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第1章 始まりの街『グリィト』
第7話 血の匂い
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「――――うぅぅっひゃぁぁああああ~~! は、ははは、速ぁぁぁああああ~~~っ!?」
「ほれほれ、こんな山道など軽くすっ飛ばして行くぞ!」
幼女の間抜けな声が森に吸い込まれていく。
今のわたしは、神獣のフェンリルことモッフィの背中に乗せてもらい、山の中を爆走していた。
モッフィはこの程度の山道は屁でもないようで、ズドドドド! と凄まじい速度で進んで行った。
「おおお落ち、落ち、落ち落ち落ちるってぇぇえええええええ~~~っ!?」
「安心せい。我が魔力でしっかりとアイリの体を固定しておるから、万に一つも落下の心配はないわ。ゆえに、さらに速度を上げるぞ!」
「なぁぁああああんでだよぉぉおおおおお~~っ!!」
わたしはジェットコースターさながらの絶叫体験にさっきからずっと情けない声をあげっぱなしだ。
何度もストップと言ってるのに、モッフィはちっとも速度を緩めてくれない。
このフェンリル、鬼畜属性も併せ持っているのかー!!
「……む?」
不意に、モッフィの走る勢いが弱まった。
おっ、わたしが心の中で叫んでいた怒りの声が届いた?
「ふ、ふひゃぁぁ~……!」
私はぐったりとモッフィのもふもふ毛並みに上半身を寝そべらせた。残業終わりに自宅のベッドに崩れ落ちるあの感覚。
モッフィの背中に股がったままだけど、幼女の小さい体だと単にもふもふベッドにうつ伏せで寝っ転がってるみたいな感じだった。
はあぁ~、モッフィは鬼畜だけど、もふもふ毛皮は気持ちぃぃ~~!!
かすかに揺れるモッフィの背中で体を休めながら、少しだけ頭をもたげる。
「アイリよ。一応言っておこうかと思うのじゃが」
「ん? どうしたのモッフィ?」
「――かすかに、血の匂いがするのぅ」
「え!」
思わず、ガバッ、と起き上がる。
「ち、血の匂いって……!?」
「耳を澄ませば、遠くで何者かが戦っておる音も聞こえる。魔物の唸り声も混じっておるがゆえ、人間と魔物が交戦しておると見るのが妥当か」
魔物と戦ってる人間って、もしかして冒険者かな?
いや、でもまだ分からないか。
「どうする。我らが向かっておるルートからは外れるが、行ってみるか?」
異世界の魔物と邂逅するのは怖さもあるけど……人の命には代えられない!
「……うん! 命の危険がある人もいるかもしれないし、助けに行こう!」
「ふっ、承知じゃ!」
モッフィはぐるんと右に方向転換。
その動きに従って、わたしの体は左に大きく傾いてしまう。
モッフィの魔力のおかげで絶対に落ちないようになっているから落下はしないけど、普通なら簡単に振り落とされているね、これ。
鬱蒼と生い茂る木々の隙間を縫うようにすり抜け、モッフィが巧みに走り抜く。
すると、ほどなくして現場に到着できた。
わたしの耳にも、かすかに剣を打ちつける音や人の雄叫びみたいな声が聞こえてくる。
「――あ、いた! あそこに人影が!」
木々の向こうに、開けた空間がある。
正規の通り道なのか、私たちが降りてきた山道よりもだいぶ人の手が加えられている大地だった。
モッフィは森から抜ける直前で止まり、様子をうかがった。
「見たところ、荷馬車が襲われておるようじゃのう。あの蟻のような魔物は――」
「幼女の知識を借りると……ブラックアントか!」
一応、鑑定スキルでも確かめる。
―――――――――――――――――――
ブラックアント:集団で行動する蟻の魔物。体長は人間に匹敵するか、一回り大きい。上位個体はさらに巨大な体格を有する。鎧のように硬質な外骨格に覆われており、物理攻撃が通りにくい。群れを相手にすると非常に危険。
―――――――――――――――――――
木の陰から様子をうかがっている間に、荷馬車の周囲を守るように剣を構える剣士が吠えた。
「クッ、食らえぇぇえええ!!」
「ギュグググ……!」
剣士が振り下ろした剣は、ブラックアントの頭に直撃するもガキィンと弾かれてしまった。
蟻の頭を少し凹ませて傷をつけたものの、あまりダメージを負ったようには見えない。
「ギュグァァアアア!!」
「――ぐぁあああああ!!」
剣士の苦悶の叫びが響いた。
ブラックアントの反撃を受け、鋭い前足で肩の辺りを引き裂かれたようだった。
痛々しい傷口と、鮮血がぼたたっと地面を濡らす。
「は、早く助けないと!」
反射的にサングラスをずらして魔眼を露出させようとした瞬間、ピタリと体が止まる。
それは、一つの致命的な懸念点。
「わたしの魔眼でやっつけてもいいけど、人が多い……!」
魔眼による魔法は良くも悪くも制御ができない。
ああいった、人と魔物が混戦しているような状況だと、救うべき人たちまで傷つけてしまう恐れがある。
しかし、こうして躊躇している間にも、少しずつブラックアントの数が増えている。
今は全部で十五体といったところ――!
