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俺から見た君は
プライド
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◇
「なにこれ‥どういうこと?」
誰かの声が聞こえて、俺は重い瞼を開ける。
「なんで‥早川がスナの部屋にいんの‥」
夢現、俺はそこにいるはずのない人物に目を見開いた。
部屋のドアの前。怒りと疑問が混ざったような困惑した顔。
っ、八谷‥?なんで‥あれ、俺‥今何時だッ
「、その首っ‥スナがつけたんじゃないよな‥?」
時計を見ようとして、ふと八谷がそう呟いた。
俺の首元に視線を向ける八谷。とっさに首元を隠す。
俺は寝起きの頭をフル回転させる。
なんで八谷がスナの部屋にいるんだよ‥スナは?
ダメだ‥意識が朦朧とする。熱覚ましの薬‥飲む前に寝たからまた熱がぶり返したのか‥視界が回って気持ち悪い‥。
「ち、ちがっ‥ゴホッ、」
否定しようとして、喉の痛みで俺は何度も咳をする。俺にだって分からない。
そんなこと‥スナに聞けばいいだろっ‥
俺は無意識にスナを探す。気配が全く無くて不安になってきた。一緒にいないのか‥?時計は18時を回っていて、学校が終わってもう帰宅しててもいい時間帯だ。
八谷がきゅっと唇を噛み締めて俯くのが見えた。俺は喉の痛みで何度か咳をして、その合間に八谷にスナはどこかと話しかけようと口を開く。
「はち、」
「早川、昨日俺さ。スナに告白しようと思ってたんだ」
「っ、」
刹那、顔を上げ咳き込む俺に冷たい視線を向ける八谷。言葉を遮られるかのように静かにそう告げるから、俺は息が止まりそうになった。
なんで今‥そんなこと
「告白っていうか‥返事っていうか‥。
実は俺、中学の初めにスナに告白されたんだーー。」
目の前が真っ暗になるって感覚はこういう時に使うんだろう。
耐えきれずに顔が歪んで、呼吸がひゅっと浅くなった。
俺の知らない欠けていたピースがハマっていくのを感じる。
あぁ、喉が痛え‥頭も痛いし、体が鉄のように重い‥もう何が苦しいのかも分からない‥締め付けられる心臓の辛さに俺は笑ってしまう。
なんだ、そういうことかよ。彼女を作ったから離れたんじゃなくて、告白して気まずくなったから距離取ってたってことか。
やだな‥少し考えれば分かりそうなのに‥振り向いてもらおうと頑張ってた自分に笑えてきた。
知りたくなかったよ、そんな事実。
「最初は男同士だし、悩んで距離置いちゃったけど‥俺、中学の3年間、スナと離れてすげえ悲しかったし後悔した。でも高校で一緒になれて、クラスも同じになってまたスナの隣で笑って楽しくてさ。今度は絶対に側にいようって決めたんだ。
それに久々に再開したら、大人っぽくなってて‥そんなスナ見てたらドキドキしてさ。あぁ、俺もスナのこと好きだったんだって。
早川が屋上で背中押してくれたから気づけた。感謝してる。」
「ッ、八谷‥もう‥分かった、からっ‥」
俺は咳き込みながら、早川に制止の手を向ける。
馴れ初め、どうして今俺にそんなことを言うんだよ‥知ってるってば‥
全部、分かってるから‥頼むから、今はやめてくれ‥もうずっと前からとっくに限界なんだ‥俺はそれほど強くない‥ちゃんと、分かってるからっ‥忘れようとしてるから‥だからっこれ以上はっ‥
「‥スナがさ、そうやって早川に優しくする行動も、親友の延長線っていうか。詳しくは話せないけど家庭の事情でさ。昔から人と接するのが苦手なやつなんだ。俺以外のやつとの距離感分かんなくなって、色んなやつ勘違いさせてた。スナが俺を特別扱いしてるとか、俺にヘイトが向いて面倒だって思ってた時期もあったけど、今はそれが俺だけに向く好意からなんだって気づけて心地いいし。そういう不器用なところも全部好きなんだ。
