【本編完結】美女と魔獣〜筋肉大好き令嬢がマッチョ騎士と婚約? ついでに国も救ってみます〜

松浦どれみ

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第五章 交差する陰謀

132、緊急帰省、クリスタル家にて1

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 朝、早い時間に学院から馬車に乗ったオリビア。

 八時間の長旅を終えクリスタル領に着いたのは十五時近くだった。王都の天気はどんよりとした曇り空だったが、こちらは快晴で流れる空気も気持ちがよかった。

「オリビア、リタ! おかえり」

「おかえりなさいませ。長旅、お疲れ様でございます」

 馬車が屋敷の前に到着すると、兄エリオットとオリビアの従者セオが出迎えてくれた。
 一週間ぶりとあまり日は空いていなかったが、ふたりとも嬉しそうに笑顔を見せてくれるのでオリビアもつられて自然と笑顔になった。

「お兄様、セオ。ただいま戻りました」

「疲れただろう? まずはふたりともおやつの時間にしなさい」

「ありがとうございます。行きましょう、リタ」

「はい」

 オリビアはリタらとともに屋敷に入り、テラスに用意されたお茶と軽食を片手に長旅の疲れを癒した。

「そういえば、今日は急にどうしたんだ? リアム様となにかあったか?」

「お兄様! そういう話はちょっと……」

「ああ、すまんすまん」

 デリカシーのない兄の発言を嗜めながら、オリビアはスコーンを頬張った。少しはしたないが紅茶をすすり、大きく息を吐く。

「詳しい話は夜に私の部屋でさせていただきます。セオ、留守中に私宛の連絡はあったかしら?」

「はい。各店舗からの売り上げ報告がありました。そちらは私が対応しております。あとは街の工房から連絡がありまして……」

「もしかして、モアメッド工房かしら?」

「はい、そうです。『注文の品が完成した』とのことです」

「まあ! すぐに行きたいわ!」

 オリビアは急いで紅茶が入ったカップを空にして席を立った。その横でリタも慌てて立ちあがろうとしたので、手のひらを前に出して静止する。

「リタはゆっくりしていて。セオと行ってくるわ」

「ですがオリビア様……」

「リタさん、ご安心ください。オリビア様には私ともう一人護衛を同行させますから」

「そうだぞリタ、君もたまにはゆっくりしなさい」

 不安げに眉を下げるリタだったが、セオとエリオットの言葉を聞いて肩の力を抜いた。

「お気遣いいただきありがとうございます。それではオリビア様、気をつけていってらっしゃいませ」

「ありがとう! いってきます!」

 オリビアはリタとエリオットに見送られ、セオとテラスをあとにした。その後、護衛を一人連れて街に出て、広場を通り石造りの建物の前で立ち止まる。

「着いたわ。悪いけどふたりは店の前で待っていてちょうだい」

「「かしこまりました」」

 建物には「モアメッド工房」と書かれた看板がかかっていた。オリビアはセオと護衛を残し、ひとりで店の中に入っていく。

「ごめんください」

>>続く
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