【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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俺から見た君は

本命

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スナと手を繋いでゆっくりと教室に戻る。

予鈴が鳴ったからか廊下に人はいない。

これで最後かもしれないな。そんなことを考えながら、ぎゅっと冷たい手の感覚を忘れない様、スナの手を強く握った。



「っ、スナ‥!」

教室に戻るとすぐに八谷が駆け寄ってきた。

「昨日は‥ごめん‥俺余裕なくてスナに酷いこと言っちゃった、ほんとにごめんっ」


ぎゅっとスナに縋り付く八谷。その勢いで繋いでいた手が離れる。

1人残された腕は虚しくその場を彷徨って、引き離された相手を追うように視線を辿った。

八谷が、ぎゅっとスナの手を握っている。ズキリ、ズキリと心臓が耳元で嫌に鳴り響いて、俺はそれを止める手段も分からずに、伸ばしていた腕をゆっくりと下ろす。

心がどん底まで堕ちるって言葉はきっとこういう時に使うんだろう。冷えきった胸の鼓動と同時に、やっぱりこうなるよなと俺は笑った。

「スナ、俺ね‥ずっとスナの側にいるからーー。」

あぁ、スナの顔が見れない。どんな顔をしてるんだろう。きっと、幸せそうに笑ってるんだろうな。俺には向けてくれない卒業式のあの日みたいな優しい顔で。

「っ、」

ずるいよ、ほんと。さっきまで俺がそこにいたのに‥その僅かな思い出さえもすぐに上書きされるんだ。

八谷の眼中には俺や周りは存在していないようで、その場が一気に2人だけの世界と化す。

まるで最初から俺の存在なんて無かったみたいに蚊帳の外に扱われて、茶番を見せられる前に俺はすぐさま自分の席に戻った。

「この浮気者‥」

「、ごめん、海‥。」

席に戻ると、不貞腐れた表情の海が前の席からギロリと俺を睨む。

今は笑う余裕もなかった。申し訳なくて夏樹に謝る。

「っ、‥風太、顔色悪すぎ‥もう‥そんなんじゃ怒れないじゃん‥」

夏樹は切なげに顔を歪めると、俺を心配して頬に手を当ててくる。

俺はされるがまま、虚な目で夏樹に謝り続けた。

「ほんとうに‥ごめん‥」

「ッ~、もう‥馬鹿だよほんと‥よしよし‥風太、元気出して。今日は美味しいもの食べに行こ?ね?」

頭を優しく撫でられて、俺は心の穴を埋める様にその手に擦り寄る。

今はただ、誰かの温もりに触れていたかった。

「‥夏樹、」

「なに?風太」

「ありがとう。」

「っ、ふふ。お互い様だよ。どういたしまして。‥ねぇ、風太。


逃げていいんだからね‥」

「っ、」

俺はきっと今一番に、そう言ってもらいたかったみたいだ。

「‥あぁ‥そうだな。ありがとう」

ふいに涙が溢れてきて、俺は情けなく机に伏せて涙を隠す。本礼が鳴るまでの間、夏樹が伏せる俺の隣に肘をついて、見えない様に俺を隠してくれていた。


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