どうしようか迷っているわたしに、威厳のある声音が響いた。
「ならば、ここは我に任せるが良い」
「モッフィ! できるの!?」
「我を誰と心得ておる。要は、人間を助けて魔物だけを仕留めれば良いのじゃろう?」
わたしが乗るおっきなもふもふフェンリルのモッフィは、ニヤリと笑う。
そして、体に魔力を集めた。
「かような蟻ごとき、我の敵にもならぬわ。アイリよ、目が眩まぬよう目蓋を閉じておくのじゃぞ!」
「え!」
モッフィは即座に高密度の魔力の気流を展開すると――ピカッと弾けた。
すると、モッフィの周囲から金色の光の球体のようなものが複数出現。凄まじい輝きがわたしの全身を照らし尽くす。
「光と塵となり、消え失せるが良い! ――セイクリッドアークッ!!」
モッフィが吠える。
その瞬間、光の球体たちは一斉に荷馬車の方へ飛んでいき、ブラックアントに命中した。
「ギュグァ!?」
「グギャ!」
「ギャグガァ!」
ブラックアントの悲鳴。
と同時、光の球体はブラックアントの硬質な外骨格を易々と貫通し、蟻の胸部に風穴を開けていた。
ドロリ、と不気味な体液をぶちまけるブラックアントたちは、一斉にバタバタと倒れていく。
「す、すごい! 全部一撃じゃん!」
「ふん、これくらい容易きことじゃ」
驚嘆して褒めるわたしに、モッフィは至極当然も言わんばかりに鼻を鳴らした。
「それよりも、目は大丈夫か? 我の魔法は聖なる魔力が強すぎるがゆえ、人間が近くにいるとあまりの輝きに目眩ましとなってしまうことがあるのじゃが」
「いや、わたしは全然平気だったよ。てか、普通に目開けてモッフィの攻撃見てたんだけど……あ、そうか! このサングラスのおかげか!」
わたしは装着したサングラスに触れる。
このサングラスをずっと着けてたから、眩し過ぎるモッフィの魔法を至近距離で見てもへっちゃらだったんだ!
……まさかアスティアーネ様から貰った『神のサングラス』が、本来のサングラスと同じ用途でも使うことになるとは。
もしこれが普通のメガネ型だったらモッフィの魔法で目が焼かれてたかもだし、サングラス型の神器にしてくれたのは結果的に良かったかも?
「モッフィ! わたしはこの『神のサングラス』があるから、モッフィの聖属性魔法? みたいなやつを間近でガン見しても問題ないみたいだよ!」
「ふむ。本来ならばたとえそのような薄い黒レンズで目を覆ったとて我の魔法をガン見などできぬはずじゃが……腐ってもアスティアーネの加護付きということかの」
どうやらそうらしい。
致命的なポカはやらかすけど、アスティアーネ様もしっかりと女神の力を持ってるみたいだ。
すると、今度は複数の人間がわたしたちに武器を構えていた。
「だ、誰だ!」
「ま、まさか別の魔物、か……!?」
「だが、ブラックアントしか攻撃してないみたいだが……!」
突然モッフィが攻撃をしかけたことにより、人間たちの注意を引き付けてしまった。
見た目からして、剣士、魔法使い、タンク、かな?
