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俺から見たお前
お前が好きな人
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◇
息を切らしながら早川の家まで行って、俺はインターホンを鳴らそうとする。だけど、電気のついてない窓に違和感を覚えて、
そこに早川が帰った痕跡がないことに気づいた。
その日の風は生暖かくて、ゾッとするような感覚に包まれる。
ふいに教室での虚な早川の目を思い出した。
嫌な予感がする。
「早川っ、どこだ!早川ッ!」
気づけば俺は周りを気にせず大きな声で早川を探していた。
行きとは違う道を通って、何度も何度も辺りを見回す。
刹那、
隙間道から、靴が見えて、俺は急いでそこに駆け寄った。
「っ、ーー早川!!おい!しっかりしろ!」
「す、な‥?」
俺は目を見開いた。
コンクリートに力なくもたれかかる早川。
その顔は青白くて今にも消えてしまいそうだ。
俺は感じたことのないような恐怖を感じて、すぐに早川の手を掴む。
「早川っ、ごめん、一人にしてごめん‥俺が悪かったからっ、だからっ、勝手に一人で消えんなッーー。」
その細い体を引き寄せる。
放したら二度と会えなくなるような気がして、強く強く抱きしめた。
あぁ‥馬鹿。こんなになって。俺が嫌ならすぐに家に送ったのに。
「顔色が悪りぃ‥ここからだと早川の家の方が近いよな‥?家に連れてくぞ?」
早川の目元を指先で撫でる。少し涙が出ていて、それを優しく拭った。
頬が熱い。熱がぶり返したんだ。
ぐいっとその膝裏と背中に腕を回して早川を抱き抱える。
「早川、待ってろ。もう少しの辛抱だからな。」
◇
「早川、鍵」
早川の返事を聞かずに、カバンの外ポケットから鍵を取り出して開錠する。
刹那、早川が俺の胸を押した。
「もう、大丈夫、だから‥ありがと‥おろ、して‥」
「今日も親御さん仕事行ってんだろ?俺が看病する。」
強がっている早川に俺はため息をつく。
俺が嫌なのは分かるけれど、そんな体で無理するな。看病したらすぐ出ていくから、少しだけ我慢してくれ。
「いいっ、から‥帰れ、よ‥」
「は?なんで?」
こうなると早川は頑固だ。
俺は口で軽く流しながら、早川の家へと入る。
玄関で早川の靴を脱がせようとした時だった。
「っ、下ろして!」
「早川っ、危ねえから‥!あんま暴れんなっうおっ?!」
勢いよく腕の中で暴れる早川を落としそうになって、俺は必死でその体を強く抱きしめる。
一瞬ふらついた拍子に、玄関と入り口の間の段差でつまずき、バランスを崩してしまった。そのまま流れるように倒れこむ。
「ーーうぐっ!い、いてぇ‥せ、背中っ‥ゔう‥は、離せ、よぉ‥」
俺たちは玄関のマットの上に倒れ込んだ。俺は必死に早川の頭を守りながら、床に手をついて早川の上に跨る。その衝撃で腕が痛んで、一瞬顔を歪めるも、下から俺よりも重症だろう早川の唸るような声が聞こえて、心配ながらもその声が面白くて思わず笑ってしまう。
「悪りぃ‥お前が暴れるから‥。」
「~ッ、もう俺に構うなよ!?ゲホッ」
悔しそうに、苛立ったように顔を両手で覆う早川。
大きな声を出したせいか、また咳き込んでいる。
「早川、大丈夫だから、少し落ち着け」
俺は早川の頭をぎゅっと引き寄せて、体勢を起こした。
あまり無理をしたらダメだ。
そのまま子どもをあやすように、背中をよしよしと摩ってやる。
それでも早川が弱い力で抵抗する。
そんなに嫌なのかと俺は少しムッとした。意地悪をして動けないように強くその体を抱きしめる。
ドクドクと早川の鼓動が聞こえてきて、俺はその音に耳を澄ませる。ふいに早川の耳が真っ赤になるのが見えた。
「俺のことっ、好きでもないくせに‥」
刹那、軽くドン、と背を叩かれ、その瞬間、早川がボソリと何かを呟いた。
その一言に心臓が大きく跳ねる。
今、なんて?
