グラサン幼女の異世界とらべるっ! ~最強の【魔眼】を宿す転生幼女は、もふかわ神獣を連れてスローライフな旅路を楽しみます~

空戯ケイ

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第1章 始まりの街『グリィト』

第19話  薬草たくさんゲットだぜ!

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 魔眼の暴発によって森に大魔法を二発撃ち込んでしまい、泣きながら退散してしばらく。

 わたしは、森を進むモッフィの背中にうつ伏せで倒れ込んでいた。 
 しかと装着した『神のサングラス』が、キラーンと光る。

「うぅ~……わたしは綺麗な景色すら楽しむことができないのかぁ! くそぉ~……!」

 もふもふに顔を突っ込んでぼやく。
 やけ酒でもかましたい気分だ。幼女の肉体だから飲まないけど。

 モッフィは面倒くさそうに告げる。

「いつまで気を落としておるのじゃ。たかが森を俯瞰して見下ろしただけであろう。何をそこまで残念がっておる」
「……ふん! 最初から異世界に住んでる神獣さんには分かりませんよぉ~だ」
「全く、気を取り直すのじゃ。ここには薬草採取に来たのであろう!」
「むぅ」

 ……まあ、それはその通りだ。
 ここに来たのは、薬草採取のクエストを達成するため。
 いつまでも落ち込んでても仕方ないか。

「――分かったよ! 薬草を探そう!」
「その意気じゃ。さっさと薬草を入手せねざ、くろわっさんがどんどん遠退くならのぅ!」

 そんな話をしていると、だんだんと木々を抜けてきた。
 すると、そこは草原が広がっていた。
 ここら変の一角だけ樹木はなく、草花がメインで咲き誇っていた。
 上空から森を撮影したなら、きっとこの場所だけ十円ハゲのように薄く見えていることだろう。

「もしかしたら、ここなら薬草が生えてるかも! ちょっと探してみようよ!」

 わたしはピョンとモッフィのもふもふ背中から降りて、自分の足で草原に足を踏み入れた。
 たたたっと駆け出してみる。
 辺りに人気ひとけはない。
 モッフィに山頂付近まで連れてこられたから、あんまりこの辺りまでやってくる人はいないのだろう。

「――きゅう!」
「あ、ウサギさん!」

 わたしが草原に分け入ると、三匹くらいのウサギさんが慌てて逃げ出した。
 かわいい。

「さぁて! ペロナ草とヒールフラワーっぽい薬草は生えてないかな~」

 わたしはしゃがんで地面に生える草を観察する。

 試しに、草むらに向かって『鑑定』を発動してみた。

 ―――――――――――――――――――
【雑草】:どこにでも生えている雑草
 ―――――――――――――――――――

 うん、そうだよね。
 これはただの草だ。
 鑑定結果を見て、冷静に納得する。

「うーん、でも近くに生えてるのはだいたいこの雑草だよね」

 辺りを見渡しつつ、マジックバッグから依頼書を手に取る。
 依頼書に描かれたペロナ草とヒールフラワーの絵を見てみるけど、パッと見それらしき薬草は付近には見当たらない。

「探す場所を変えた方がいいのかな? たとえば……」

 少し離れた場所に、大きな岩があった。

 その岩に行ってみて、岩影にしゃがんでみる。

「お、あった! これペロナ草じゃない!?」

 岩の隙間からにょきっと出ている分厚い葉っぱがあった。
 まるで舌をべーっと出したような肉厚の葉を持つ草。依頼書のペロナ草と同じ見た目だ。
 改めて、『鑑定』を発動してみる。

 ―――――――――――――――――――
【ペロナ草】:薬草の一つ。食欲増進効果があり、ポーションや栄養ドリンクの作製時に使用される。
 ―――――――――――――――――――

「やったー! 見つけた! 薬草ゲットだー!」

 わたしはぶちっとペロナ草の根本を折って喜ぶ。
 これこそまさに追い求めていた薬草、ペロナ草だ!