ブラックアントと戦っていた冒険者らしき人たちの警戒心が、今度はわたしたちに向けられる。
「アイリよ。何やら我らが敵視されておるようじゃが」
「ま、まあ、姿も見せずに隠れて攻撃したらそうなるよね。モッフィ、ここは正直に名乗り出よう」
「ふむ、アイリがそう言うのならば我は構わんが」
モッフィの了承も取り付け、ゆっくりと前進してもらう。
ざっ、ざっ、ざっ、と草木をかき分けて進むモッフィと、その背に乗る幼女《わたし》。
次第にモッフィの姿が木々の影から浮かび上がり、その輪郭が鮮明になっていく。
それに従って、冒険者たちの表情が絶望に塗り替えられていった。
「こ、こいつ……は……ッ!!」
「お、終わっ、た……」
「おいおい、嘘だろ……!?」
そして、わたしたちは太陽の下に姿を晒す……けど、なんかすでに冒険者たちの顔から戦意が喪失していた。
魔法使いの女性が、ドサッと大きな杖を落とす。
モッフィに食い殺されると思っているのかな。
まあ、モッフィって間近で見たら迫力すごいもんね。
(でも、こういう時こそ幼女の出番! ゆるふわ金髪幼女が可愛く話しかけたら、警戒心も薄れるでしょ! 怪しいグラサンはご愛嬌だ!)
初エンカウントの異世界の住人。
わたしはコホンと咳払いをして緊張を吹き飛ばし、可愛らしさMAXの笑顔で冒険者たちに挨拶をした。
「皆さんこんにちは~。私、アイリって言います! 皆さんを助けに来ただけなので、安心してくだしゃい!」
幼女の可愛いオーラを振り撒く。
あえて舌足らずな幼女の言葉遣いも再現してね。
はいそこ、あざといとか言わない!
なーんて、自分でツッコミを入れてみるけれど。
「「「………………は?」」」
幼女の登場を見て、冒険者たちは同時に間の抜けた声を漏らした。
「ほれほれ、こんな山道など軽くすっ飛ばして行くぞ!」
幼女の間抜けな声が森に吸い込まれていく。
今のわたしは、神獣のフェンリルことモッフィの背中に乗せてもらい、山の中を爆走していた。
モッフィはこの程度の山道は屁でもないようで、ズドドドド! と凄まじい速度で進んで行った。
「おおお落ち、落ち、落ち落ち落ちるってぇぇえええええええ~~~っ!?」
「安心せい。我が魔力でしっかりとアイリの体を固定しておるから、万に一つも落下の心配はないわ。ゆえに、さらに速度を上げるぞ!」
「なぁぁああああんでだよぉぉおおおおお~~っ!!」
わたしはジェットコースターさながらの絶叫体験にさっきからずっと情けない声をあげっぱなしだ。
何度もストップと言ってるのに、モッフィはちっとも速度を緩めてくれない。
このフェンリル、鬼畜属性も併せ持っているのかー!!
「……む?」
不意に、モッフィの走る勢いが弱まった。
おっ、わたしが心の中で叫んでいた怒りの声が届いた?
「ふ、ふひゃぁぁ~……!」
私はぐったりとモッフィのもふもふ毛並みに上半身を寝そべらせた。残業終わりに自宅のベッドに崩れ落ちるあの感覚。
モッフィの背中に股がったままだけど、幼女の小さい体だと単にもふもふベッドにうつ伏せで寝っ転がってるみたいな感じだった。
はあぁ~、モッフィは鬼畜だけど、もふもふ毛皮は気持ちぃぃ~~!!
かすかに揺れるモッフィの背中で体を休めながら、少しだけ頭をもたげる。
「アイリよ。一応言っておこうかと思うのじゃが」
「ん? どうしたのモッフィ?」
「――かすかに、血の匂いがするのぅ」
「え!」
思わず、ガバッ、と起き上がる。
「ち、血の匂いって……!?」
「耳を澄ませば、遠くで何者かが戦っておる音も聞こえる。魔物の唸り声も混じっておるがゆえ、人間と魔物が交戦しておると見るのが妥当か」
魔物と戦ってる人間って、もしかして冒険者かな?
