【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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俺から見たお前

約束

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『これ以上迷惑をかけるなよ。次に連絡が来たら貸家を解約するからな』

朝方、そんなメッセージが父から届いていて、俺は小さく息を吐いた。

ベッドで眠る早川の頬を撫でる。呼吸はだいぶ安定したけれど、まだ熱が高い。


俺は側にいてとそう縋りつく早川を思い出す。
看病をする予定だったのに。うまくいかないな。

スヤスヤと規則正しい呼吸で眠る早川はどこか幼なげで俺は目を細めた。

そんな寝顔を眺めていると、ふと、昨日の早川の言葉が浮かんでくる。

好きなこと、か‥
当たり前の光景。誰もいない親が借りた家にひとりで住む自分。できることなら‥自由に生きてみたい。バイトを始めて一人暮らしをして、大学に行くなら学費を貯めるのも悪くない。

今まで思いつきもしなかった。

自分は何になりたいのか。
何をしたいのか。

思い浮かべるたびに広がる未来に、ドキドキと胸が高鳴る。俺は初めて未来に期待と楽しさを見出していた。

「ほんとうに‥お前は俺にいろんなものをくれるよな」

大学は早川と同じ所へ行きたい。大学から近い少し広い部屋を借りて、早川も一緒にどうかって誘う。

きっと断られるだろうけど、もし、ほんの一握りでも可能性があるなら、すげえ毎日が温かくて‥楽しいだろうな。

「早川、行ってくる‥少しだけ待っててくれ」

俺は制服に着替え、寝ているのをいいことに早川の額に口付ける。

その日は久しぶりに足取りが軽くて、不思議と口元が緩んでいた。





「あの、スナ‥昨日‥大丈夫だったか?‥」

教室に入ってすぐに八谷が目を合わせずに俺にそう聞く。

「あぁ。先に帰って悪かった。」

ハチに昨日のことを謝罪して、俺は1限の授業の教科書を探す。そういえば、早川が休むことを伝えていない。家庭の事情は理解しているはずだから、後で担任にでも言っておくか。

八谷がぐっと手を握りしめた。

「今日さ、晩飯一緒に食わねえ?昨日の埋め合わせってことで!」

明るくそう提案するハチ。俺はすぐにその誘いを断る。

「わりぃ、今日は無理だ。別の日でいいか?」


今朝は安定していたけれど、まだ熱は下がっていない。昨日は薬を飲まずに眠ってしまったから、もし悪化していたらまた病院に連れて行かないと。

ふいにハチが俺の手を握る。俺は教科書を探す手を止めて、どうしたのかとハチを見上げた。


「っ、スナ、俺スナに話したいことがあるんだ‥だから、だからさ‥」

「ハチ‥ごめん。今日は本当に無理なんだ。」

引かないハチに俺は視線を合わせて真剣にそう告げる。

また行きたい店の話とかだろうか。
早川が回復したらいくらでも聞くから、今日は駄目だ。

昨日、早川に約束した言葉。

″側にいる

早川がどう思ってるのか分からないけれど、そう言ったからには守りたい。



「、わかった‥無理に誘ってごめん。」

ハチがとぼとぼと自分の席に戻っていくから、俺は少し罪悪感を覚えるが、その気持ちもすぐにチャイムの本鈴の音でかき消された。


早川がいない理由を、出席を取る担任に伝える。

ドア付近で夏樹が「え」と声を漏らしたが、俺は素知らぬふりをして席に座り直した。



授業の合間、スマホのメッセージを開いて、何度も早川にメッセージを送る。

やりたいこと、なんて言われてしまえば、どんどんと俺は甘えだけの人間になってしまいそうだ。

早川からの返信が返って来なくて焦って、何度もメッセージを繰り返し送るものだから、自分でも呆れてドン引きそうになる。

倒れたりしてないだろうか?

お昼を過ぎても早川からの返事がなくて、俺はとうとう心配になる。

泣いていた早川は弱々しくて壊れてしまいそうだった。それを思い出すと居ても立っても居られない。

ーー行かないで、と昨日早川は言っていた。
それなのに、俺は今早川をひとりにしている。

もしかして早川を怒らせたんじゃ。

謝罪のメッセージを送って、連絡してくれと付け加えた。
まるでストーカーみたいだと思いながらも心配でたまらなかった。


最後の授業が終わり、俺は急いで帰宅しようとして、刹那誰かに腕を掴まれた。

俺はその人物に眉を顰める。

「夏樹‥」

「‥ねぇ‥ちょっと話があるんだけど‥」






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