【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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俺から見たお前

知らない話②

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俺は帰路を必死に走った。


胸の奥が押しつぶされそうで息苦しい。
早く早川に会いたい、それだけで脚を動かす。

誰のものでもいい、そう思い込もうとしていた。
けれど胸の底では、ただ閉じ込めてしまいたいそんな衝動ばかりが膨れ上がる。

あいつを、
俺だけのものにしたい。

それはとても醜い感情だった。

夏樹なんかいらない。どこがいいんだ、あんな奴。
俺の方が、早川のことをーー

‥早川のこと?


やっと辿り着いた質素な一軒家。
普段なら何も感じない建物が、今日は妙に温かくて、心の支えのように感じられた。
早川がここにいるーーそれだけで胸が温かくなる。

俺は勢いよくドアを開ける。


「早川、遅くなってごめーー、っー」


想像とは違う人物に、俺は足を止める。

ベッドにその姿がなくて、冷や汗が頬を伝った。

「ハチ‥?なんでここに」

「スナ‥」

なぜ、ハチがここに?早川はどこだ?

帰ったのか‥?まだ体調が悪いはずだろ‥どうして‥。
俺が嫌だったのか‥?少し甘えるのですら嫌なほどに‥
まさか、夏樹のとこに行ったんじゃ‥。

「スナっ、」

返事のない俺にハチが近づいてきて、潤んだ目で俺の名を呼ぶ。

「早川は‥?あいつ、まだ熱があったんだ‥探さないと‥」

絶望で胸が押しつぶされそうになって俺は虚げにそう呟く。すぐさま外に出ようと踵を返した。

「やだ、スナッ!ーー」

「っ、なに、‥ハチ、離せよ‥」

そんな俺を背後から抱きしめてくるハチ。
俺は苛立って、低い声でそう告げる。


「俺スナが好きだよーー。」


俺は目を見開いた。

不意に告げられたハチの言葉に耳を疑う。
なに、言って‥



「中学の時さ、俺に言ってくれたよね‥。」

ぎゅっと俺を抱きしめる力がさらに強まって、背中にハチの額が触れる。

今、好きな奴から告白されているーー。

ずっと考えてきた理想の状況。
俺の心が満たされる道。

それなのに、

胸の奥は全く動かない。


「返事‥ずっと考えてた‥お前に伝えたかった。

スナ、好き。大好きだよーー。」

ハチの真剣な声に、戸惑う。
なんで、心が揺れない?動かない?
俺はこの答えを聞くためにずっと演じてきただろ。ハチを優先して、ハチのために‥全部‥
ーーどうして‥だって俺はハチが好きで‥そう本に書いてあって‥

頭が、混乱する。


「‥ハチ、



ごめん。離してくれないか」

俺はゆっくりとハチの腕を外してそう告げた。

理解できない。信じていたものが根本から壊れていくような。

「っ、」

「ごめん、今、お前の気持ち、考える余裕がねえ‥。」

「、どうして‥好きだって言ってくれたじゃん‥。」

悲痛な声に、胸がぎゅっと痛む。

「‥あぁ、そう言ったな」

「っ、俺が距離置いても、文句の一つも言わなくてッ、高校に入ってからも、変わらずにずっと優しくしてくれたじゃん!俺を誰よりも優先してっ、それなのに急になんで!?、‥早川の、せい、なのか‥?」

「え?」

最後にポツリと呟いた一言に、俺は思わず声を漏らす。

「そっか‥確かにさ‥気持ちの整理ができずに、スナと距離を置いた俺が悪かった。だけど、スナは勘違いしていると思う。」

「勘違い‥?なにが、」

どういうことだ?

胸騒ぎがする。
なんだかすごく嫌な予感がした。


「スナは、早川を俺の代わりだと思ってると思う。」

なっ、

「ちがっ」

「ほんとに?違うって言い切れるの?」

鋭い眼光に、俺は言葉を詰まらせる。

違う‥
代わりなんかじゃない、絶対に。

だけど‥この感情をどう説明したらいいのか、分からない‥自分の気持ちに自信が持てない‥。

「‥、離してくれ‥」

喉が奥が詰まって、顔が歪む。ただその一言を必死で絞り出した。

「っ、わかった‥でも、ちゃんと、考えてみて‥俺待ってるから。」

冷静な顔でそう俺に微笑むハチに不安が押し寄せる。
俺は早川を探すためにそのまま外に飛び出した。

違う‥ハチの代わりなんかじゃない。
だけど、そうじゃなければ?この想いは?ハチが好きな俺の気持ちは?

いったい、

俺は‥




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