だから早川にしたスナの行動も理解できる。スナって人がして欲しいこと勘でわかるというか‥優しいからしてあげたくなっちゃうんだよな‥。スナも早川の好きって気持ちを察してやったことだと思うから、だからごめん。勘違いすることしたスナを許してやってほしい。それとさ、今後こんな風に勘違いしてほしくないから俺もスナと話し合うつもりだけど、その間、最近早川が俺達から距離を置いてたように、また少しスナと距離を置いてくれないかな?」
淡々と話す八谷が笑顔でそう俺に問いかかる。
俺は怒りとか悲しみでどうにかなってしまいそうだった。
熱で頭が熱い。そこに血が登ったのか、ぐわりと視界が回って、今にもぶっ倒れそうになる。
容赦なくトドメを刺さされた心が悲鳴をあげている。俺は情けなくも心がボロボロと壊れていくのを感じた。苦しすぎて痛くて目頭が熱くなる。それでも泣くものかとぎゅっと堪える。
どうして八谷にそんなことを決められなくちゃならない。
なんで八谷が謝ってんだよ。関係ないだろ。
一度突き放したのなら、もう近づかないでくれよ。
なんで‥いつもいつも‥
頷けばいい。たった一言、あぁと返事をすればいいのに、黙ってよろよろ立ち上がって、自分の荷物を手に持つ。
俺にもプライドがあったんだな、なんて考えながら、
一歩歩くだけで倒れそうになるのを必死で堪えた。
「‥返事聞けてないんだけど‥帰るのか?‥」
「っ、」
八谷の横を通り抜けようとしたところで、目の前に立ち塞がられて、俺は一瞬たじろぐもドンっと力を込めて八谷を超える。
その際ぶつかった肩の打ちどころが悪かったのか、倒れ込む八谷に一瞬罪悪感が沸いたがもうそれどころではなかった。
「っ、たた‥。はぁ、大丈夫か?タクシーとか呼ぶ?」
「‥いい‥ひとりで、帰れる、から」
「そ、気をつけてな‥あと、
周りをあんまり巻き込まないようにな。傷つくのは早川だけじゃないんだから。」
「ッ、」
うるさい、うるさい
うるさい‥
何も知らないくせに‥なにも‥
なんで俺ばっか、責められなくちゃならないんだよっ
「なにこれ‥どういうこと?」
誰かの声が聞こえて、俺は重い瞼を開ける。
「なんで‥早川がスナの部屋にいんの‥」
夢現、俺はそこにいるはずのない人物に目を見開いた。
部屋のドアの前。怒りと疑問が混ざったような困惑した顔。
っ、八谷‥?なんで‥あれ、俺‥今何時だッ
「、その首っ‥スナがつけたんじゃないよな‥?」
時計を見ようとして、ふと八谷がそう呟いた。
俺の首元に視線を向ける八谷。とっさに首元を隠す。
俺は寝起きの頭をフル回転させる。
なんで八谷がスナの部屋にいるんだよ‥スナは?
ダメだ‥意識が朦朧とする。熱覚ましの薬‥飲む前に寝たからまた熱がぶり返したのか‥視界が回って気持ち悪い‥。
「ち、ちがっ‥ゴホッ、」
否定しようとして、喉の痛みで俺は何度も咳をする。俺にだって分からない。
そんなこと‥スナに聞けばいいだろっ‥
俺は無意識にスナを探す。気配が全く無くて不安になってきた。一緒にいないのか‥?時計は18時を回っていて、学校が終わってもう帰宅しててもいい時間帯だ。
八谷がきゅっと唇を噛み締めて俯くのが見えた。俺は喉の痛みで何度か咳をして、その合間に八谷にスナはどこかと話しかけようと口を開く。
「はち、」
「早川、昨日俺さ。スナに告白しようと思ってたんだ」
「っ、」
刹那、顔を上げ咳き込む俺に冷たい視線を向ける八谷。言葉を遮られるかのように静かにそう告げるから、俺は息が止まりそうになった。
なんで今‥そんなこと
「告白っていうか‥返事っていうか‥。
実は俺、中学の初めにスナに告白されたんだーー。」
目の前が真っ暗になるって感覚はこういう時に使うんだろう。
耐えきれずに顔が歪んで、呼吸がひゅっと浅くなった。
俺の知らない欠けていたピースがハマっていくのを感じる。
あぁ、喉が痛え‥頭も痛いし、体が鉄のように重い‥もう何が苦しいのかも分からない‥締め付けられる心臓の辛さに俺は笑ってしまう。