「なんじゃ。早速目当ての薬草を見つけたのか。その調子なら、すぐに薬草採取は終わりそうじゃのぅ!」
「そうかも! 薬草って、こういうちょっと隠れた場所に生えてるのかな?」

 あるいは、目立つ所に生えていた薬草はすでに人間や魔物に取られ尽くしている可能性もある。
 いずれにせよ、パッと見で分かりにくい場所を調べてみると薬草と出会えそうだ。

「モッフィも探すの手伝ってよ! こういう岩影とかに変わった形の植物が生えてないかさ!」
「むぅ。かような草探しなど面倒なのじゃが……くろわっさんのためならば仕方あるまい!」

 そうして、わたしとモッフィは近場の隠れスポット的な場所を手当たり次第に洗っていった。

 岩影の周囲、密集した茂みの間、果てには木々の裏側まで。

 そうした捜索の甲斐あってか、一時間ほどでかなり大量の薬草をゲットすることができた。

「やったやった! 大収穫だ! けっこう採れたよ!」
「我が探すのを手伝ったからのぅ! 当然じゃ!」

 喜ぶわたしと、得意気に笑うモッフィ。

 わたしは早速、採った薬草を種類別に並べてみた。
 まとめて『鑑定』して数を数えてみると、内訳は以下の通り。


 ペロナ草、十三本。

 ヒールフラワー、七輪。

 ビリリ草、二本。

 スヤァ草、一本。


「なんか知らない薬草も二種類ほど混ざってるな。ただ、まずは依頼にあったヒールフラワーを調べてみよう」

 ヒールフラワーに『鑑定』を発動させ、鑑定文を読んでみる。

 ―――――――――――――――――――
【ヒールフラワー】:薬草の一つ。傷を治す回復効果があり、回復ポーションや傷薬の製作時に使用される。そのまま食べても、少し体調が改善する。
 ―――――――――――――――――――

「ふむふむ。ヒールフラワーは名前の通りの効果がある薬草みたいだね。いかにも癒してくれそうだ」

 しかし、わたしは残る二種類の薬草に目を向けた。

「ところで、この薬草たちはなんだろう? 偶然見つけたからとりあえず採っといたんだけど」

 まずはサンダーのようなジグザグの植物を見た。そのジグザグ部分は黄色く染まっていて、まるで雷みたい。
 触ると、ちょっとピリリとした鱗粉みたいな粉が付着した。

 鑑定結果は次のとおり。

 ―――――――――――――――――――
【ビリリ草】:薬草の一つ。食べると体に軽度の痺れが出る効果がある。魔物や動物を捕らえる麻痺罠の製作時に使用される。食べると舌がピリピリと痺れ、滋養強壮効果もある。しかし、食べ過ぎると一時全身が麻痺してしまうため、摂取量には注意が必要。
 ―――――――――――――――――――

「この薬草、麻痺属性があるの!? 触った時にピリリとしたのはそのせいか……! 一応食べられるみたいだけど……口に入れてみる勇気はないな」

 罠の製作に使うとか書いてるし。
 滋養強壮効果もあるみたいだけど、元気いっぱいの幼女であるわたしには無縁の代物だ。

「で、最後はこの薬草だね」

 残る謎の薬草。一時間薬草を探してたった一本だけ見つけたレア薬草だ。
 この薬草は、乳白色のシャボン玉のような部分が印象的だ。これが花なのか種なのか実なのか分からないけど、バブルのようなふわふわ感がある。
 例えるなら、たんぽぽの種が密集したふわふわの綿毛をもっと透明にして透き通らせた感じかな? 
 見ようによっては、鼻ちょうちんのように見えなくもない。

 鑑定文を見てみた。

 ―――――――――――――――――――
【スヤァ草】:薬草の一つ。非常に高い睡眠効果があり、睡眠薬や睡眠罠の製作時に使用される。食べると強烈な眠気に襲われるため、不眠症の治療薬に使われる。食べ過ぎると昏睡状態に陥ることもあるため、摂取量には注意が必要。
 ―――――――――――――――――――
 
 なに、睡眠薬!?
 ミンザイかぁ……!

 わたしは、うげぇ、と気分が悪くなった。

「睡眠薬とか……社会人成り立ての頃とかよく飲んでたなぁ。深夜残業当たり前で、夜中までずっとパソコン見てると脳が覚醒しちゃって仕事が終わっても寝付けないんだよね。それが何日か続くと眠れるようになるんだけど……いや、あれは眠ってたというか単純に気絶してただけかな」

 でも次の日も早朝出社しないといけないから、睡眠の満足度は低い。
 てか、体が完全に適応しちゃって最近だとアラームが鳴るきっかり1分前とかに勝手に目覚めちゃったからね。
 人間の体内時計、恐るべし……!

「予想外の角度から社畜時代のトラウマをフラッシュバックさせられちゃったけど……とにかく、これで薬草採取は完了だ! ビリリ草とスヤァ草はおまけとして持って帰って、ネモさんに買い取ってもらおう!」

 商人のネモさんは余った薬草や別の種類の薬草を見つけたら、別途買い取ってくれると言っていた!
 これでおまけのお小遣いが入ってくるだろう!