好きでもないくせにーー
そう早川は確かに言った。
俺は息を呑む。
裏を返せば、その意味にすぐ気づいた。
バラバラだったパズルが繋がったような気がした。
俺はぶわりと胸が高鳴る。どうしようもないほどに歓喜している自分がいて、
早川が俺に優しい理由。俺優先してくれる理由。
考えればすぐにわかることだったのにーー。
「なぁ‥
お前、俺のことが好きなのか?」
ふと出た言葉は、少し震えていて、
その答えをじっと待つ。
「っ!」
目を見開いて震える早川。
その目は不安げに揺れて、俺を縋るように見つめる。
そんな早川の表情に俺は確信した。
「その反応は図星か。はぁ、そっか。早川とずっと親友でいられたら上手くといくと思ってたんだけど‥でも、
今はぐちゃぐちゃだな。」
自分の考えが全く違って覆されていく事に、不思議と恐怖はなくて、勘違いやその他に呆れて笑みが出た。
俺は冗談まじりに軽くそう告げる。
こんなにも、早川は俺のことを想ってくれてたってことだよな。
振り返れば、当てはまることが多々あった。俺はもしかして鈍感なのか、相当頭が硬いのか‥。
ずっと‥俺のために‥そばに居てくれて、助けてくれて、
馬鹿みたいにその優しさに甘えてた俺に‥答えなんてなくても、お前は俺をずっと想ってくれてたんだなーー。
「す、スナ‥」
震える手で俺の首元のシャツを掴む早川。
パクパクと口を開けたり閉じたりしている。
その動作が可愛く感じて、俺は早川をじっと見つめていた。
何か考えているのだろうか?何度も瞳が揺れて、最後は覚悟を決めたような表情になる。
刹那、ぎゅっと首元に擦り寄ってきた早川に俺はまた嬉しくなって、
早川の体温が伝わるたびに、胸の奥がじんわり満たされていくのを感じた。
背中を抱きしめる手は震えていて、その全部を守りたくなる。俺は早川の鼓動が胸の中で響いていることが、奇跡みたいに思った。
息を切らしながら早川の家まで行って、俺はインターホンを鳴らそうとする。だけど、電気のついてない窓に違和感を覚えて、
そこに早川が帰った痕跡がないことに気づいた。
その日の風は生暖かくて、ゾッとするような感覚に包まれる。
ふいに教室での虚な早川の目を思い出した。
嫌な予感がする。
「早川っ、どこだ!早川ッ!」
気づけば俺は周りを気にせず大きな声で早川を探していた。
行きとは違う道を通って、何度も何度も辺りを見回す。
刹那、
隙間道から、靴が見えて、俺は急いでそこに駆け寄った。
「っ、ーー早川!!おい!しっかりしろ!」
「す、な‥?」
俺は目を見開いた。
コンクリートに力なくもたれかかる早川。
その顔は青白くて今にも消えてしまいそうだ。
俺は感じたことのないような恐怖を感じて、すぐに早川の手を掴む。
「早川っ、ごめん、一人にしてごめん‥俺が悪かったからっ、だからっ、勝手に一人で消えんなッーー。」
その細い体を引き寄せる。
放したら二度と会えなくなるような気がして、強く強く抱きしめた。
あぁ‥馬鹿。こんなになって。俺が嫌ならすぐに家に送ったのに。
「顔色が悪りぃ‥ここからだと早川の家の方が近いよな‥?家に連れてくぞ?」
早川の目元を指先で撫でる。少し涙が出ていて、それを優しく拭った。
頬が熱い。熱がぶり返したんだ。
ぐいっとその膝裏と背中に腕を回して早川を抱き抱える。
「早川、待ってろ。もう少しの辛抱だからな。」
◇
「早川、鍵」
早川の返事を聞かずに、カバンの外ポケットから鍵を取り出して開錠する。
刹那、早川が俺の胸を押した。
「もう、大丈夫、だから‥ありがと‥おろ、して‥」
「今日も親御さん仕事行ってんだろ?俺が看病する。」
強がっている早川に俺はため息をつく。
俺が嫌なのは分かるけれど、そんな体で無理するな。看病したらすぐ出ていくから、少しだけ我慢してくれ。
