【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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俺から見たお前

俺のーーもの。

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その日、早川は授業中ずっと机に突っ伏していた。俺は心配で今すぐ早川のもとに駆け寄りたい衝動に駆られるが、拒絶されたことを思い出して葛藤する。

休み時間の間、
夏樹が早川を励ましてるのが見て分かった。
早川もそれに応えるように小さく頷き、時折甘えるみたいに夏樹の方へ身体を寄せている。

胸がひりついた。
羨ましくて、惨めで、情けなくて。
俺は視線を逸らすしかなかった。

どうせ俺なんか部外者だ。
目の前に傷ついている早川がいるのに。手を伸ばせば届く距離にいるのに。

俺には触れる資格なんてない。

自分にそう言い聞かせて、切なくなる心臓を握りしめる。

授業が終わってもなお、二人が一緒に教室を出て行く背中を、俺は未練がましく目で追っていた。


「スナ~ここのカフェ美味しいって田中が言っててさ!今から一緒に行こうぜ!」

帰宅途中に、ハチがそんなことを言う。
俺は少し迷ったものの、すぐに笑顔を作って頷いた。

笑え、平気なフリをしなきゃ。




店内に入る。普通のファーストフード店のような雰囲気で、少し安堵した。

それと同時に、やけに距離が近いハチに俺は戸惑う。普段よりもテンションが高くて、俺はハチに合わせようと必死で笑顔を作るが、ここ数日の疲労でうまく笑えない。

疲れ切った表情筋がヒリヒリして、ハチから目線を外す。

不意に、視線を感じて窓の外を見ると、苦しそうな表情の早川がいて思わず目を見開いた。

早川‥?

一瞬でその場を去る人影。
俺は見間違いかと深く息を吐く。


少しして、来店のベルが鳴った。

黒いパーカーを着た猫っ毛の黒髪が、そそくさに奥の部屋へと向かう姿が見えた。

間違いない。やっぱり早川だ。
どうしてここに?

壁が薄いのか、奥の席から早川と、聞いたことのない男の声が漏れ聞こえる。

楽しげな会話。
胸の奥がざわつき、拳を強く握った。

まさか、
今日話してたアプリの相手かーー?

聞こえてくるのは早川の穏やかな声と、相手の男の笑い声。
なんだか、俺は心が無くなっていくような虚無感に襲われる。

早川の存在がやけに遠く感じた。


30分ほど経って、ふと早川の声色が変わったような気がして、俺は疑問に思う。

おかしい。感情が見えない。どこか曖昧で上の空だ。

俺は気になって席を立つ。
八谷にトイレ行くと伝えて、俺は店内の奥へと足を進めた。

ダメだとわかっているのに、少しだけ様子をみようと、個人用のフロアをすれ違いざまにこっそりと覗いていく。

一つの個室。猫っ毛の黒髪が見えて、俺は思わず笑みが溢れた。無意識に伸ばした手の先で、俺よりも先にそれに触れる金髪の男に手を止める。

なに、してんだよ

男が早川の頭に触れていて、全てを壊してしまいたい衝動に駆られた。

怒りで頭がどうにかなりそうだ。

夏樹は、なにしてんだよ‥
やめてくれよ、ほんと‥
お前だけは俺を裏切らないでくれ。

なんで、どうしてと頭で何度もそんな言葉がこだまする。

男の手が早川の頬に移動して、それに擦り寄る早川に全身に血が上り、視界の端が赤く焼けついた。
ーーお前だけは違うと思ってたのに。
信じてたのに。
その考えが、思いが、足元から崩れていく。胸の奥で何かが壊れる音がした。

もういい。
誰でもいいのなら、

俺でもいいだろーー。


「触んな‥」


金髪の男の手を払う。
こいつはだーー。



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