 わたしは採取した薬草を丁寧にマジックバッグにしまった。
 すると、モッフィが迫力ある声で迫る。

「さあアイリよ! 約束を果たしてもらおうではないかっ!」

 もう我慢の限界だ! と言わんばかりのご様子。
 この食い意地が張ったもふもふフェンリルの言いたいことは分かっている。

「はいはい、分かったよ。時間もお昼頃だし、ランチタイムにしよっか!」
「そうこなくてはのぅ! さすがアイリじゃ!」
「じゃあどこかに座ろっか。どこが良いかなぁ~……あ、あそこの切り株とかちょうどいいかも!」
「どこでもよいから早く行くぞ! ……む?」

 切り株に向かって歩いていると、モッフィが立ち止まって後ろを振り返った。 
 何もない、虚空の森をじっと見ている。

「ん? どうしたの、モッフィ?」
「……いや、何でもない。それよりも、早くくろわっさんを食べるのじゃ!」

 モッフィは期待にあふれた顔色でわたしに詰め寄った。
 ぐいぐいと背中を押してきて、切り株に向かわされる。
 そして切り株にぺたんと座ったわたしは、マジックバッグからいくつものクロワッサンを取り出した。

「これがお待ちかね! 焼きたてふわふわのクロワッサンだー!」
「は、早く寄越すのじゃ!」
「はい、どーぞ。慌てて食べて喉詰まらせないでよ」
「ひゃほう!」

 ハッハッと大型犬がご飯を待ちわびるような感じで期待に胸を膨らませるモッフィ。
 そんなモッフィにゴロゴロとクロワッサンをあげると、速攻でがっついた。
 バクバクバクバク! と美味しそうに食べている。

「んむぅ~~! これじゃこれじゃ! やはり、くろわっさんは格別じゃのぅ!」
「あはは、すごい食欲……」

 モッフィが爆食する横で、わたしもクロワッサンを手に取った。焼きたて特有のかすかな熱がこもった小麦の香りが鼻をくすぐる。
 マジックバッグの中は時間の経過が止まるらしい。
 だから焼きたてパンをゲットしてすぐにマジックバッグにしまえば、冷めずに美味しい状態のまま保管することができるのだ。

「わたしもいっただきま~す」
「――きゅう」

 横から鳴き声が聞こえた。

「ん? なんだ?」
「きゅう」

 わたしは振り向く。
 そこには、茂みからひょっこり顔を出したウサギさんがいた。

「わあ! 可愛いウサギさん!」
「きゅう、きゅう~」

 白い毛並みと赤い瞳が可愛いウサギさんは、左右に首を傾げてわたしを見つめていた。

 どうしたんだろう。
 もしやこのクロワッサンの匂いに釣られてやってきたのかな?
 それとも単純にわたしにもふって欲しいのかな?

 どちらが真実かは分からないけども。
 その願い、両方ともわたしが聞き届けてやろうではないかぁ。

 わたしはクロワッサンを片手に、和やかな雰囲気で少しずつウサギさんに近付いていった。

「ほぉら怖くないよ~」
「きゅう~」

 わたしがゆっくりと近付いて手を差し出すけど、ウサギさんは茂みから顔だけ出しているだけだった。
 逃げていく様子はない。
 でも、まだちょっと警戒されちゃってるかな?
 わたしは怖がらせないよう、少しずつにじり寄っていく。

「よしよ~し、大丈夫だよぉ~。あぁ~ウサギさんは丸くてもふもふで可愛いね~――」

 やがて、ウサギさんのすぐ傍まで近付いた。
 ここまでくればあと少し!
 ウサギさんの頭をなでなでしようと、わたしの手がウサギさんに伸びていく、その瞬間。

「――――ギュァアアアアアアア!!」

 バサァ! と、茂みの後ろから巨大な生物が現れた。

 薄緑色の毛皮と、すらっとした細長い体。
 その見た目は、まるで森に潜伏して獲物を狩るという生存戦略を突き詰めたかのようだ。
 口から覗く牙は肉食獣のそれ。
 まるでヒグマが両手を上げて威嚇しているような圧倒的な威圧感がある。

「ぐわぁっ!? な、なんだこいつはぁあああああ!!」

 びっくりしたぁ!?
 こいつ魔物っ!?
 こんな巨大な動物がガサゴソしてるような音はなかったのに、いつの間に!?

 くっ、それよりも早く魔法で迎撃を――

 叫びながら大慌ててで魔法を撃とうとするわたしの上から、大口を開けた魔物が襲いかかってきた。

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