)
それでは、はじまりはじまり~!
◇
これはオリビアがリアムと再会する少し前、オリビアの十五歳の誕生日に起きた出来事である。
オリビアの誕生日は年末、十二月三十一日だった。毎年恒例の誕生会と新年会を兼ねたパーティーはクリスタル家の屋敷で盛大に開かれる。
この日は使用人たちも無礼講で、料理や飲み物の準備が終われば、一緒にパーティーを楽しむことになっている。彼らは家族も参加を許可されていた。
「「オリビアお嬢様、お誕生日おめでとうございます!!」」
「ありがとう! みんなも楽しんでね!」
オリビアへの祝いの言葉を合図に、パーティーが始まる。人々は料理や飲み物を片手に同僚や家族たちと笑顔を交わしていた。オリビアは、一年の締めくくりを満足げな笑みを浮かべて眺めている。
「オリビア様、お誕生日おめでとうございます」
「お嬢様、成人おめでとうございます」
「ありがとう、ふたりとも。これで私も大人ってことになるのね」
オリビアの侍女リタと護衛のジョージが歩み寄り、主人に祝いの言葉を贈る。
オリビアは礼を言ってにっこりと微笑んだ。すると、ジョージが目の前に葡萄酒の入ったボトルを差し出した。
「酒も解禁っすね。飲みますか!」
「葡萄酒かしら? そうね、せっかくだし飲んでみたいわ」
「それでは私はグラスをお持ちいたします」
「リタ、三つ持ってきてね!」
オリビアがリタに指を三本立てながら声をかけると、彼女は静かに微笑んで頷き、人混みの中に入り込んでいった。
ふと、ジョージの持つ葡萄酒のボトルに目を向ける。オリビアはラベルに書いてある数字を見てその部分を指さした。
「これ……製造年が私の生まれ年だわ」
「そうっすね。たまたま手に入ったんで。粋な計らいって感じでいいでしょ?」
ジョージが肩をすくめてニヤリと笑みを浮かべていた。オリビアは自分の生まれ年の葡萄酒が貴重なのを知っている。照れ隠しに軽口を叩いたであろう彼に合わせ、笑い顔で憎まれ口を返した。
「もう! そういうことを言わなければ本当に粋なのに。そういうところよ、ジョージ」
「手厳しいですねえ。大人になったんだからもっと包容力を見せてくださいよ」
「ああいえばこういうんだから……」
「お待たせいたしました。グラスをお持ちしました」
オリビアがため息をついたタイミングで、グラスを三つ持ったリタが戻ってきた。
「ありがとう、リタ」
「お、いいねえ。イケそうイケそう」
ジョージがポケットから栓抜きを取り出し、慣れた手つきでコルクを抜いた。内側についた葡萄酒の香りを確認して頷く。
次にリタの持っているグラスを一つ受け取ってから静かに葡萄酒を注いだ。そして、それをオリビアに差し出した。
「さ、どうぞ」
「ありがとう」
ジョージが残り二つのグラスにもワインを注ぎ、その一つをリタに渡した。彼は自分の持っているグラスを軽く上げる。
「改めてお嬢様、成人おめでとうございます」
「オリビア様、おめでとうございます」
「ありがとう」
オリビアはグラスに口をつけ、濃い赤紫色の葡萄酒を含んだ。葡萄の渋みが口に広がり、飲み込むときに喉が熱くなるのを感じた。鼻から息を吐くと、普段食べている葡萄によく似た香りが通り抜ける。
「どうっすか?」
「なんだか喉の奥にグッとくるけど、フルーティで……嫌いじゃない」
自分の顔を覗き込んでいるリタとジョージにそう返事をすると、ふたりからは笑顔が返ってきた。そのままオリビアはふたりと一緒に葡萄酒を飲んで楽しく過ごした。
その後、他の使用人たちも酒を飲んでいるオリビアに次々とお酌をして、オリビアはどんどん酒を飲み続けた。気がつくと、数時間経過しており、新年を迎えようという時刻になっていた。
「オリビア様、そろそろ花火の時間ですね」
「あら、もうそんな時間? あはは! 楽しい時間はあっというまね! ああ楽しい~」
「うわ、酔ってますね。お嬢様」
オリビアは笑い続けながら、ふらつく足元を護衛に支えてもらい、庭に出て空を眺めた。
ドーン、ドーン! という音と共に、冬の夜空には大輪の花が咲く。
「新年、おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「おめでとうございま~す」
家族同然の信頼できる従者ふたりと一緒に、オリビアは今までにないくらい心地よい気分で新年を迎えた。
「リタ、ジョージ、今年もよろしくね!」
「はい。今年もよろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします~」
そう言ってあらためて乾杯しようと緩みきった顔をさらに緩ませていたはずのオリビアは、眉を寄せじっとりと自分の持つグラスを見ていた。中身が空になっているのだ。
「あらあ、お酒がないわ……。ジョージ、おかわり!」
「お、オリビア様……、そろそろお控えになってはいかがでしょうか? だいぶ飲まれていますし……」
酒を求めるオリビアに、リタが心配そうに声をかける。が、オリビアは聞き分けることなく空のグラスをブンブンと振って駄々をこねた。
「今日は無礼講なのよ! 飲んで飲んで飲みましょうよ! 酒よ、酒を持ってきてちょうだい!」
「なんかめんどくさくなってきましたねえ……。これでもどうぞ」
ジョージがため息をついて、近くのテーブルにあった葡萄酒のボトルを手に取り、オリビアの持つグラスとそれを交換した。
要求が満たされ満足したオリビアは再び顔を綻ばせ、飲み口に口をつけた。
正面でリタが手で口を抑え青ざめているが、オリビアは気に留めることなく葡萄酒を流し込む。
「ありがとう。無礼講ついでに、このまま飲んじゃいましょ」
「オリビア様! おやめください!」
「ははっ。すっげー酒乱」
こうして夜は更けていった。
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