【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

文字の大きさ
32 / 59
俺から見た君は

君は他の誰かが好きだから

しおりを挟む


俺はただ、普通に恋がしたかった。

「ふ‥ゔ‥くそ‥」

その思いを告げて、もし断られたら諦めて。

まだ想い続けても構わない。答えが出ているなら苦しくても諦めがつく時がくるはずだから。

いつか季節が移り変わる頃には想いが思い出に変わって、

そしたら、また誰かと出会う。

「ごほっ、ゴホッ、は‥」


現実は辛すぎることの連続で、ただただ疲弊した。自身よりも先に周りの方が蠢いて、俺の想いを踏みにじろうとする。

悔しさよりも、悲しみが胸に押し寄せる。

俺だって、スナのこと好きなのは同じなのに。

普通ができない状況だったんだ。
好きになるなと言われたんだ。

俺の想いをそんな軽々しく語るなよ

お前に分かるはずない。世界で一番好きな人に、好きだと言えない俺の気持ちを。

勇気があれば‥
俺にもっと勇気があれば、八谷に言い返すことができたのだろうか。

八谷の言葉がズキリと胸を刺す。

「俺が‥望んでたから‥スナは気づいて‥?」

違う。そんなわけない。俺はちゃんと隠してた。

もし、向けてくれた笑顔も言葉も全部、俺を気遣っての偽物だったら?

俺は耐えられるのだろうか。また人を好きになれるのだろうか。

苦しくて仕方がない。

地面が歪んで、俺はその場にしゃがみ込んだ。

まずい。息が上手くできない‥誰かに連絡して‥

母さんは‥仕事に行ったばかりだし、夏樹にっ

『周りをあんまり巻き込まないようにな。傷つくのは早川だけじゃないんだから。ーー』

ダメだ‥これ以上、迷惑はかけられない。

じゃあ、誰に?

「はぁ、は‥ゴホッ‥」

トーク画面をスクロールして、俺には人脈が無いってことを再確認した。

ポタポタと画面に雫が落ちる。

俺はスマホの電源を切ろうと指を伸ばすけれど、だらりと垂れた腕に力が入らなくなって、朦朧とする意識の中、たった一人だけを思い浮かべていた。

俺、ここで死んじゃうのかな‥?

こんなことなら、伝えておけばよかったんだ。

会いたいよ、スナーー。


俺、スナの隣にいたい


「早川っ、どこだ!早川ッ!っ、ーー早川!!おい!しっかりしろ!」

死ぬ前の走馬灯だろうか。微かに聞こえる馴染みのある声に、俺は閉じかけていた瞳を開ける。


「す、な‥?」

必死な表情のスナが駆け寄ってくる。俺はそれが現実かどうか曖昧で、ただぼーっとその様子を眺めていた。

「早川っ、ごめん、一人にしてごめん‥俺が悪かったからっ、だからっ、勝手に一人で消えんなッーー。」

ぎゅっと引き寄せらた腕ごと強く抱きしめられる。

俺は勢いのままスナの胸に飛び込み、そのリアルな感覚に現実だと実感した。

なんで、スナが‥

嬉しいはずなのに、先程の出来事が脳裏を支配して、引き剥がしたい衝動に駆られる。

俺は熱くなる目元を必死で隠した。


「顔色が悪りぃ‥ここからだと早川の家の方が近いよな‥?家に連れてくぞ?」

俺の目元を指先で撫でるスナ。

俺に構うなよ
好きな奴がいるくせに、

ずっと俺を代わりにしてたんだろ

告白したなんて知らなかった。どうして言ってくれなかったの?

どうして‥俺に好きになるななんて言ったんだよ‥そのせいで俺はっ

同情なら、優しくするなよ‥

言ってやりたいことは山ほどあった。それなのに、俺の舌は熱で浮かされて使い物にならない。

ぐいっと膝裏と背中に手が回る感覚がして、俺はその浮遊感にぎゅっと目の前の制服のシャツを掴む。

「早川、待ってろ。もう少しの辛抱だからな。」

こうやってまた、俺を勘違いさせないでーー。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで

るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。 「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」 記憶を失ったベータの少年・ユリス。 彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。 封じられた記憶。 拭いきれない心の傷。 噛み合わない言葉と、すれ違う想い。 謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、 ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。 触れたいのに、触れられない。 心を開けば、過去が崩れてしまう。 それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。 ――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。 過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。 許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。 孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。 これは、ふたりの愛の物語であると同時に、 誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。 運命に抗うのは、誰か。 未来を選ぶのは、誰なのか。 優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。

素直になれなくて、ごめんね

舞々
BL
――こんなのただの罰ゲームだ。だから、好きになったほうが負け。 友人との、くだらない賭けに負けた俺が受けた罰ゲームは……大嫌いな転校生、武内章人に告白すること。 上手くいくはずなんてないと思っていたのに、「付き合うからには大切にする」とOKをもらってしまった。 罰ゲームと知らない章人は、俺をとても大切にしてくれる。 ……でも、本当のことなんて言えない。 俺は優しい章人にどんどん惹かれていった。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

息の仕方を教えてよ。

15
BL
コポコポ、コポコポ。 海の中から空を見上げる。 ああ、やっと終わるんだと思っていた。 人間は酸素がないと生きていけないのに、どうしてか僕はこの海の中にいる方が苦しくない。 そうか、もしかしたら僕は人魚だったのかもしれない。 いや、人魚なんて大それたものではなくただの魚? そんなことを沈みながら考えていた。 そしてそのまま目を閉じる。 次に目が覚めた時、そこはふわふわのベッドの上だった。 話自体は書き終えています。 12日まで一日一話短いですが更新されます。 ぎゅっと詰め込んでしまったので駆け足です。

幸せのかたち

すずかけあおい
BL
家にいづらいときに藍斗が逃げる場所は、隣家に住む幼馴染の春海のところ。でも藍斗の友人の詠心は、それを良く思っていない。遊び人の春海のそばにいることで藍斗が影響を受けないか心配しているらしい。 〔攻め〕荻 詠心 〔受け〕千種 藍斗 *三角関係ではありません。 *外部サイトでも同作品を投稿しています。

○○過敏症な小鳥遊君

渡辺 佐倉
BL
オメガバース設定の様な何かです。 短い話が書きたかったのでサクッと終わります。 受けは多分アホの子よりです。 アルファで美形の小鳥遊君はオメガのフェロモンの匂いを過剰に感じてしまう病気になってしまったらしく、毎日眼鏡とマスクをしている。 大変だなあと思っていただけだったけど……。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

あなたに捧ぐ愛の花

とうこ
BL
余命宣告を受けた青年はある日、風変わりな花屋に迷い込む。 そこにあったのは「心残りの種」から芽吹き咲いたという見たこともない花々。店主は言う。 「心残りの種を育てて下さい」 遺していく恋人への、彼の最後の希いとは。

処理中です...