なんだ、そういうことかよ。彼女を作ったから離れたんじゃなくて、告白して気まずくなったから距離取ってたってことか。
やだな‥少し考えれば分かりそうなのに‥振り向いてもらおうと頑張ってた自分に笑えてきた。
知りたくなかったよ、そんな事実。
「最初は男同士だし、悩んで距離置いちゃったけど‥俺、中学の3年間、スナと離れてすげえ悲しかったし後悔した。でも高校で一緒になれて、クラスも同じになってまたスナの隣で笑って楽しくてさ。今度は絶対に側にいようって決めたんだ。
それに久々に再開したら、大人っぽくなってて‥そんなスナ見てたらドキドキしてさ。あぁ、俺もスナのこと好きだったんだって。
早川が屋上で背中押してくれたから気づけた。感謝してる。」
「ッ、八谷‥もう‥分かった、からっ‥」
俺は咳き込みながら、早川に制止の手を向ける。
馴れ初め、どうして今俺にそんなことを言うんだよ‥知ってるってば‥
全部、分かってるから‥頼むから、今はやめてくれ‥もうずっと前からとっくに限界なんだ‥俺はそれほど強くない‥ちゃんと、分かってるからっ‥忘れようとしてるから‥だからっこれ以上はっ‥
「‥スナがさ、そうやって早川に優しくする行動も、親友の延長線っていうか。詳しくは話せないけど家庭の事情でさ。昔から人と接するのが苦手なやつなんだ。俺以外のやつとの距離感分かんなくなって、色んなやつ勘違いさせてた。スナが俺を特別扱いしてるとか、俺にヘイトが向いて面倒だって思ってた時期もあったけど、今はそれが俺だけに向く好意からなんだって気づけて心地いいし。そういう不器用なところも全部好きなんだ。
だから早川にしたスナの行動も理解できる。スナって人がして欲しいこと勘でわかるというか‥優しいからしてあげたくなっちゃうんだよな‥。スナも早川の好きって気持ちを察してやったことだと思うから、だからごめん。勘違いすることしたスナを許してやってほしい。それとさ、今後こんな風に勘違いしてほしくないから俺もスナと話し合うつもりだけど、その間、最近早川が俺達から距離を置いてたように、また少しスナと距離を置いてくれないかな?」
淡々と話す八谷が笑顔でそう俺に問いかかる。
俺は怒りとか悲しみでどうにかなってしまいそうだった。
熱で頭が熱い。そこに血が登ったのか、ぐわりと視界が回って、今にもぶっ倒れそうになる。
容赦なくトドメを刺さされた心が悲鳴をあげている。俺は情けなくも心がボロボロと壊れていくのを感じた。苦しすぎて痛くて目頭が熱くなる。それでも泣くものかとぎゅっと堪える。
どうして八谷にそんなことを決められなくちゃならない。
なんで八谷が謝ってんだよ。関係ないだろ。
一度突き放したのなら、もう近づかないでくれよ。
なんで‥いつもいつも‥
頷けばいい。たった一言、あぁと返事をすればいいのに、黙ってよろよろ立ち上がって、自分の荷物を手に持つ。
俺にもプライドがあったんだな、なんて考えながら、
一歩歩くだけで倒れそうになるのを必死で堪えた。
「‥返事聞けてないんだけど‥帰るのか?‥」
「っ、」
八谷の横を通り抜けようとしたところで、目の前に立ち塞がられて、俺は一瞬たじろぐもドンっと力を込めて八谷を超える。
その際ぶつかった肩の打ちどころが悪かったのか、倒れ込む八谷に一瞬罪悪感が沸いたがもうそれどころではなかった。
「っ、たた‥。はぁ、大丈夫か?タクシーとか呼ぶ?」
「‥いい‥ひとりで、帰れる、から」
「そ、気をつけてな‥あと、
周りをあんまり巻き込まないようにな。傷つくのは早川だけじゃないんだから。」
「ッ、」
うるさい、うるさい
うるさい‥
何も知らないくせに‥なにも‥
なんで俺ばっか、責められなくちゃならないんだよっ
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