いや、でもまだ分からないか。
「どうする。我らが向かっておるルートからは外れるが、行ってみるか?」
異世界の魔物と邂逅するのは怖さもあるけど……人の命には代えられない!
「……うん! 命の危険がある人もいるかもしれないし、助けに行こう!」
「ふっ、承知じゃ!」
モッフィはぐるんと右に方向転換。
その動きに従って、わたしの体は左に大きく傾いてしまう。
モッフィの魔力のおかげで絶対に落ちないようになっているから落下はしないけど、普通なら簡単に振り落とされているね、これ。
鬱蒼と生い茂る木々の隙間を縫うようにすり抜け、モッフィが巧みに走り抜く。
すると、ほどなくして現場に到着できた。
わたしの耳にも、かすかに剣を打ちつける音や人の雄叫びみたいな声が聞こえてくる。
「――あ、いた! あそこに人影が!」
木々の向こうに、開けた空間がある。
正規の通り道なのか、私たちが降りてきた山道よりもだいぶ人の手が加えられている大地だった。
モッフィは森から抜ける直前で止まり、様子をうかがった。
「見たところ、荷馬車が襲われておるようじゃのう。あの蟻のような魔物は――」
「幼女の知識を借りると……ブラックアントか!」
一応、鑑定スキルでも確かめる。
―――――――――――――――――――
ブラックアント:集団で行動する蟻の魔物。体長は人間に匹敵するか、一回り大きい。上位個体はさらに巨大な体格を有する。鎧のように硬質な外骨格に覆われており、物理攻撃が通りにくい。群れを相手にすると非常に危険。
―――――――――――――――――――
木の陰から様子をうかがっている間に、荷馬車の周囲を守るように剣を構える剣士が吠えた。
「クッ、食らえぇぇえええ!!」
「ギュグググ……!」
剣士が振り下ろした剣は、ブラックアントの頭に直撃するもガキィンと弾かれてしまった。
蟻の頭を少し凹ませて傷をつけたものの、あまりダメージを負ったようには見えない。
「ギュグァァアアア!!」
「――ぐぁあああああ!!」
剣士の苦悶の叫びが響いた。
ブラックアントの反撃を受け、鋭い前足で肩の辺りを引き裂かれたようだった。
痛々しい傷口と、鮮血がぼたたっと地面を濡らす。
「は、早く助けないと!」
反射的にサングラスをずらして魔眼を露出させようとした瞬間、ピタリと体が止まる。
それは、一つの致命的な懸念点。
「わたしの魔眼でやっつけてもいいけど、人が多い……!」
魔眼による魔法は良くも悪くも制御ができない。
ああいった、人と魔物が混戦しているような状況だと、救うべき人たちまで傷つけてしまう恐れがある。
しかし、こうして躊躇している間にも、少しずつブラックアントの数が増えている。
今は全部で十五体といったところ――!
どうしようか迷っているわたしに、威厳のある声音が響いた。
「ならば、ここは我に任せるが良い」
「モッフィ! できるの!?」
「我を誰と心得ておる。要は、人間を助けて魔物だけを仕留めれば良いのじゃろう?」
わたしが乗るおっきなもふもふフェンリルのモッフィは、ニヤリと笑う。
そして、体に魔力を集めた。
「かような蟻ごとき、我の敵にもならぬわ。アイリよ、目が眩まぬよう目蓋を閉じておくのじゃぞ!」
「え!」
モッフィは即座に高密度の魔力の気流を展開すると――ピカッと弾けた。
すると、モッフィの周囲から金色の光の球体のようなものが複数出現。凄まじい輝きがわたしの全身を照らし尽くす。
「光と塵となり、消え失せるが良い! ――セイクリッドアークッ!!」
モッフィが吠える。
その瞬間、光の球体たちは一斉に荷馬車の方へ飛んでいき、ブラックアントに命中した。
「ギュグァ!?」
「グギャ!」
「ギャグガァ!」
ブラックアントの悲鳴。
と同時、光の球体はブラックアントの硬質な外骨格を易々と貫通し、蟻の胸部に風穴を開けていた。
ドロリ、と不気味な体液をぶちまけるブラックアントたちは、一斉にバタバタと倒れていく。
「す、すごい! 全部一撃じゃん!」
「ふん、これくらい容易きことじゃ」
驚嘆して褒めるわたしに、モッフィは至極当然も言わんばかりに鼻を鳴らした。
「それよりも、目は大丈夫か? 我の魔法は聖なる魔力が強すぎるがゆえ、人間が近くにいるとあまりの輝きに目眩ましとなってしまうことがあるのじゃが」
「いや、わたしは全然平気だったよ。てか、普通に目開けてモッフィの攻撃見てたんだけど……あ、そうか! このサングラスのおかげか!」
わたしは装着したサングラスに触れる。
このサングラスをずっと着けてたから、眩し過ぎるモッフィの魔法を至近距離で見てもへっちゃらだったんだ!
