【本編完結】美女と魔獣〜筋肉大好き令嬢がマッチョ騎士と婚約? ついでに国も救ってみます〜

松浦どれみ

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第七章 オリビアの魔法

174、来訪者たち2

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「さあ、私の部屋はこちらです。お入りください」

 食事を終え、オリビアはレオンとリアムを自室へ案内した。
 念のためジョージとリタに周囲の確認をさせ、彼らの目配せの合図に静かに頷く。

「おふたりとも、どうぞお掛けください」

 レオンとリアムは頷いてからソファに座った。そして、オリビアが口をひらく前に、レオンが話し始める。

「ふたりとも、今回の件……全て僕の責任だ。本当にすまない」

「殿下……」

 レオンは座りながらも正面に座るリアムとオリビアに頭を下げた。恐縮するリアムに対し、オリビアは黙ってレオンを見つめていた。

 このまま「もういい」と言っても彼は納得しないだろうと思っていた。

「では、まずはレオン殿下のお話をお聞きしましょう。リアム様、よろしいでしょうか?」

「ああ、かまわないよ」

「オリビア嬢、リアム、ありがとう」

 レオンがリアムとオリビアに礼を言って深呼吸した。そして、再び口を開く。

「僕はから、オリビア嬢を妃候補として監視していた。特に君の持つ魔法が知りたくて。そのためにさまざまな工作をした……。結果、あの日幻覚で見せるはずだったクラブ棟の火が本物に変わってしまい、大事になったんだ。ふたりとも僕のせいで……本当にすまなかった」

 オリビアは冷静にレオンからに謝罪を聞いていた。しかし、事情がわからないリアムは動揺を隠せず、目を見開いている。

「そんな……では、まさか私とオリビア嬢の婚約保留の件も……」

「ああ、僕が父上にお願いした」

 レオンが頷く。それに対してリアムが感情を抑えきれないといった様子で立ち上がり、声を荒げた。

「なんということを! 私たちがどれほど苦しんだか! オリビア嬢がどれほど悲しんだか……」

「リアム様! 落ち着いてください!」

 オリビアはとっさにリアムに縋りつき彼を制止した。リアムが再びソファに座り大きく息を吐く。

「リアムの怒りは当然だ。それに僕はオリビア嬢や生徒たちの命さえも脅かしてしまったんだからね。謝って許されることとは思っていない。けれどもう一度言わせてほしい。本当にすまなかった。僕にできることならなんでもする」

 深く、頭をできるだけ床に近づけ頭を下げるレオン。オリビアは彼の震える肩に手を伸ばした。

「レオン殿下。もういいです、顔をあげてください。私も魔法を探られていることがわかっていたのに、それが「なぜ」かというところまでは考えませんでした。結果、腹の探り合いのようになってしまい今回のことに……。もっと早く話し合うべきだったと反省していますわ」

「オリビア嬢、僕は……」

 顔を上げ目を潤ませているレオンに、オリビアは優しく微笑みかけた。

「あのとき、火の手が迫る中、レオン殿下は私を救おうと必死になってくれました。それで充分なのです。ね、リアム様?」

「オリビア嬢が、そう言うのなら……」

 オリビアに問いかけられたリアムは少しだけ複雑な心境なようで、珍しく唇を尖らせながら返事をした。彼に納得してもらうためには話を進めなくてはいけないとオリビアは一度大きく息を吐いた。

「リアム様、レオン殿下にも事情があるのです。それを説明するには私の魔法についてお話しする必要があります。そしてこれは……きっとレオン殿下が知りたいことに答えることにもなります。お二人とも、どうか聞いてくださいますか?」

「ああ」

「もちろん」

 オリビアは穏やかに彼らに語りかける。レオンとリアムは身構えるように顎を引き、姿勢を正して頷いた。

>>次話へ続く

新章スタートです!
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