「いいっ、から‥帰れ、よ‥」
「は?なんで?」
こうなると早川は頑固だ。
俺は口で軽く流しながら、早川の家へと入る。
玄関で早川の靴を脱がせようとした時だった。
「っ、下ろして!」
「早川っ、危ねえから‥!あんま暴れんなっうおっ?!」
勢いよく腕の中で暴れる早川を落としそうになって、俺は必死でその体を強く抱きしめる。
一瞬ふらついた拍子に、玄関と入り口の間の段差でつまずき、バランスを崩してしまった。そのまま流れるように倒れこむ。
「ーーうぐっ!い、いてぇ‥せ、背中っ‥ゔう‥は、離せ、よぉ‥」
俺たちは玄関のマットの上に倒れ込んだ。俺は必死に早川の頭を守りながら、床に手をついて早川の上に跨る。その衝撃で腕が痛んで、一瞬顔を歪めるも、下から俺よりも重症だろう早川の唸るような声が聞こえて、心配ながらもその声が面白くて思わず笑ってしまう。
「悪りぃ‥お前が暴れるから‥。」
「~ッ、もう俺に構うなよ!?ゲホッ」
悔しそうに、苛立ったように顔を両手で覆う早川。
大きな声を出したせいか、また咳き込んでいる。
「早川、大丈夫だから、少し落ち着け」
俺は早川の頭をぎゅっと引き寄せて、体勢を起こした。
あまり無理をしたらダメだ。
そのまま子どもをあやすように、背中をよしよしと摩ってやる。
それでも早川が弱い力で抵抗する。
そんなに嫌なのかと俺は少しムッとした。意地悪をして動けないように強くその体を抱きしめる。
ドクドクと早川の鼓動が聞こえてきて、俺はその音に耳を澄ませる。ふいに早川の耳が真っ赤になるのが見えた。
「俺のことっ、好きでもないくせに‥」
刹那、軽くドン、と背を叩かれ、その瞬間、早川がボソリと何かを呟いた。
その一言に心臓が大きく跳ねる。
今、なんて?
好きでもないくせにーー
そう早川は確かに言った。
俺は息を呑む。
裏を返せば、その意味にすぐ気づいた。
バラバラだったパズルが繋がったような気がした。
俺はぶわりと胸が高鳴る。どうしようもないほどに歓喜している自分がいて、
早川が俺に優しい理由。俺優先してくれる理由。
考えればすぐにわかることだったのにーー。
「なぁ‥
お前、俺のことが好きなのか?」
ふと出た言葉は、少し震えていて、
その答えをじっと待つ。
「っ!」
目を見開いて震える早川。
その目は不安げに揺れて、俺を縋るように見つめる。
そんな早川の表情に俺は確信した。
「その反応は図星か。はぁ、そっか。早川とずっと親友でいられたら上手くといくと思ってたんだけど‥でも、
今はぐちゃぐちゃだな。」
自分の考えが全く違って覆されていく事に、不思議と恐怖はなくて、勘違いやその他に呆れて笑みが出た。
俺は冗談まじりに軽くそう告げる。
こんなにも、早川は俺のことを想ってくれてたってことだよな。
振り返れば、当てはまることが多々あった。俺はもしかして鈍感なのか、相当頭が硬いのか‥。
ずっと‥俺のために‥そばに居てくれて、助けてくれて、
馬鹿みたいにその優しさに甘えてた俺に‥答えなんてなくても、お前は俺をずっと想ってくれてたんだなーー。
「す、スナ‥」
震える手で俺の首元のシャツを掴む早川。
パクパクと口を開けたり閉じたりしている。
その動作が可愛く感じて、俺は早川をじっと見つめていた。
何か考えているのだろうか?何度も瞳が揺れて、最後は覚悟を決めたような表情になる。
刹那、ぎゅっと首元に擦り寄ってきた早川に俺はまた嬉しくなって、
早川の体温が伝わるたびに、胸の奥がじんわり満たされていくのを感じた。
背中を抱きしめる手は震えていて、その全部を守りたくなる。俺は早川の鼓動が胸の中で響いていることが、奇跡みたいに思った。
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