……まさかアスティアーネ様から貰った『神のサングラス』が、本来のサングラスと同じ用途でも使うことになるとは。
もしこれが普通のメガネ型だったらモッフィの魔法で目が焼かれてたかもだし、サングラス型の神器にしてくれたのは結果的に良かったかも?
「モッフィ! わたしはこの『神のサングラス』があるから、モッフィの聖属性魔法? みたいなやつを間近でガン見しても問題ないみたいだよ!」
「ふむ。本来ならばたとえそのような薄い黒レンズで目を覆ったとて我の魔法をガン見などできぬはずじゃが……腐ってもアスティアーネの加護付きということかの」
どうやらそうらしい。
致命的なポカはやらかすけど、アスティアーネ様もしっかりと女神の力を持ってるみたいだ。
すると、今度は複数の人間がわたしたちに武器を構えていた。
「だ、誰だ!」
「ま、まさか別の魔物、か……!?」
「だが、ブラックアントしか攻撃してないみたいだが……!」
突然モッフィが攻撃をしかけたことにより、人間たちの注意を引き付けてしまった。
見た目からして、剣士、魔法使い、タンク、かな?
ブラックアントと戦っていた冒険者らしき人たちの警戒心が、今度はわたしたちに向けられる。
「アイリよ。何やら我らが敵視されておるようじゃが」
「ま、まあ、姿も見せずに隠れて攻撃したらそうなるよね。モッフィ、ここは正直に名乗り出よう」
「ふむ、アイリがそう言うのならば我は構わんが」
モッフィの了承も取り付け、ゆっくりと前進してもらう。
ざっ、ざっ、ざっ、と草木をかき分けて進むモッフィと、その背に乗る幼女《わたし》。
次第にモッフィの姿が木々の影から浮かび上がり、その輪郭が鮮明になっていく。
それに従って、冒険者たちの表情が絶望に塗り替えられていった。
「こ、こいつ……は……ッ!!」
「お、終わっ、た……」
「おいおい、嘘だろ……!?」
そして、わたしたちは太陽の下に姿を晒す……けど、なんかすでに冒険者たちの顔から戦意が喪失していた。
魔法使いの女性が、ドサッと大きな杖を落とす。
モッフィに食い殺されると思っているのかな。
まあ、モッフィって間近で見たら迫力すごいもんね。
(でも、こういう時こそ幼女の出番! ゆるふわ金髪幼女が可愛く話しかけたら、警戒心も薄れるでしょ! 怪しいグラサンはご愛嬌だ!)
初エンカウントの異世界の住人。
わたしはコホンと咳払いをして緊張を吹き飛ばし、可愛らしさMAXの笑顔で冒険者たちに挨拶をした。
「皆さんこんにちは~。私、アイリって言います! 皆さんを助けに来ただけなので、安心してくだしゃい!」
幼女の可愛いオーラを振り撒く。
あえて舌足らずな幼女の言葉遣いも再現してね。
はいそこ、あざといとか言わない!
なーんて、自分でツッコミを入れてみるけれど。
「「「………………は?」」」
幼女の登場を見て、冒険者たちは同時に間の抜けた声を漏らした。
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